第26話 特殊作戦部隊(SOG)

026 特殊作戦部隊(SOG)


不屈の精神力と圧倒的な身体能力に加えて、訓練による戦闘力を身に付けた彼ら。

人間族最強といっても過言ではない。

そんな彼らは、異世界にやってきた。


「よし、まずは棺桶を隠せ」

彼らには、収納ボックスのスキルが存在しないため、帰りもこの棺桶を使わねばならない。

しかし、持ち歩くわけにもいかなかったのである。

幸いにも、場所としては、森林地帯の中の様である。

隠す場所に苦労はないようだった。


「ついに、異世界に転移したのですね」

「そうだな」

彼ら6人は、自らの意思で異世界転移を成し遂げたきわめて希少な日本人である。

3人が棺桶を隠している間に、他の隊員は、先に到着しているはずの影野の痕跡を調査する。


「ステータス!」

一人の隊員は、ラノベ好きだった。

すると、ステータス画面が目の前に現れる。

「でた!」


ゲーム画面のようなそれには、数字が並んでいる。

全員がステータスを出すことができた。

「こいつは、スゲエ」


スキル欄に、異世界共通語というものが存在していたのである。

「スキル、鷹の目」

「俺は、必中の魔眼」

6人は狂気乱舞したのである。

異世界転移のギフトが存在したからである。


「ジョブは、ジエイタイ」

「俺は、サラリーマン」

「え?俺は、スナイパー」

同じ職業に属しながら、皆、バラバラだった。

皆が笑いあった。

「なんだそりゃ」

「ハハハ、サラリーマン受ける~」


「さあ、追うぞ、仕事の時間だ」6人のリーダー。

小隊長、上杉 鷹介が言った。

「は!」さすがに皆厳しい訓練を受けてきた兵士たちである。

彼らの装備は、総重量60Kgにも及ぶ。

「ターゲットは、数日前に、ここにきたようだ。」

「ハ!」


影野が異世界に渡り、3日後、彼らSOGは招集され、この世界に送り込まれてきたのである。容疑者影野の捕縛、無理なら抹殺を行うために。


参事官は言った「無理に捕まえようとするな、奴はかなりの使い手だぞ」

戦闘技術では、彼らSOGの方がはるかに上だが、異世界での経験では、影野の方が上なのだ。(本当は圧倒的に上。)

油断すれば、足元をすくわれる可能性があることを注意したのである。


影野追跡開始から1時間。

すぐに、異世界からの歓迎を受ける。

フォレストウルフたちが、襲い掛かってくる。

森林地帯での訓練も十分に行っていたとはいえ、すべて訓練である。

自分めがけて突撃してくる狼の牙に恐怖して、体がうまく動かない。

サイレンサー付きの20式ニーマル5.56mm小銃がボボボと吠える。

何匹かの狼を肉塊に代えるが、その後ろの狼はそのすきをついて、隊員の手首に噛みつく。


「ギャア~~」手首が簡単に食いちぎられる。

恐るべき、切れ味だった。それはまるでナイフのような切れ味。

フォレストウルフの武器はその牙と集団戦法である。


「バケモノめ!」

滅茶苦茶に小銃を撃ちまくり、何とか全滅させるが、衝撃と同様は図りしれない。

そもそも、彼らは5.56mmを持ってくるべきではなかった。

しかも、サイレンサーをつけては、威力がさらに落ちる。


影野は、こんな場合には、カラシニコフを用意している。

簡単に、整備できて威力が高い。

それに、直ちに、周囲を魔法で監視する。

不意打ちは命に係わるからだ。


だが、異世界デビューの彼らには魔法がなかった。


手首をかみちぎられた兵士の状態は良くなかった。

何とか、止血に成功するが、治療の手立てがない。


そして、狼の血の臭いが、さらに魔物を引き寄せることになる。

「北畠、大丈夫か」

「大丈夫です」冷や汗を流しながらも、さすがSOG隊員であった。

その精神力は、只者ではない。


「何かが来ます」

別の隊員が声を出す。

「そうなのか」

「はい、スキルを発動しました。熊のようなものと、ゴブリンらしきもの集団が、こちらに向かっています」彼のスキルは、探索系のものが備わったのだろう。


血の臭いが、魔物を集めているのである。

「ここから離脱するぞ」

しかし、出血している人間がいたのである。

全員が状態を理解できた。

そう、北畠隊員が、魔物を引き寄せる原因になるということなのだ。


「隊長、残念ですが、自分は反対方向に向かいます」と言いながら、残った方の手で敬礼をする。

「北畠!」

「わかった、棺桶の場所に集合するからな、無駄死にするな」

「ハ!」

だが、これが今生の別れとなることは明らかだった。

しかし、任務達成のためには、非情だが仕方がない。

彼らは、軍人、任務を全うするために存在するのだ。

非情なる現実が彼らを引き裂くのだった。



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