第12話 影山の交渉

「じゃ、この一番上の階にいるから。くれぐれも怒らせるなよ」


「ありがとうございます!」


 おじさんは僕の方に手を振ってどっかへ歩き去ってしまった。


 僕は気合を入れるために両手で頬を叩く


 僕に今後がかかっているんだ。


 そうして、ドアノブを回した。


「ん?お前だれだ?」


 そこにはガラの悪そうな人たちが数十人テーブルに向かって、昼間から酒を飲んでいた。


 僕は恐る恐る、ハボックさんについて聞くことにした


「あの、ハボックさんはおりますでしょうか」


「おっ、あねさんに用事か?」


「こんな暗そうな奴がか、見た目によらず度胸があるな。」


 一見柄が悪いように思えるが、皆さん根はいい人なようで親切に答えてくれた。


「よっし、じゃあ、その度胸のある少年に伝えておこう。あの人を怒らせるようなことは絶対にしたらダメだぞ。」


「重要なポイントは、お世辞を言わないことと、容姿についてこっちから触れないことだ。あと、顔をあまり長い時間見続けることはやめた方がいい」


「あ、ありがとうございます」


 貴族街の雰囲気に比べたらよっぽどいい、ほんとに人は外見で判断してはいけないと身をもって理解した


「いいってことよ!いまあねさんは一番上で資料でも読んでるだろうから、行くなら今のうちだぞ。」


 僕はしっかりと感謝の意を伝え、いざ最上階のハボックさんが居る所へ


 ――――――――


「姐さん、客ですぜ」


「わかった、通せ」


 扉越しに聞こえた冷たい女性の声。

 僕は今にでも逃げ出したくなったが、自分の役目を果たすためにドアを開けた。


 転校するときに身に着けた面接の技術をフル活用し、失礼にならないようにふるまうことにしよう。


 ドアを開けて、目に入ったのは口が頬の後ろのほうまで裂けている一人の女性だった。

 年齢としては20代後半に見える。スタイルもよく、上半身の露出度の高めな服を身にまとっていた、

 顔の方は口が裂けているところを含めても美人で妖艶ようえんな女性であるという印象を受けた。


 別に口が裂けていても気にする必要がないぐらい魅力的だとと思うが、他の人からは不気味がられることもあるだろう。


「お前も、私の顔を不気味に思うだろ。」


忠告されていたのに、その妖艶な姿に見惚れ、顔をじっと見てしまった。


「いいえ、あなたが魅力的すぎて見惚れてしまいました。」

 

 お世辞ぽっくなってしまったが、これは僕は実際にそうなのだから、これはお世辞じゃない。


 彼女は一瞬、邪険そうな表情をし、僕の方をじっと見て、少しして頬を赤くさせた。

 しかしすぐに取り繕い、入った時に見せた表情に戻して


「とりあえず座ろうか」


 彼女は部屋の真ん中に置かれてあるソファーを指さしながら、彼女自身も座った。


 僕はその正面に腰を下ろした。


「で、要件は何だ?」


「実は・・・・・」


 僕は事情をすべて彼女に説明した。


 ――――――――――


「そういうことか、嘘もついていないようだしな」


 僕が彼女に説明している間、彼女はずっと僕の方を見ていた。


「ご協力願えないでしょうか」


「我らにクーデターを起こせと」


「はい、、」


 流石、貧民街のトップだ、理解が早い。


「ところで、お前はここでの人々の生活を見たか?」


「、、はい、活気にあふれていて力強い印象でした、、、」


「その生活を崩してまで、そうしろと?」


 彼女は少し口調を脅すような雰囲気に変え、そう聞いてきた


 僕はこの時、『もうやめる』という方向に進みそうになったのだが、

 今回は自分らのエゴを押し通すときめたことを思い出し


「はい!今回は僕らのエゴを押し通すつもりです!」


 はっきりと力強くこう宣言することができた


 宣言を聞いた彼女は高らかに笑った

 そして、急に真剣な表情にもどり一つの質問を投げかけてきた。


「そうか、それほどの決意がお前にはあるというのだな」


 僕は言葉をどう返していいのか分からなくなる、だが決意があるのは確かだ。

 ただ大きく首を縦に振った。


「よし、いいだろう。気に入った、お前に免じて協力してやろう。それに、お前らが国をどんなふうに変えていくかも気になるからな」


「え、あ、ありがとうございます!」


 なんとか、貧民街を仲間につけることに成功したようだ。


「おう、他になんかあるか?」


「あっ!あの、武器の調達がしたいんですけど、、」


 僕はもう一つの要件を告げる


「そういう事なら腕のいい武器職人が貧民街にいるから、必要な武器を言ってくれたら用意しておこう、料金は出世払いだな。」


「ありがとうございます!」


「で、いつ頃決行するんだ?」


 彼女は僕たちが何も考えてこなかった、一番大事なことを聞いてきた


「あ、、すみません、まだ決まってません。でも、この一か月以内には必ず」


 僕が勝手に決めるのもダメだろうし、とりあえず帰ってから相談することにした。


「そうか、決行の日にちが決まったら来い。」


 彼女は少し残念そうな表情を見せたが、すぐに納得した表情に変わりそう答えた


「はい、では明日の夜にでも来させてもらいます」


「わかった」


彼女は短くそういうと、僕は部屋を出た。

部屋を出る前の彼女の顔が恋する乙女の顔になっていたのは気のせいだろうか。


~~~~~~~~~~

筆者便り


この度新作「現実はラブコメより甘酸っぱい」を投稿したのでそっちの方も読んでいただけたらな、と思っています


近況ノートの方に、今後の投稿スケジュールを投稿しておりますので、そちらも確認していただけたらな、と思っています!






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る