第40話 剣法
040 剣法
「北畠、何か困ることでもあるのか?」
勿論、北畠は困っている。
自分は、起請文に縛られているため、影野を逮捕することができない。
他のSOG隊員らが、男の軍門に降れば、だれもこの男を逮捕することができなくなる。
「いえ、そのようなことは」
「北畠、私は、貴様の手首すら治してやった命の恩人なのに、私を政府に売ろうとしているのか」
「そんなことは決してございません」
「だが、心配は無用だ。彼等とはすでに契約がなされているのだ。」
ガ~ン!北畠は目の前が暗くなるのを必死に堪えている。
すでに、男を逮捕する方法が潰されていたのである。
「私こそ、一番弟子でございます。何故そのようなことを考えましょうか」
平伏する北畠はまたしても入神の演技を開始する。
「そうか?それならばよいのだがな」もちろん、こちらはそのような裏切り行為が行われることを前提に行動している。異世界渡りの経験は、伊達ではない。そうでなければ、簡単に騙されて取り込まれ、態よくつかわれることになってしまうのだ。
「北畠、私は捕まらぬ。日本では証拠が重要なのだ。私は、勿論やっていないのだから、証拠がないのだ」
「勿論、師父を信じております」
自信たっぷりの師父だが、向こうに行けば自ずと証拠が発見され、逮捕されるだろう。
自分たちでの逮捕はあきらめたが、自分たちが手を貸さねば良いだけの話。日本に連れ帰れば問題ないはず。
北畠は考えを切り替えた。
「さて、剣法についてだったが、これはまさに一子相伝の技となる。」
彼らは、師父の弟子つまり子である。ということは、その中から一人にしか伝えることはできないということになる。
「習いたい者は、いるか?」
「はい!」
「はい!」
運悪く、剣術スキル『剣の達人』スキルもちとなった武田、そして、剣術スキルを持たない上杉が返事をした。
「なんだ、二人だけでよいのか?」
「一子相伝とお聞きしましたが?」と北畠が問う。
「おお、そういったな。私もそういわれて習ったが、私の師匠は2代目だぞ、勿論3代目にも教えているはずだから問題ないだろう」
そういわれればそのような気もするが、何だか違うようにも思う。
「だがな、とある事情で教えられる人間は限られるのだ」
「???」
「この剣法の基本は、刀にある。刀がないとほぼできないのだ」
「作ればよろしいのでは?」
「残念ながら、この刀を作ったのは、祖師様なのだ。製法は秘伝とされている」
「何と!」
「祖師様は、刀鍛冶の名手でもあられたという。なんでも99振りの刀をおつくりになり、封じたとされている」
それにしても、祖師という男は何にでも手を出しているのだろうか?
「封じたのですか」
「そうだ、威力があり過ぎるとかないとか、2代目はいっておった。」
「師父しか刀をもっていないということですか」
「そうなのだ」
勿論そのような話は与太話である。
そもそも、祖師という男が作った刀は、99振りどころではなかったし、封じられてもいないのだから。
割と気軽に作り、売ったり、やったりしていたのである。
「それではあきらめるしかありません」武田がしょんぼりする。
彼は、中二剣法を習いたかったのである。
そもそも、日本では日本刀を持つことは難しいのだ。
今この異世界では自由なのだ。
まさに、中二病の浪漫を全開させても問題ないと来ている。
「ところが、そうでもないのだ」影野の話は、SOG隊員たちをおちょくっているかのようだ。
「才ある者の手にやってくるのだ」
何とも奇妙な話を語りはじめるのだった。
刀がやってくる。
何を言っているのだろう?やはり、こいつの頭はいかれてやがる!
だが、知る人ぞ知る、その祖師という男はかなりぶっ飛んだ男であった。
二代目の話では、UFOにアブダクトされて行方不明らしいが、それまでの男のいきさつは、別冊の物語を参照をしてほしいのだが、とにかく、出現する場所、場所で、破壊の限りを尽くしたのである。
その世界に現れた男は、とにかく、前世の知識で、意味不明だが、とにかくファンタジー刀を多数作刀したのである。
そして、その武器は、気に入ったもの達に譲ったり、押し付けたり、秘蔵したりしたのである。
今、語られているのは、その秘蔵されたコレクションの事である。
祖師は、当然のように無限インベントリを備えていたので、なんの問題もなかったが、その弟子たちはそうではなかった。
そこで開発された技術が、異次元収蔵庫である。
この技術は、所謂魔法の類ではないらしい。
技術の詳細は不明ながら、別の次元に刀を収蔵し、師匠から認められたものにのみ刀を送り出すという技術である。そして、刃こぼれや最悪折れた物ですら、収蔵庫に戻れば、ナノマシンにより修繕されて、再度出荷されてくるという、奇想天外な技術であった。
この技術の出元は、UFOを操ったとされる女たちであるという。
そもそも、UFOとは言いながら、伝承にはのこっていないのだが、それは巨大な箱舟のようだったとされている歴史もあったのだが、失伝してしまっていた。
恐らく、宇宙戦艦ではなかったのだろうか。
これは影野の推測である。
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