第63話 魔法の道具
063 魔法の道具
「まあ、そうかもな」
「だが、壁を突破できれば問題ないということだな」
「何を言っている、あの壁を簡単に突破できるわけがなかろう」
軍務省の貴族は言った。
「しかし、城は吹き飛んだぞ」
冷たい視線が影野を見つめる。
「異世界召喚者の魔法ではなかったのか」
「俺がそんなことを言ったか」
色々と聞かれたが、宝物庫で起こったことは、詳しく話されていなかった。
「おい、どういうことだ」
「あまり聞かないでほしい、しかし、この魔法の道具で壁くらいは吹き飛ぶ」
Mk84がそこに
「これはなんだ」
「魔法の道具」
「使い方は」
「買ってくれるなら教える」
「本当か」
軍務大臣の眼に欲望の炎が燃え上がった。
彼は、軍務省の人間ではなく、軍務大臣だった。
「嘘をいっても仕方ないだろう、俺もあの国やり方には一言文句を言ってやろうと考えていた、あんた等がやる気なら、少しくらいは手伝ってやる」
「すまんが、とりあえず、演習場で一回やってもらえんか。それで王を説得する」
「プレゼンね、わかった。ただし一発分の金貨を貰うよ。とりあえず金貨500枚でどう」
「わかった、私が出そう」
こうして、Mk84爆発実験が行われることになった。
ドナウ公国王都郊外の草原。
王とその側近たち、軍関係者が一堂に会する。
「本日は、私が手に入れた魔法具の威力をお見せしよう。先ず先に言っておきますが、私のものを奪おうとすれば、この魔法具が自分の頭上で爆発させられるのだということを肝に銘じてください。私は裏切りを許容出来ません。自業自得です。しかし、金払いの良いパトロンとは良い関係を続けることができるでしょう。」と謎の武器商人が言う。
何とも非礼な挨拶をしてのける男。
しかし、軍務大臣から、少し頭がいかれた研究者なので目こぼししてほしい旨の通達が先にあったので、誰も気にしなかった。
誰もが、ライン王国を痛い目に合わせてやりたかったのである。
相当距離が離れている場所に皆が塹壕を掘って隠れている。
Mk84には、信管の代わりに、C4爆弾とタイマーがセットされていて、遠隔装置で発火するように準備されている。
「ファイアインザホール!」
男が大声で叫び、スイッチをオンする。
爆弾が閃光を発し、爆炎が周囲を飲み込む。
そのあと、巨大な黒煙が立ち昇る。
爆音と衝撃波が突風となって塹壕の上を吹き抜ける。
全ての人間が啞然としていた。何という破壊力。
大魔導師でなければ無理な威力ではないか。
「あれはなんだ」王が呟いた。
簡易に作られていた石壁など、破片を飛び散らせる爆弾の一部のようになっていた。
「此れさえあれば、あのラインの城壁もきっと!」
・・・・・・
「王は決断された」
「そうか、良かったな」
「何発、売ってくれる」
「そうだな、第1の外壁は、2発、後ろの壁は、1発あれば問題ないだろう。まあ、兵士たちが突入するのなら、第1壁に3発だな、王城までは少なくとも4段の壁が存在するから、6発で十分だな、設置はあんた等じゃ無理だから、俺がサービスしてやろう。
金貨3000枚で壁が壊れるなら安いもんだな」
「ほんとうか」
「ああ、しかし、寝覚めが悪いから住民虐殺とかはできるだけしないでくれよ」
「善処しよう」
「ところで、こういうのもあるんだが、あんたら買わないか」
そこには、又しても拳銃が存在していた。
男のアイテムボックスには、なぜか米軍のM18拳銃が相当数入っていた。
「これはなんだ」
「まあ、大臣、伯爵、庭で試してみよう」
明らかに武器なのである。
拳銃の試し撃ちが行われ、その無慈悲な威力を目の当たりする貴族たち。
「いくらだ」
「一丁金貨10枚としよう、出血大サービスだが仕方ないだろう、大型顧客様で割引価格にさせてもらいます」明らかに嘘だった。
拳銃は200セット販売された。
武器だけで、5500枚の金貨が積み上げられていた。
アイテムボックスは、アンコウのようにそれを丸のみした。
盗品の売却はもっとすごいことになっていた。
そもそも国宝級のものを無理やり値段をつけて販売したのだから当たり前だった。
しかし、ドナウ公国はその販売手数料で武器代を十分に支払えた。
金貨25万枚(約250億円)これでも、宝石関係のみの販売である。
魔法道具、武器、防具、その他を販売すれば簡単に10倍は可能であろうが、時間的制約から金になりそうなもののみを販売した結果である。
そしてこの金貨を使うには、この世界は不向きだ。
もう、邸宅を買うぐらいしか使い道がないのだ。
やはり、日本への帰還を考えねばならない。
そして、その最大の問題点こそ、奴ら、そう勇者だ。
何とかして勇者の裏をかき、脱出する。
後は、日本とかかわりの少ない国でゆっくり暮らそう。
それが一番だ、犯罪者引き渡し条約を結んでいない、インターポール(国際刑事警察機構)の手の及ばない国へいざ征かん。
だが、早くも問題が降りかかる。
「勿論私も、連れて行ってくれるのでしょうね」
すっかりその存在を考えていなかった。
ばれたら、おそらく半殺しになる。
ムムム。タラリ。
夜が過ぎてゆく。
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