第9話 目的

009 目的


辺りが闇に包まれる。

このあたりは街が近いので、魔獣は多くはないというが、念のため、対人地雷をセットしておく。目覚まし代わりにはなるだろう。

俺は自分のテントに引っ込んだのである。


だがそれは悪手だった。

裸になったクララが侵入してきたのだ。

何でそうなるのだ。

「抱いてください」


少し酔いも手伝って、俺は彼女を抱きすくめ押し倒す。

「本当にいいんだな」

「・・・」コクリとうなずくクララ。

「優しくしてください」

俺は、クララにキスをした。


据え膳食わずはなんとやらである。

はじめは、少しおびえていたクララもそれになれるとダンダンと激しくなっていった。


もう後戻りはできない。

賽は投げられた。

流れに身を任せるしかない。


ちょっと待て、何のナレーションが入っているのだ。

どうせなら、一期一会とかにしてほしいものだ。


激しい戦いを終え、服を来た俺たちは、火を囲んで向かい合った。

ビールを飲む。クララもごくりごくりと飲んでいる。

喉が乾いているのだろう。


「で、」

「はい、シャドウ様はご存じないでしょうが、先ほどの伝説にはいろいろな後伝がございます。」

「・・・」

「はい、勇者様は、魔王を討伐する方もおれば、討伐しない方もございます」

「どういうことだ」

「はい、魔王討伐に向かい倒される方もおられ、また討伐自体をされない方もおられます、また、自らが魔王になる方もおられました」

「やっぱりそうか」


もともと、赤の他人を呼び出すのだ、うまくもっていかないと、言うことなど聞くわけもない。

そして、なまじ異世界の渡りの時に得るギフトが強力だと、力に溺れるものも出てくるだろう。


だが、まだ何かあるはずだ。

「シャドウ様には、嘘をついていくのはつらいので、本当の事を申し上げます」

「何だ?」

「勇者様の子供は例外なく、その力の何割かを継承します。」

「つまり、親の勇者が強力であれば、子供もかなり強力になるということか」

「はい、何人かの勇者は国を作りました。そして、その勇者の跡継ぎの子供は程度の差こそあれいずれも強大でした」


「わかった。俺の子供を産むためについてきたということか」

「それもあります、しかし、私はあなたに一目あった時から心を奪われてしまいました」


見つめ合う視線だが、どこまでが本当の事なのか、俺の感覚から言って一目ぼれなど存在するなど思われなかった。


だが、それをここで否定したところで、なんの得にもならない。

そして、彼女は美しくきれいで情熱的だった。そのことになんの文句もなかった。


しかし、父親はまず間違いなく生まれるころには、この世界にいないのにそれでよいのか?


「理由はわかった。明日も早い、もう寝るんだ、俺が番をする」

「はい、横で寝てもいいですか」

「ああ」

クララは俺の横で寝袋に入り、寝始める。

手を握ってくる。

どうしてこうなった。


朝までは何もなく、俺たちは荷物をたたみ出発する。


「ゴブリンです」

数匹の緑の小鬼がうろついている。

「排除する」

俺は、突撃ライフルを構える。

「耳を抑えておけ」

ダダダ、ダダダ、ダダダ。

三点斉射を三回ですべてのゴブリンは死亡した。

「魔石は持っているか」

「はい、しかしゴブリン程度では、役に立ちません」

「そうか、では行こう」

「はい」


近くの町に昼頃到着、召喚の噂の聞きこみを行う。

しかし、やはりない。

そりゃ、秘技だからな、そう簡単に漏れてくるわけもない。


現地人の情報屋を紹介してもらい情報収集するが、無理なようだ。

仕方がないよな。


宿をとる。

勿論別室を希望。

「一部屋でかまいません」

いやいや、俺がかまうんですが。


久しぶりに料理らしいものを食う。

勿論足りない味は、調味料を加える。

とてもおいしくなる。

ビールはエールと呼ばれている似ているものが存在するが、冷えていないので、仕方なくスーパーな奴を飲んでいる。アルミ缶どうするかな?捨てると不法投棄になる。

廃掃法は罰金が高いのだ。罰金が高いのは、今まで不法投棄する輩の歴史のお蔭である。


その夜も何かがあふれてくる情熱に包まれた。

仕方がない、俺は魔導師、格が高いのだ。

クララは、・・・・。


やめておこう。


仕方がないので、クララの腰にもガバメントをつけてやる。

ホルスターをつけてやり、銃を入れる。

そして、手取り足取りで、抜き撃ちを教えてやる。

こうなるから、女なんか連れて行くのはいやなのだ。


「しかし、妊娠したら、どうする気なんだ」

結局、昨晩もクララが押し寄せてきたのだ。

「その時は、交代の者が、支援に来ます」

「え?」

「支援は必要でしょう?」

「まあ、いるといえばいるが、なくても何とかなる」

そもそも、完全自己完結型戦闘ユニットなのだし。

ついてこれる奴がいないというのが、現実だが。


交代要員はきっとまた女に違いない。

これだけは確実だ。

結局、俺は仕方なくクララと共に旅をすることになる。



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