第36話 修行

036 修行


「まずは魔力合わせの儀式を行う」

恐るべき師父、彼は、異世界で魔力と出会った。そして、魔力量に恵まれていることがのちに判明する。

魔力量に関しては、才能が有ったのであろう。

そして彼は、自称『大魔導師』なのであるから当然でもある。


勿論、魔力が膨大にあったとしても強いとは限らない。それは、詠唱速度、効率、呪文への適正等、様々な変数が存在するからである。


簡単な例でいうと、膨大な魔力量があったとしても、呪文を詠唱し、発動できない人間の魔法攻撃力はゼロである。


逆に言うと、魔力をすべて、魔術に使わずに、攻撃法に転用するということでもある。

魔力のようなファンタジー力を、物理攻撃力に変換するという、逆転の発想が、この恐るべき、殺人拳法を生み出したのである。


「最も簡単に、魔力の扱いを革命的に推進する方法こそが、この魔力合わせの儀である」


「さあ、弟子たちよ、円座を作るのだ」

恐るべき暗殺者への胎動が始まる第一歩であった。


「さあ、手を取り合え」

影野とSOG隊員の5人が円座を作り、手をつなぐ。

「私が、魔力を流す。全員を伝わり、私に帰る。そして、私は出力を段々とあげていく、限界値に達した者が、ショートしてはじかれる。そうすれば、その者を除いてさらに出力を上げる。

最後まで残ったものが、私か、それ以上に魔力量を持つものとなる。この行によって、魔力回路が開き、お前たちは術者への第一歩を踏み出すことになるのだ」影野は師匠風に声色を使う。


「できるだけ我慢するのだ、回路を最大限に開けば、それだけ強くなるのだと思え、良いな」

「「「「「はい」」」」」

基本彼らは戦闘員であり、自信がある、強くなることに抵抗はなく、我慢することもとても得意である。


「行くぞ!」

「「「「「はい」」」」」


魔力エネルギーが徐々に流れ始める、そして、あっという間にそのエネルギーは激流のように彼らを押し流そうとする。感電しているかのような感覚なのだろうか、激流に翻弄されながら、彼らは、全身を震わせながら、その奔流に必死に抵抗していた。

眼から涙がながれ、口からよだれを流し、奇声を発しながらも。


「フハハハハ、まだまだ序の口ぞ」それは、彼の師父第2代掌門の口癖だった。


「ぶひょ!」奇声を発して、浅井が、弾き飛ばされる。

魔力流に耐えられず、ショートするとこのように弾き飛ばされる。

浅井は、地面に二回バウンドして、倒れた。


全身が痺れ、ところどころに幾何学模様のような火傷が見られる。

「汝を癒せ!」影野のヒーリングを浴びる浅井だが、意識は飛んだままである。


「弟子たちよ、この程度で根を上げるとは、儂は悲しいぞ」これも2代目の口癖。

浅井抜きで円座を組み直し、さらに激しい、魔道流が全身を打ち砕く濁流のように押し寄せる。

「耐えよ!持ちこたえよ!逝くぞ!」すでに、弟子を殺すつもりなのか、字が違う意味になっている。


全員がぶっ倒れるまで、この修行は続く。

最強の魔道流を流せるのは、影野だけ、そしてそのレベルはこの世界でも、屈指である。

耐えられるということは、世界屈指の魔力量ということだったりする。

だが、彼らはそんなことは知らない。


知らぬうちに世界最強クラスからの魔道流攻撃を受けているというのが本当のところであった。

だが、これも修行のうち、徐々にそれにもならされていくということだ。

そうして、魔力、本当は内力(内功)に対する抵抗力が得られるのだ。


内力循環地獄の7日間が過ぎ去った。

この修行の成果は顕著で、全員が、魔力に慣れ、その流れを目で見ることができるようになった。


非正式名称『魔力袋』も大きく育ち、皆がそれぞれに魔力をためることが可能となった。

今、魔術師の元に修行に行けば、魔術師になれることだろう。

勿論、そのようなことは不可能だ。魔術師は簡単に弟子を取ったりしないからだ。


影野は、この七日間で弟子をシバキ倒しながら、ある発見をする。

自らの魔力を膨大な勢いで、弟子に流し続けることもある種の苦行で、これも修行といえる。

その苦行の中で、いままでとは違う何かを発見したのである。

これは、2代目から教わったことがなかったため自分だけの発見だった。


『チャクラルターボチャージング』それは、人間に本来存するという、チャクラを開くことにより、力を得ることが可能といわれていた、神秘(オカルトより)の力であった。

人間には、中心軸上に、チャクラが七つ存在するという。

その、チャクラが膨大な魔力量により反応することに気づいた影野だった。


座骨の辺りにあるチャクラが魔力に反応したのである。

そして、そのあたりに魔力を流し始める。(勿論、魔力を自在に操り流す境地にいる彼にしかできない)するとそれが解放し、回転を始めたのである。

座骨のチャクラが高速回転し、エネルギーをその上のチャクラにぶつけ始めると今度はそのチャクラも解放され回転を始める。

7つのチャクラが全て解放され、魔力エネルギーの速度が数倍にまで跳ね上がる。

彼の頭上に3つもの白い輪っかができて、頭頂部から白い光が立ち昇った。


この出来事以来彼はその魔力量を数倍にはね上げて使う方法を編み出したのである。

簡単にいうと、魔力1の攻撃は1の威力だが、この術を使えば、威力が3や4になるということだった。



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