第61話 見知らぬ天井

061 見知らぬ天井


悪い夢を見ていた。

何とか任務を成功して帰還したはずの国で俺は、犯罪者扱いを受ける。

銃器の違法販売などという、でっち上げ事件により、司法取引を余儀なくされる。

成功報酬として払われるはずだった、アタッシュケースに羽根が生えて空に飛んでいく。

俺は、電撃魔法で迎撃するが、アタッシュケース鳥は嘲笑うように躱して逃げていく。

その先には、魔王が存在し、鳥を手なずけている。

「それは、俺のアタッシュケースだ」絶叫するが。

魔王は鳥を連れて消えた。


俺はひどい夢から醒めた。

しかし、悪夢をまだ見ているようだ。

見知らぬ天井、蜘蛛の巣が張られている、石造りだ。

「ここはどこだ」


勿論、あんな場所で、意識を失えば、逮捕されるだろう。

極悪犯罪者収容の牢屋だ。

魔力封じの効いた特別な牢屋。

見知らぬ天井を喜んでいてはならない。


横を見ると、ゴキブリと目があった。

カサカサと退散していく。まさか俺に目をつけていたのか!

なかなか、目の付け所が、シャーマン戦車!

どうも、状態異常のようだ。

気分が高ぶっている。


「やっと起きたか、犯罪者め!」そこには、宰相がいた。

態々待っていてくれていたようだ。

「待たせたな、宰相」

「己どこまでも!貴様の未来は、死ぬほど苦しみを与えてからバラバラにしてから犬に食わせてやるからな」

「案外まともな拷問コースだな」

「減らず口を!ここでは魔法は使えんからな、精々ゆっくり休んでいくといい」

宰相はそういって、満足げに帰っていった。階段を上っていくようだから、地下なのかもしれないな。興味はないが。


そして、勿論ゆっくり休むつもりもない。

私には汚すぎるというものだ。


魔法使いは魔力を使う。

それを封じる術式が存在する。魔法使いに取っては、致命的な場所である。

同じように、身体能力の強化に魔法を使う者も同様だ。

上手く発動することはできない。



だが、それは魔術だからである。

影野は、そもそも魔力変換を行わなくても問題ない。

彼は、魔力ではなく、功力をためる修練を行っているからだ。

SOG隊員のような偽頑身功ではないのだ。


鉄棒がはまっているが頑身功で修練している人間にはあまり良い防御ではない。

バンバンと蹴りを入れていく。

鉄棒は曲がり始める。

警備兵が完全防御で現れたときには、すでにはい出るくらいの隙は出ていた。

「貴様!」

鋼鉄の剣を振り下ろしてくるが、途中で止まる。

鉄鎧の先にいようと砕心掌は、心臓を砕く。

二人の兵士が弾かれて、物言わぬ塊になる。


「この国の人が極悪でよかったよ、罪の意識を感じなくてもすむのが最高だ」

次々と警備兵を死体に変換していく、影野。

しかし、影野は気にしていない。

そもそも帰るつもりは欠片もない。


牢屋区画を出ると、ウェポンフリーの状態になる。

おそるべき殺人マシン。というか兵器である。

王城の廊下は長い、先100mに兵士がいる。

「ジゴスパーク改良、レールガン」長剣が音速の壁を破り衝撃波を発生させる。

100m先の兵士が爆発し、さらにうしろの壁が爆発する。

「なかなかレールガンすごいな」

彼は、レールガンで辺り一面を攻撃しながら前進する。

歩みを止めることができる者はいない。

レールガンに飽きると、拳銃を両手持ちで前進する。

明らかに、目標の場所が定まっている。


王は、震えていた。自分を殺しに来ると思っていた。

しかし、方角が違うらしい。


「宝物庫だ、奴は宝物庫を狙っている、全軍で仕留めよ!」

自分が狙われていないと知ると突然勇気百倍で兵士たちに命じる。


兵士たちが隊伍を作り走り出す。

しかし、誰かが何かを引っ掛ける。城の廊下はそれほど明るくはないのだ。

対人地雷は、爆発により鉄球を吐き出す。

正に相手を血まみれに代える代物だ。

対人地雷なら、自衛隊にもある。

しかし、それは英語表記だった。


そもそも、貸与されていない武器だった。

人道的な自衛隊では、専守防衛、敵を簡単に攻撃してはならないのだ。

相手が遠慮してくれるかは相手次第だろうが。


次々と対人地雷がさく裂する。

仕事が終わるまで近寄らないでほしい。

今大事なところなのだ。


鋼鉄の扉が待ち受けている。

警護の兵士は何故か出血多量で死亡していた。

きっと、何とかインフルエンザにかかってしまったのかもしれない。

「プラズマ切断」

バチバチと火花が飛び散り、鋼鉄の扉が切られていく。

魔法でも自ら考えたものはなかなかに素晴らしい。


扉を切断して宝物庫に侵入する。

損害賠償金として、何某かのものをいただいていかないと、結局、叙任もされず、呼び出され損だったからな。

「しかし、すごい量だな」様々なものが収蔵されていた。

手で袋に入れているだけでは、陽が何回もくれるに違いない。

「よし、暴食のアイテムボックス」

たった、その一言であった。

一瞬で宝物庫が空になった。アイテムボックスといっているが、桁が違うのだ。

「さて、せっかくお宝たくさんいただいたのだ、お礼をのこしておこう」

Mk84爆弾(2000ポンド爆弾)、航空機から投下する爆弾だ。

戦時中の日本でいうところの1トン爆弾(900Kg)だ。

何故か、アイテムボックスに入っていた。

それを3つおいておく。


信管の系統は危ないし、理解できていないので、C4爆弾で発火するように準備する。

タイマーセット。スタート。C4はプラスチック爆弾だ。C4程度なら訓練は受けたことがあったので問題ない。


さて、それではそろそろ、お暇しよう。

本当にいろいろとありがとうございました。

こうして俺は、ライン王国を後にすることになったのである。


では、ご機嫌よう。



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