第18話 王城突入
手についた血の生暖かい感覚、鼻につく鉄くさい血の匂い、そして、手には真っ赤に血塗られた短剣。
――僕は人を殺してしまった……
何かそこの方から冷たくなっていく感覚と、自分の決意の弱さへの憤り
そして、何よりどこか高揚感を覚えてしまっていることへの自己嫌悪
それらの心情が引っ掛かり、息が荒くなってくる
「立て隠夕、ここで止まるわけにはいかないからな」
ハボックさんが強い口調で僕にそう言う、だが僕はどうあがいても立ち上がれない。
それに気付いたのか彼女は
「先にいってくれ、すぐに追いつく」
部下にそう言うと、部下たちは先に行った。
「それで、隠夕、これは誰のための戦いだ?」
「それは、、俺らの、、」
「確かにそうだな、貧民街のためでもあるが、それよりもお前らの自己満足が強い」
「そうですね、、」
「まぁ、そこは気にしていない、戦いというのは結局自分の意見を通すため、権力や名声を得るためのものが大半を占めていて、少しでも他人のためというもの自体珍しいものだ。
だから、そこを責める気はない。」
ハボックさんはいたって穏やかにそう言った、しかし急に声を荒げて
「だがな、甘えたことを言うな。
戦場では必ず人が死ぬ、そして、人が死ぬということは誰かが人を殺すということだ。誰にもその機会は訪れる、殺さなければ自分が死ぬ、味方が死ぬ、だから必死になって人を殺すんだ、お前もそうだっただろ。
他人に命を懸けて戦ってもらっているのに、自分たちは誰も殺したくないなんて甘えたことは言えるか?」
ここまで言い切り、諭すように続ける
「自分を、自分のために戦っている人のために人を殺す。それが私たちの戦い方だ
まぁ、嫌なら逃げればいい、死んだ奴らに恨まれ続けるだろうが」
――そうだ、俺は何を甘えていたんだ、、、、
僕は一度大きく息を吸い、大きく吐き出した。
罪悪感も自己嫌悪も消えないが、決意がついた
人を殺すことへの抵抗は消えない、いや消えてはならないし殺さなくていいなら殺すつもりはない。
だけど、やるしかないんだ。皆の、僕たちのために戦ってくれている人たちのために
僕は足の震えを抑え、立ち上がった。
「じゃあ、行くんだな」
「はい」
僕とハボックさんは先に行った部隊に追いつくために駆け出した。
追いついたのは城の入り口前で、翔風くんや剣波さんたちも合流してきたので、これで全員だろう。
「ここからは少数精鋭でいく、先ほど決めたように準備」
ハボックさんの合図で、クラスメート二十数人とあとはハボックさんとその中でも強そうな十人ほどが突撃の準備をし、他の人たちは決めた各々の持ち場に行った。
「さぁ、行くぞ」
翔風くんがそう合図をかけたと同時に、魔法が何発が木造の扉に放たれ
扉は消し炭になる。
そして、王城に突入した。
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