第2話 各種調査
002 各種調査
術式解析プログラム(通称:アナライザー)
魔術術式解析プログラム、通称アナライザーに撮影したデータを流し込み、解析を依頼する。この解析に使われるコンピュータはいわゆるスーパーなコンピュータである。
世界でも指折りの計算力を持つコンピュータをもってしても解析までには、相当な時間かかるはずだ。
その間に、アブダクティッドの両親などの調査も警察の公安部門が行う。
何をするのかというと、最も勇者になりそうな人間を推測するためである。
性格、能力、思考方法などを推定し、最も勇者確立の高い人間を割り出すのである。
勇者になる人間は基本的に高性能なのである。
頭がよくて、性格もよく、文武両道、才色兼備であることが多いのだ、なぜかは知らん。
両親、学校関係者、親戚などに事情聴取していくとそういうことが判明していく。
調査が進むと、勇者候補は数人に絞られてくる。
「候補は、榊原 太陽(さかきばら たいよう)で決まりだな。」と俺。
「そうでしょうか?」公安部門の女性がいう。
「え?他にもいるの」
「はい、太白 瑠葵(たいはく るき)さんはどうでしょうか」
「女の子だよね」
「班長は女性蔑視なんですか」
「いや、そういうわけじゃない、ちょっと読めないなと思って」いわゆるキラキラネームでよめなかったのだ。
「まあ、でもまずは榊原の両親から、特殊電波(オーラ)解析を始めてくれ」
「わかりました」綺麗なおねーさんは、首肯した。仕事のある時は、このようなきれいなおねいさんが来てくれるのだ。電話番のおねーさんがきれいでないといっているわけではない。
特殊電波(オーラ)とは、人間が持つ固有の周波数だと考えてもらってよい。
人それぞれだが、遺伝の影響は受けるので、おそらく片親に似たようなものになる。
それで、勇者候補の持つ特殊電波(オーラ)を推測し、その特殊電波(オーラ)を感知する事で、彼らの居所を特定するという事なのである。
位相間特殊電波(オーラ)レーダー(通称:異次元レーダー)で彼らの発する微弱な電波を捕らえるのである。
これは、某科学者との共同でそれを探知するレーダーを開発した。
とても微細なものであるため、スーパーな観測システムになってしまったのである。
スーパーなコンピュータが解析を行っている間、勇者候補の親の特殊電波の解析と合成が行われるのである。
「富嶽を占有しているため各所から抗議が来ています」公安の綺麗なお姉さんが声をかけてくる。
「ああ、でも俺に言われてもね、参事にメールしといてよ」
「わかりました」
スーパーなコンピュータは今後術式解析後に術式構築プログラム(コンストラクターの演算処理を行う必要があるため、さらに占有期間は長引くに違いない。どれだけの電気代がかかるのだろうか。まあ、やはりスーパーなコンピュータは、最高のものでなければならないということだろう。電気代がかかるとしても。
コンストラクターで導き出された魔術式で、今度は、ダイバーを異世界へと送り込む必要があるのだが、そのダイバーこそがこの俺ということだ。ついに俺の出番という訳だ。
しかしダイバーとはいうがほとんどかつての神風攻撃隊の隊員のようなものだ。
まさしくダイ=死ぬ、バー(人)なのだ。
まず、魔術式を新潟県某所で描き出す。しかし書いたからといって発動する物ではない。
そこには、超大電力魔力変換装置(マギトランサー)が据えられ、巨大な電力を魔力に変換する。このマギトランサーも俺と某電機メーカーとの共同開発。(この巨大な機械は、大型トレーラーで運搬可能だ)
巨大電力は、新潟県の某所で発生する電力をこのマギトランサーに注入し、巨大電力(魔力)を得て、術式を稼働させるのである。
この時、ダイバーは身一つでこの術式上にいる訳だが、ああ勿論身一つといっても装置はある。通称棺桶と飛ばれる箱である。箱というか繭みたない形の入れ物である。
なんか、ミイラとか入れるとぴったりな感じのものである。
そして、ダイバーはこの棺桶に入ることになる。木乃伊ではなく、生身でである。
ああ、もちろん実験はされている。
例えば、異世界トラベルではなく、北海道某所への転移実験を行った所、棺桶は確かに北海道の某所へと転移したのだ!
まあ、これもコンストラクターのプログラムが優秀だったおかげだ。
勿論、俺がほぼ作り上げたものだ。
だが、棺桶に入っていた人間は、黒こげだった。
こうして、本当の名前は何とかと付けられていたが、皆がもうこれを棺桶としか呼ばなくなったのである。
正式名称を呼んでいても、頭の中では『棺桶』と変換されているのだ。
棺桶の実験体は死刑囚であったため、問題なかった。(イヤ、あるだろう!)
