第12話 外交交渉?

012 外交交渉?


「おい、それはなんだ」

城門で、衛士から声をかけられる。

「犯罪者だ、こいつが俺たちの獲物を奪いやがった、取り返す」

「へえ、獲物はなんだ」

「ダブルホーンバッファローだ」

「おお、いいね。あれの肉はうまいからな」

「ああ」

「たっぷり吐き出させてやるぜ」

「後で俺にもやらせてくれよ」

「ああいいぜ、生きてたらな」


すでに死刑確定のようだ。

拷問死とはなんとも嫌な死に方だな。

俺は畳の上で大往生すると決めているのだが。


訓練場を横切って引っ張っていかれる。

「おい、貴様らそれはなんだ」まるでゴミを見たかのような発言の男。

かなり高価な貴族の服を着た男が現れた。


「はい、大臣様、不貞の輩が現れましたので、取調べを行います」

「大臣様!どうかお助けください」俺は声を出す。

「慮外者め、私が誰か知らんのか、私は、セルティクス侯爵なるぞ」

「侯爵様!どうかお助けを」

「早く連れて行かんか、馬鹿者どもめ」

「失礼しました」

兵士たちは、貴族からの叱責を受けて、俺を精一杯引きずろうとする。


「貴様のせいで叱責を受けたではないか」

「あいつはえらいのか?」

「馬鹿野郎、軍務卿だ」

指揮官が殴りつけてくる。

しかし、それは鋼鉄を殴ったようなものだった。

グキリと手首の骨が折れた。

「ギャア~~~~~」

魔獣に踏まれても死んではいけないはずの隊長が手首が折れた程度で大声を張り上げている。


頑身功という功夫である。俺の場合は、魔力を功力の代わりに体に回している。

異世界での、修練法によって身に付けた技である。


「さてと、取り立ての時間だな」

俺の両手をふさいでいた木枠が一瞬で砕け散る。


腰の鎖を引っ張ていた兵士が地面にたたきつけられる。

指揮官の腰の長剣を引き抜きながら疾走を開始する。


『縮地』一瞬で距離が縮むんだかのように、進むことができるスキル。

それは異世界で修行した剣士が習得するスキルだった。


何とか侯爵は一瞬で後ろをとられ、首に剣を突き付けられてしまった。

「ひい」

「おい貴様、ここの貴族なのだな」

「儂をだれだと」

「なんとか侯爵だろう?それは言いから早く王を呼べ」

「な!」

「早くしないと、貴様の首は胴体から離れたがっているぞ、ああ、そういえばこの国の兵士はすごいらしいから、首位なくても生き返るんだったな」


「でたらめをいうな」

「そこの馬鹿が言っていたぞ」

「おい貴様、早く宰相を呼べ、儂が危ない」

「早く広間に行こうじゃないか、剣を持っている手がだるい。勝手にお前の首を切り落としても知らんからな」


「待て、宰相を呼ぶ、王は無理だ」

「まあ、お前より話が分かるといいのだがな」


広間までは、兵士たちが列を作って出迎えてくれた。

やはりこれくらい歓迎されて、交渉に出向きたかったのだ。

広間には、百名以上の近衛兵がいた。

そして、一段高い場所に宰相がいた。本物かどうかは不明だ。


「貴様、王を呼べといったらしいな、不敬である。それだけで死罪に値する」

宰相は言い放った。

「なるほど、では、この何とか侯爵も死ぬがいいのか」

「まて、アーセナル卿、儂はまだ死にたくない」とセルティクス侯爵が悲鳴を上げる。


「黙れ!セルティクス、軍務卿の貴様がその座間とはなんだ」

「宰相殿とお見受けする、このような形での訪問だが、許されよ」


「平民の分際で、王城にやってくるとは、無礼にもほどがあるぞ」

「ああ、しかし、こうでもしないと王城に入ることはできないので仕方がないのだ、許されよ」


「さて、名乗りがまだだったな、私は日本国外務省武官の影野真央三佐だ。」

「なに?」

「日本国だ、聞き覚えがあるだろう」

「勇者の出身国だな」

「そうだ、あんた等が勝手に誘拐した子供たちのだ」


「それで?」

「それで?あんたの国では人を誘拐しておいて、警察が来たら、誘拐したがどうかしたかというのか」

「誘拐?」

「人さらいと言い直した方が理解できるか」


「ははは」

「ははは、じゃねえだろ」


「貴様は自分の立場をわかっておらん」

「いやいや、あんた等こそわかってねえだろ」


「セルティクスは儂の政敵、死んでももらっても一向にかまわん」アーセナルが笑い飛ばす。

「まて、アーセナル卿、これから儂はあんたの言うことを聴くから助けてくれ」

「だそうだぞ」


「で、何用できたのだ」


「子供の返還と賠償を要求する」

「勇者を返せと?」


「勿論だ、その子らは日本の子供だからな、それと賠償だ。賠償、大事だから二回いうぞ」


「聖なる儀式でやってきた勇者を返せか、それに賠償?」アーセナル卿はゆっくり目を閉じる。貴族というのは、いつもこんな考え方しかできないのだろうか?


何故、自分たちが犯罪を犯していてもこんなに偉そうでいられるのか、不思議だな。


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