第7話 拳銃

007 拳銃


コルトガバメントは、弾付きで大金貨2枚で販売できた。

金貨1枚は約30g大金貨はその10倍で300gもある。


この拳銃は、俺が米国本土でたまたま買い付けたものになる。いや、たまたま買ったのものが入っていただけなのだ。

銃器販売を目的に購入したわけではないのだ。そもそも、出動することがないはずだったのだから、信じてほしい。


え?その割には、何十丁も入っているって?

それは誤解だ。俺は、銃マニアなんだ。だからつい一杯買ってしまったんだよ!


銃自体は米国で買えるが国内(日本)に持ち込むことは違法行為である。

勿論その通りだ。

しかし、収納ボックスに入っているのを忘れていたものなのだ。

この異世界では銃に関する規制はないから、法には抵触していない筈。



かなりの価格で買い取ってもらったので、使用法を丁寧にレクチャーする。

分解掃除も教える。

丁寧な掃除が長持ちにつながる。

ただし、あまり人殺しをしないように釘を刺しておく。

また、実弾も300発ほど売り渡しただけである。

異世界で影響をあまり与えたくないからだ。


「本当にありがとうございました」

グレンリベットは、頭を下げる。

娘の事か、拳銃の事なのかはわからない。

いざというときだけにしてくれとは言っている。


そういえば、朝起きた時になぜか、隣に裸のメイドが寝ていたのには少し驚いた。

彼女はきっと夢遊病患者なのかもしれない。


そして、旅立ちには、娘付きの侍女がなぜか旅人風の衣装で立っている。

「クララは元冒険者です。彼女に道案内をさせましょう」

いや、邪魔だから。


「クララは可愛そうな子なのです」なぜか耳元でおっさんがクララの身の上話を始める。

曰く冒険者のころ結婚する相手が決まったのだが、相手は冒険で死亡。失意の内に結婚適齢期を逃す。腕を買われて娘の侍女兼護衛として今に至る。此処は是非、可愛そうなクララを助けてやってほしい云々。


どうせなら、夢遊病患者の方が若くて好みなのだが。

「ご心配はいりません。あなた様の必要がなくなりましたら、当家にお返し下されば問題ございません」何気に恐ろしいことを平気で言ってくるところが、異世界の醍醐味である。


一体、何の心配なのかも不明だが、クララはこうして旅の仲間になってしまったのである。

本当に何がなんだかである。


「クララが旅の無聊ぶりょうを慰めてくれるでしょう」あんた言葉の意味が露骨すぎるでしょう。

「誠心誠意お仕えいたします」よく見るとクララもまだ二十歳すぎの綺麗な女である。

16歳で成人になるこの世界では、二十歳すぎは行き遅れのそしりを受けることになるのである。まじでヤバいな異世界。


「シャドウ様、クララはまだ男を知りません」

おいお前、何いらん事を言ってくれてるの!


クララにもその声は聞こえているのか、赤くなり顔を下に向ける。

おい、お前ら何を言ってくれてんの!

しかも何気にクララの反応が可愛いじゃないか。


こうして俺たちは、ロマール帝国の首都を目指す旅が始まった。

ロマール帝国とは、グレンリベット氏の話に出てきた帝国の事である。

王国の方は、ロムール王国といい非常に紛らわしいが、元々が同じ国から出たので仕方がないのであろう。

帝国の首都の方が、このアレッポ地方から近いのだ。

何でも、王国に行くには、大山脈を越えねばならないらしい。


つまり、帝国と王国の国境は大山脈ということになるというわけだ。


馬に乗る。

この世界にも馬はいた。馬という名前かどうかは知らないが。

俺は、元いた異世界でも馬に乗っていたおかげで乗れるのだ。

冒険者が、旅をするときは馬を使うことがある。

今回は、グレンリベットが馬を2頭も出してくれたのである。

馬も財産の一形態である。

不要になれば、売ったり、食べたりすることができるのである。


アレッポを朝早くでて、昼には森の中の少し開けた場所で昼食をとることにする。

中世ヨーロッパ風異世界では、朝昼晩の3回飯を食うみたいだが、普通は、このような時代の風景として朝夕の2食が普通なのである。


クララは昼飯というと、少し驚いていた。

「馬も休ませないといけないし、丁度いいだろう」

「はい、シャドウ様がそうおっしゃるなら」


「まあ、あまり美味いものはないが、これを食べよう」

取り出したのは、レーションである。

自衛隊用のはまずいと評判なので米軍のレーションをとり寄せていたりする。

だが、今日のものはカレーなので、普通のレトルト食品と変わらない。

火打石(といっても金属の棒)とナイフで火を熾す。

アルミ鍋で湯を沸かし、カレーとごはんを温める。

皿とスプーンはアイテムストレージに入れてある。水もかなり入れていたりする。


「シャドウ様はやはり、アイテムボックスをお持ちなのですね」クララは少し驚いている。

「やっぱり想像されてた?」


「はい、ご主人様がシャドウ様は普通の冒険者ではないことは明かだと」

「そう、俺は至って普通の冒険者なんだが」

「アイテムボックスを持つだけでかなり普通ではないと思います」


異世界にもいろいろあるのだろう。

この世界では、アイテムボックスは普通ではないようだ。


「これは!」

さすがにカレーの初見は言わずもがな。

これは美味いのだがな。俺が食べるとやっとクララが何とか食べ始める。

「え!おいしい」

そうだろう、そうだろう。


美味いに違いない。

結局がつがつと瞬く間に食べきってしまう。

まあ、腹いっぱいという概念がないのだから仕方がない。

皆、食料をほぼ自給しているため、腹いっぱい食うなんてことは難しいのだ。


「夜は野宿になるのか?」

「はい、まだ町までは距離があります」


そう、輸送も大変なため商業も発達しにくい。

道路整備もされていない。

森が多いので、夜盗や追いはぎが出る。

しかも、魔獣まで出るのだ。

なかなかハードな世界なのである。


クララの装備は革製の防具だ、弓を背負い、剣を腰に下げている。

俺は、剣だけである。


「クララさん」

「クララとお呼びください」

「クララ」

「はい、シャドウ様」

って俺は様付けかい。


「クララ、君は元冒険者なんだろう」

「はい」

「じゃあ、此処から一人でアレッポに帰ることなど容易いよな」

「勿論です」

「じゃあ、帰ったほうが良い」

「え」クララの顔はとたんに暗くなった。








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