第8話 クララ

008 クララ


「俺はこれからいろいろと旅をするその中で、仲間はとてもうれしい、仲間が必要な場面もあるはずだ。だが、そのあとは自分の国に帰る必要があるのも事実。」


「はい」

「君は聞いたかも知れないが、俺が探しているのは、異世界召喚者、彼らを連れて帰るためだ。帰る場所、そこはつまり異界だ。俺もそこに帰る必要がある」


「聞いております」

「君を連れていけないんだ」


本当は連れ帰ることも可能だろう。おそらく、棺桶の数は足りる。もともと、予備も持っている。それよりも、誘拐者は、勇者候補を決して手放さないだろう。

だから、乗り物はあるのだ。


だが、あの世界に連れて行って幸せになるかといえば、う~んと唸るしかない。俺の住む世界は、そういう世界なのだ。

異世界帰りの俺が、こう考えてしまうほどの世界。


確かに、食い物はうまいし、衛生的、住みよい街なのだが、人々が本当に幸せなのかどうかに自信を持てない。どちらかというと、不幸せ人の方が多いような気がするのだった。

まあ、俺は金儲けのために帰るのだがな。



クララの顔は愁いを含む。

「シャドウ様、この世界には異世界から来た勇者の伝説は存在しますが、異世界に帰った勇者はおりません」


「クララ、俺は、召喚されてきたわけではない。やってきたのだ」

「・・・・」


「帰る方法も勿論あるのだ」

「では私も」

「君が行って幸せになれるとも思わない」

「大丈夫です。私は、シャドウ様の手伝いをするようにいい使っただけですので心配はいりません」


クララが俺をどのような存在と考えているのか。

またクララが何故冒険の手伝いをするのかもしらない。

だが、クララはそれでよいと考えている様だった。


「グレンリベットがどんな事を言ったかは知らないが、この旅は危険だし、俺は君に報いる術を持っていない」

「ご迷惑ですか」


「・・・・」本心は迷惑だ。俺だけなら一人で何とかできる自信はある。だが彼女を連れていればいつでも助けてやれる自信はない。

「では、一つお願いがございます」

「なんだ」

「今夜抱いてください」顔を赤らめながら下を向くクララ。

「なに?」何を言っているのかわからない。


中世ヨーロッパ風異世界では、これが常識なのだろうか。

そんなことはない。前いた異世界では、そんなことはなかった、はず。

初めてあった男に抱かれる習慣がこの国にはあるのか!


そんな凄い事、いや、おかしな事があるのだろうか。

変なアニメを見すぎたのか?

いや、俺が言っているのではなかった。


「事情を聞いてもいいか」

「夜に語ります」

断固として、引き下がらないらしい。


クララは白人種で、赤い髪の毛に蒼い目をしている。

身長は165程度、少し瘦せている印象。見た目は非常に綺麗な感じの娘である。


街に返す手前、先に進めなくなってしまった。

しかも、夜にならないと語らないという。

仕方なく、夜営用にテントを張る。

喜んだのは、馬だけであろう。ヒヒーン。


夕方、夕食の準備を進める。

今夜は、ステーキだ。勿論、オークなどではない。

和牛だ。塩とガーリックパウダーだけだが、和牛は美味い。

レトルトごはんを湯煎で作る。日本人の俺はやはりごはんが大好きだ。


クララとは、あれ以来一言も口をきいていない。

なんだよ、この展開はよ~。重いだろ。


缶ビールを片手に、キャンプ用のテーブルで作った食事を食べる。

缶ビールは、やはりスーパーなドライである。よく冷えている。

アイテムストレージは入れたときの状態をそのまま維持できる。

冷えたビールは戦場では必須のアイテムということで大量に入れてある。

それを、おそらく二十歳すぎのクララに飲ませる。

顔はそっぽを向けているが、あまりの上手さに驚いているのが手に取るようにわかる。


因みにクララは外国人だからフランスパンを与えている。

なまえからすると白パンだったろうか?


何ともな展開で、夜は更けてゆく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る