斯くして、実験が何回か行われ、改良を加えられた棺桶マーク5でついに死体が生焼けになり、実験は終了したのである。
というのは、棺桶マーク5に入る前に、耐火服を着れば大丈夫そうということで解決を見たのである。
そもそも、この棺桶にのるダイバーは俺だから、多少難があっても可ということらしい。
『魔術師なんだから、大丈夫でしょう?』某技術研究所の所長が妙な質問を投げかけてきたのである。
因みに俺は『魔導師』魔術師ではない。もっと上の存在なのだがね、所長君。
要は、これくらい防げるよなということらしい。
因みにいうと、連れ帰る人間もこの棺桶5号に乗るが、帰る際には、受けるエネルギーの量が少ないので、大丈夫との結論がでていた。
行くときのエネルギーの方がはるかに大きい。帰るときは、帰る場所がはっきりしているため、エネルギーが少なくて済むのである、そういう計算が立っているのである。(まあ、本当はどうか知らないが、これはご都合主義の産物なのでなんともはっきりしない。)
・・・・
両親の特殊電波(オーラ)から、息子(太陽)の特殊電波を合成し、異次元レーダーで探知を開始する。
可変式異次元チャンネルで、無限の異世界を捜索する。
スーパーな観測システムが微細な電波をキャッチする。
そして、次は、スーパーな魔術式を稼働させ、ビーコンを異世界に送りつけるのである。
ビーコンが届けば、そのビーコンを目掛けて、ダイバーが特攻するのである。
まるで、衛星使用の誘導爆弾の様である。
ここまでの経緯を見てくると、何故政府の肝入り政策であった、特殊誘拐対策が実際に行われなかったがわかるであろう。
そう、とにかくものすごく金がかかるのである。
機材は、すでに投資済みだが、送るにも膨大な計算と電力、人材と。
とても気楽に行える物ではないことがはっきりとしたのである。
政府もそれに気づいたときに二の足を踏むことになった。
・・・・
今回は某議員の子息がからんでいたための出動なのである。
一般人が特殊誘拐されたとしても、動くことはないのが現状である。
「で、参事。成功報酬の件ですが」電話の相手は、上司の参事である。
参事という役職がどれくらい偉いのかは不明だし、顔を覚えてもいないが・・・。
「一人辺り1千万円というところかな。」
勿論命令書に書かれている、賠償金1人当たり1億円相当の金(ゴールド)、死亡した人間がいる場合はさらに1億円。諸経費10億円。
今回は先生込みで31人がアブダクトされたため、全員無事なら31億プラス10億で41億円相当の金(ゴールド)をせしめる必要があるのだが、そんな簡単に行くことはないだろう。
何故なら、彼らは此方の世界の迷惑を考えず、アブダクトするような連中なのだから、此方の言い分など簡単に飲むことは勿論ないと言える。断言できる。
かくいう俺も、そのような環境だったからな!
ゆえに、俺は成功報酬を別に払ってもらうことになっている。
今の会話では、一人連れ帰れば、1千万円を報酬として得ることができるということだ。
「安すぎるでしょ、俺は棺桶5号で焼け死ぬ覚悟で乗り込んで行くんですよ、さらには、相手の所にたどり着き、交渉して、アブダクティッドを連れ帰るんですよ。特攻隊の次は、国王相手の交渉、下手したら逆に此方がアブダクトされる可能すらあるんですよ」
「一人3千万円はいただきたい」と俺。
「君も知っての通り国家には予算というものがある。予算がないのだよ」
「官房機密費があるじゃないですか、王族の警護にも金回してるんでしょ、週刊誌にも書いてましたよ」
「君、あんなものは、謂れの無い物語なんだよ」
「へ~でも三千万で」
「ところで、議員の子息のことは聞いているね」
「ええ、俺は公務員なので、皆平等に助ける気ですがね」勿論、男と女なら女を優先的に助けるがな。
「彼を連れ帰れば、特別報償金が付く、10億円だ」
「何ですかそれは、やっぱりあるんじゃないですか、機密費でしょ機密費、それとも外務省の予算ですか?」
「議員から打診があった」
「まあ、努力はしますよ、その代わり必ず約束は履行してくださいよ、必ずですよ」
「ああ」
そうして電話は切れる。
要は、一般人よりも、要人の子息をとにかく優先しろということらしい。
まあ、此方も得になる方を選ぶがね。
1千万円と10億円どちらが得かなど、考える必要もない。
それだけの金があれば引退だな、できたばっかりで初めての仕事だがな。
こうして、打算的に物事は動いていく。
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