第17話 破滅の時間

 何かがおかしい、二人の攻撃は殺そうとしているのではなく時間稼ぎをしているように感じる、、


 二人からの攻撃をいなし、戦闘不能を狙った反撃をくらわせていたのだがその違和感が頭から離れなかった。

 そして、金属同士のぶつかる高音にまぎれて


「そろそろ、あの方がいらっしゃる時間だろう」


 という声が聞こえた。聞こえたと同時に違和感が不安感と確信に変わった。

 俺は火事場の馬鹿力的な原理で沸いてきた力で二人を戦闘不能にし、若花や貧民街の人々のいる方へ全力疾走した。


 どうか、誰も死んでいないでくれよ、、


 そう願ったが、ついた瞬間その願いは無様に砕け散った。


「お、まだ残っていたんだ」


 目の前には貧民街の人たちの血で塗られた貧民街に、若花の髪の毛をつかんでいて、ふらっと遊びに来たという雰囲気で、四大武官の一人がいた。クラスメイト達は殺されていないようだが、相当やられた様子で壁にもたれかかる感じで気絶していた。

 その光景を見た俺は吐きそうな不快感と、自己嫌悪、あとは燃え上がるような怒りを覚えた。


「やめろぉぉぉ」


 そう叫びながら俺は突進していったのだが


「蒼くん、、、だ、、め、、にげ、、て」


 若草は今にも壊れそうな声で俺にそう言った、それで俺は我に戻ったのだが、冷静にはなれていないようで、心の中がドロドロとしてきた。


「離せよ、その手、、、離せよ」


 気付けばこんなことを言っていたのだが、意味など一切なく、


「え?じゃあ、僕を倒してみなよ」


 この時から少し意識が飛んでいたのだが、次気付いた時には壁にたたきつけられていた。


「いやー、勇者じゃないくせにヒーローぶって、それでこんなに弱いなんてもうどうしようもねぇじゃん、きみ」


 あぁ、確かにそうかもな、、ステータスも強くないくせに突撃なんてして、それでこのざまだ、、もうどうでもいいか、、


 んなわけねぇだろ!あいつを倒すんだろ!倒さなきゃいけないんだろ!俺が何とかするしかねぇんだよ!


【スキルが解放されました『???』→『破滅の時間』】


 どんなスキルか分からねぇけど、上等だ、ぜってぇあいつは殺す。


 あきらめかけたが何とか持ち直せた俺は新しいスキルを手に入れ、スキルの効果の確認すらせず、スキルを使用した。


 発動した瞬間、体の中が熱くなって、音が聞こえなくなっていった。体の限界を軽く越したような状態になっている。ふと短剣に反射された俺の目は人とは思えないほど赤く染まっていた。鼻血も出ているようだが、今は全く気にならないし、謎の高揚感が体の中で暴走していた。


 俺は今までにないほど強く、地面をけった。そしてあいつまでの距離を一瞬で縮め、躊躇なく首元を狙って短剣を振った。いまの俺をつき動かしているものは謎の高揚感とあいつを殺すという意志だけだ。


 まぁ、そんなので死ぬほどではなく、ギリギリで防がれてしまった。しかし、ギリギリだと言うのに、あいつの顔から余裕は消えず、不気味な笑顔が顔に貼り付けられていた。


「そんな力を隠していたのか、でも無駄だ。『技能奪取スキルスティール』」


『 技能奪取スキルスティール  Lv.15

  相手のスキルをスキルLv×30秒使用不能になり、このスキルがそのスキルに変化する。』


 相手のスキルを一時的だが奪うスキルか、厄介だな。でも、なぜだろう今の俺にそのスキルは通用する気がしない。


 自分の感覚を信じ、ただひたすらに攻撃を繰り返す、その勢いは衰えることもなく、徐々に攻撃のペースも上がっていく。あいつの方は防御はできているものの、表情からは余裕が消えていき、ある瞬間に絶望したような表情になった。


「なんで、スキルが効かねぇんだよぉ!」

 

 何を叫んでいるんだろう、聞こえないなぁ

 あいつはヤケクソで一撃を俺に喰らわせようとしたが、あたる前にはじかれ、あいつの剣は少し宙に舞い、地面に突き刺さった。あいつも地面にしりもちをついた。

 終わりの時がやってきたようだ


「す、す、すまなかった、俺が悪かった。だから、、命だけは、、許してくれ、、」


 当然、音の聞こえなくなっている俺にそんな言葉も届くはずもなく、、


「じゃあな」


 そう呟いてあいつの首元を掻っ切った。

 それと同時に音が戻ってきて、横から若花が俺の名前を呼ぶのが聞こえたが、応答する前に意識が遠のいていき、地面に倒れた。 


『 破滅の時間  ≪禁忌スキル≫

  自分のHP、MPなどをすべて使用し、自分のステータスを特段に強化する』


 

 

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