第5話 ファーストコンタクト

005 ファーストコンタクト


丸太杭の防壁では、村程度である。

勿論、中世ヨーロッパ風では治安は期待できないので、門衛がいる。

安心安全な中世はないのか?


「お前どこからきた、身分証を出せ」

二人の男が槍を向けて誰何してくる

「ああ、すまん身分証は持っていない」

装備は、かつていた異世界での装備をしているのでそれほど違和感はないハズ。

そしてここでも、なぜか言語は通じる。

異世界共通言語スキルの素晴らしい事よ!


「じゃあ、銀貨一枚」

「これでいいか?」かつての世界の貨幣を出す。

「これは何処の国のものだ、見たことないが」


だが、銀貨は威力を発揮し通ることはできた。

これで、身分証代わりになる、ギルド登録というわけだ。

さすがに、2回目の異世界ともなると慣れたものだ。


ギルドで冒険者登録を行う時には特に、定番のからまれは発生しなかった。

すでに、新米冒険者ではないからだろう。

Fランクの冒険者「シャドウ」が誕生したのである。

ここに来るまでの間に、ゴブリンを討伐したので、証明を見せる。

耳で良かったようだ、すぐにEランクへと昇格を果たしたのである。


しかし、冒険者シャドウはまじめな冒険者ではない。

冒険者プレートを貰うと、すぐに飲み屋に行き、色街へと行ってしまうのである。


そして、なんと次の日には、村を去ってしまうのである。

彼は、身分証明と情報だけが必要だったのである。

そういう意味では、彼は超がつくほど合理的だった訳である。


「この村では、情報が採れない」これが彼の結論だった。

すぐに、別の都市へと向かうことにしたのである。


村を出れば、彼は背中に89式小銃を背負い、迷彩軍服に着替える。

因みに、服装のチェンジは魔法でできたりする、便利な魔法が存在するものだ。

俺は魔導師だ。魔道士ではない。彼らを導くことができるものの事を魔導師と呼ぶ。

そう俺の方が、ランクが上ということだ。

さらに言うと、魔術師が間に存在しており、魔導士の士は、兵として就職している兵士の事であり、仕官していないものは、魔法使いである。


しばらく進むと、前方でトラブルが発生しているようだった。

これぞ、『盗賊、馬車を襲う』の図であった。


何故、そのようなトラブルが発生するのか?

もちろん、この世界では馬車が一般的輸送手段であり、その荷物は必ず価値があるからである。

一般人は徒歩での移動である。

勿論一般人の旅行者も盗賊には襲われるのは当然である。


盗賊の数は十数名であり、馬車の護衛は数名の冒険者である。

「救援に入る!」たった一人の男が入ったところで何ほどのことがあろうか!


と盗賊のリーダーは考えていたことであろう。

バンバンバン、奇妙な筒から火が吹き出す。

そのたびに、部下が次々と打ち倒されている。

「魔法か!」


ただの射撃である。

「よし、貴様、降伏せよ!」盗賊のリーダーに命令する。

すでに、部下は全て倒れている。


馬車の中から綺麗な女の子が出てくる。

お付きの待女も震えながら出てくる。


「すいません、少しお時間をいただきたい」と俺がいう。


お嬢様が首肯する。


盗賊は近場で仕事をする、縄張りがあるからである。

そして、大体は拠点を持っている。

洞窟などの見つかりにくいような所である。

捕らえて、街に連れて行けば賞金首であることもあるのだが、連れていくのが面倒である。

因みに、この世界でも盗賊は死刑と相場は変わらないはずだ。


手っ取り早く、拠点にためてある金目のものを集め、リーダーを処刑し、洞窟に火をかける。残念ながら、以前の異世界経験で、人殺しに忌避感はないのだ、本当は優しい男なんだよ。


ただし必要な事を正確に手早く行う。これが以前の世界で学んだことだ。


「お待たせしました」処理が済み、第一声が之である。

ひどいとか言わないで欲しい。

異世界では、特に中世(風)では、人の命など木の葉程度の重さでしかないのだから。


「先ほどは助けてくださいましてありがとうございます」とお嬢さん。


護衛の冒険者の身分証(ドックタグ)は集めている。

「いえ、大したことはありません」

「お礼をさせていただきたいので我が家へお越しください」

此方の予定通りの展開で大変うれしい。

勿論、いかがわしい事を期待しての事ではない。この世界でのコネと情報を得るためである。


みたところ商人の娘であろうか?

商人には情報が集る、というか情報を集めていない商人などすぐに潰れてしまうに違いない。

此方は、アブダクトの情報が必要なのだ。


「あの、先ほどのものは魔法なのでしょうか?」と侍女。

「ええ、そうです優れた魔術なのです」と何でも適当に嘘をつく癖がついてしまったな。


悲しい性ということか。

寄る辺なき異世界転移者には、何が真実なのかという事を見抜くことと、本当のことは決して教えてはならないということが、身に染みついたということである。


それが生き抜くために必要な技術なのだから。

決して嘘つきなんかじゃない。

私を信じてほしい!(こうして嘘を吐き続けるのである)





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