第4話 自称魔導師、異世界の大地に再び立つ!

004 自称魔導師、異世界の大地に再び立つ!


転移の時間が短いのか、長いのか定かな記憶はないが、とにかく途中で、急激に冷えたと思ったら、高温で焼かれるような感覚が襲った。


自己修復能力が高かったので、生き残ったような気がする。

前回の転移によるスキルが無かったら、ヤバい状況だったのでは無かろうか。


宇宙服で、棺桶のふたをはずすのはなかなか難航したが、何とかふたを開けることに成功する。


転移直後は少し高所に出たようで、落下し着地した瞬間の衝撃はひどかった。

チタン合金のフレームは硬いが衝撃を吸収してくれる訳ではない。


蓋が開いたとき俺は、宇宙服のガラス越しに世界の空を見上げていた。

ガラス越しでも、空は非常に綺麗にみえた。

「異世界の空は青かった」


起き上がり、頭部をくるくると回してようやくヘルメット部分が外れる。

新鮮な空気が心地良い。


やはり、トラブルがあったようで、宇宙服には燃えた跡があり、棺桶の強化プラスチック部分は燃え尽きている。

おそらくだが、普通の人間なら、焼け死んでいたのではないだろうか。


上半身部分を脱いで、下半身部分を脱ぐ。

ようやく、生きた心地を味わう。

そして、何とか、この異世界で初めて立ち上がったのだ。


周囲は草原で、危険は無いように見える。

しかし、見えるだけだ。そんな常識は通じない場所だからな。


だが、そんな事を気にしていても仕方がないので、コンバットスーツを着用し、防刃仕様のチョッキを着こむ。

サバイバルシューズにサバイバルナイフ、拳銃M1911(コルトガバメント)、そして自動小銃89式5.56mm小銃を肩に下げる。


しかし、5.56mmの自動小銃だと威力が不足するような気がするのだが。

ゆえに、拳銃は官給品から変更してもらった。


棺桶と脱いだ宇宙服は、アイテムボックス(所有スキル)にいれたころ、それはやってきた。


ギギギ、グギ、グゲゲ

俺を指さして、何かを言っている緑色の小人達、眼が赤く濁っているのが何とも怖い。


89式(89ではなくハチキュー式)を構えながら、躊躇なく引き金を絞る。バババッ!銃の基幹部には、兵士たちの祈りアタレの文字が入った逸品である。

その願いがかなったのであろう。


緑の小人が一匹、血をまき散らしながら倒れる。

どうやら、ゴブリンクラスなら銃撃もありなのだろう。

簡単に3匹のゴブリンは死んだ。

この世界ではどうか知らんが、耳を切っておく。

討伐証明になる可能性がある。


一応、甲州金のような金の固まりはいくつか持っている。

これも、異世界対応用の活動資金である。


なぜか何処の異世界でも金が通貨になるということは、金(ゴールド)を金に変えることができるからだ。


だが、支給額は少ないので、地元調達が重要になる。公務員はとにかく予算という言葉が大好きだ。簡単にいうと予算がないので、もう渡せないのだという。勿論その職場の予算は少ないのだが、別の部署では、有り余ったりしている。それが予算の実態といえるだろう。


気配を探りながら、道を探す。その間に、拳銃とナイフでの攻撃を行い、威力を確認する。

地球と変わらぬ威力はあるようだ。但し、魔法がかかわってきた時にどうなるのかは、また別の問題だ。


夜になり、大木の上で仮眠を取ることにする。

地上部分には、対人地雷をセットしておく。こうすれば、遠隔スイッチで爆破できるからだ。案の上、人間の臭いを嗅ぎつけて狼のような獣がやってきたが、M18クレイモアで撃退することに成功する。


飯は軍用のレーションを食べる。米軍のレーションの方が、種類が多いので、取り寄せて持ってきている。


「さあてと行きますか」誰もいないので、一人言だ。

また、あてのない旅行を開始する。一応魔法使いなのだが、サーチ系は苦手だ。

とりあえず攻撃系魔法は、発動することを確認している。


そういえば、夜中に起きた時、夜空に月が二つ輝いていた。

さすがは、異世界である。引力とか強すぎて狼とかになったりしないか心配だ。


元、俺が飛ばされた異世界では、月は一つだったな。


「ステータス!」

これは異世界では定番の呪文のような物である。

自らの能力を表示する時に唱える呪文のような物である。


但し、その世界のシステム、敢えてシステムというが、それに合致していないと、表示されなかったりする。そもそも、ステータス表示のない世界もあるのだから当然である。


かくいう俺は、元の世界でそれを表示できていたので、表示される。

ただし、言語が違うせいで、数値や表示がバグっている。

問題はそんな事ではなく、ステータス表示があまり極端だと問題があるため、改竄する必要があるのだ。


バグっているが数字を、改竄の魔法で低く抑え、スキル表示もおかしなスキルなどを隠蔽、また、称号欄も隠蔽する。

もちろん俺が魔導師であればその程度は容易いということにしておこう。

我こそは、偉大なる魔導師であり賢者のカゲノなり!


昼過ぎにやっと、馬車の通るのを確認する。

街道に行き当たったのだ。


俺は、馬車の過ぎ去った方向へと歩き始めた。

それから、夜をまた木の上でキャンプをし、次の日の昼、街までこぎつけることができた。


丸太で囲んだ壁が見える。

異世界ものによくある、中世ヨーロッパ風の世界なのだろうか。

馬車が走っているので、あまり進んだ文明ではないだろう。エアカーが飛んでいたら、正直ヤバいかもな。


まあ、何で中世なのかは不明だ、どの異世界も文化や科学が発展しないのかもしれない。

とにかく蒸気機関が発明されないと発展しないのかもしれんな。

産業革命が発生しないだろう?


但し、魔法文明が栄えていたりするのだがな。

俺の一人考察旅は続く。

一人言のオンパレードだ、寂しさを紛らすためだ。

許してくれ。





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