第10話 遭遇

010 遭遇


2か月の長き時間をかけ帝国の首都に到着する。

その間に、クララともすっかり打ち解け、この世界の歴史や様々なことについて聞いた。

しかも、いろいろな魔獣を狩り、金も稼いでいる。

だが、2か月の旅行でなぜかクララは調子を崩す。

どうも、妊娠したようだ。


おい、だからあれほどやめろといったではないか。


そらね、あれだけ頑張れば、妊娠もするでしょうね。


クララとはこれでお別れだ。

何か寂しさを感じるが仕方ない。

クララは、グレンリベット商会帝都支店に置いていくことにした。

「シャドウ様、寂しいです」

「クララ、俺もだ。元気な子を産んでくれ、まだいたら、会いに行く」

「はい、あなたの子供を産み育てます」

クララが縋りついてくる。


「じゃあ」

「頑張って、あなた」

「ああ」


仮初の関係ではあったが、この2か月間で離れがたい情も生まれようというものである。


目指す場所は、帝都ではなかったことが、その後の情報収集で分かったのである。

俺は、王都を目指すことになる。そこで、クララとは、別れることになる。


次の応援は断った。

そんな場合でも、気分でもなかったからだ。


「クララをちゃんと世話をしてくれるんだろうな」店長に厳しい口調で問い詰める。

「はい、お任せください」

「ちゃんとしていないことがわかったら、必ず礼に行くと商会長にいっておけ」

俺はすこぶる機嫌が悪かった。

やはり、どこでも別れは寂しく、堪えるのだ。


自分は嘘をついても、嘘をつかれるのは許さない。

情けは味方、仇は敵なり。

必ず報いをくれてやる。それが俺のやり方だ。

さらに2か月後、問題なく王都にやっと到着する。

誘拐事件からすでに、半年がたっていた。


やっとたどりついた。

今度は、バイクか車も用意しておこう。

馬だとどうしようもない。

因みに、馬は死んだ、大山脈越えで。

それからは、歩きだった。

何をさせられるかわからんな。


冒険者ランクC、すでに、かなりランクアップしていた。

ランクが激しい戦闘を物語る。


町中で、黒目黒髪を発見する。

「おい君!」

それは日本語だ。

少年は、その違和感に気づいた。

日本語で話しかけられたからである。

「日本人!?」

「そうだ、君の友達はどこにいる」

「城内です」

「そうか」

「ちょっと話せるか」

「はい」

少年の目には涙があふれていた。

なんらかの思いがあふれてくるのであろう。


「君の名前は?」

「あなたは?」

「ああ、俺か、君らを地球に戻すために来た国家公務員だ」

「じゃあ、俺は地球に帰れるんですか」

「基本的にはそうだ、しかし、まずは、外交交渉から始まるな」

「俺らは、無理やり連れてこられたんですよ」

「わかっている、まずは、名前を教えてくれ」

「〇〇高校2年生の明石一馬です」

「明石君か、それでみんなはどうだ、全員無事か?」

明石は語り始める。


当初は皆驚いたそうである。

当然である。

そして、なぞの王族が現れ、この国の窮状を訴える。

勇者よ、この国を救ってくれと。

そして、何はともあれ鑑定。

力、スキルの確認である。

基本的には、頭の良い子供は、魔法系のスキル。

運動クラブ系の子供は、戦闘系のスキルが付与されていた。

そして、勇者の称号が確認される。

しかし、それら優秀なもの達は、優遇される反面、そうでない子供たちは次第に優遇されなくなる。

気づいたときには、軍事訓練に駆り出されている自分がいた。

明石は恵まれなかった組みらしい。


「どうだ、連れ帰るといえば、皆帰りそうか?」

「いえ、勇者チームは、きっと世界を救うというでしょう」

「そうか、だが、何から世界を救うんだね」

「魔王です」

「魔王?存在が確認されているのか」

「いえ、しかし、隣の帝国は、魔王により操られているので、世界を救うために倒さねばならないらしいです」

「ふ~ん」


「ところで、是川太蔵君はどうだ」この名前こそ十億円である。まさに値千金。

某衆議院の孫にあたるらしい。


「彼は僕と同じような扱いですね、喜んで帰るでしょう」

「じゃあ、勇者チームとは、誰なんだい」

「太陽君と太白さんです」

「ほう、彼らがパーティーを組んでいるのかね」

「いえ、太陽君は勇者チームで、太白さんは二人組です」

「どちらも勇者の称号を?」

「いえ、太陽君が、勇者です」

「じゃあ、その女の子は?」

「偉大なる者です」

「はあ?」


「彼らは、帰ろうとしないかも?」

「はい、特に太陽君は、ほとんど貴族待遇ですからね」

「君は?」

「俺は、兵士です」

「ほかには、庶民待遇など様々ですね」

「死んだ人間は?」

「3人ほど」

「おいおい、大問題じゃないか、先生は?」

「行方不明です。人質だと思います」


なるほど、31人のうち3名が死亡。

一人が幽閉。

勇者チーム4人は帰還しない。別チーム2名も同様。

それ以外にも、楽しんでいる人間が7名。

まあ、問題ない。

議員の息子を連れ帰れば、10億だからな。

帰りたくない世間知らずは帰らなければいい。

賠償金は死亡3×1億=3億

諸経費込み41億円で44億円相当のを要求する必要があるということである。

連れ帰る者は、先生1、死体3、生徒14ということか。

俺の収入は18人で1億8千万円と特別報酬10億となる計算だ。

これで、引退だな。

まあ、いつ焼け死ぬかもしれない仕事などやっていられないからな。

命がいくつあっても燃え尽きてしまう。


「連絡の取り方は、覚えたな?それと、うまく連絡してくれよ。ばれると面倒になる」

「わかりました、がんばります」

「ああ、明石君の頑張りが皆を助けることになる」

「はい」


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