第3話 鑑定

「(彩、ちょっといいか?)」


 俺は彩の耳元でそっと言い放った。


「ん?どうした?」


「(小声で頼む)」


 今から話すことは衛兵に聞かれるとまずい、まぁ、ショウとはアイコンタクトで衛兵を任せておいたので大丈夫だろうが、


「(分かった。で、なんだ?)」


「(王様は俺らのことを操ろうとしてる。)」


「え?ほんとか?」


 あまりに衝撃が強すぎたのか、いつも落ち着いている彩ですらこういう反応になった


「声がでけぇよ!」


「(ああ、すまない)」


「(いや、逆に今ので分かったことがあるから大丈夫だ。)」


 幸い衛兵はショウとの話に集中していてあまり気にしていないようだ。


 俺はこの時間を使って彩に昨夜の出来事をすべて話した。


・・・・・・・


「(ほんとにそうなんだな?)」


「(あぁ)」


「(ほかの奴らにも伝えておくか?)」


「(それは、、口が堅そうな奴だけにしよう、うっかり口を滑らせたりしたら一貫の終わりだ。)」


「(了解した)」


 彩は頷きながら言った。その眼には覚悟の色が見えた。


 ――――――――――――――


 観光を終え、俺らは屋敷へ帰ってきた。


 俺は自室に戻るついでに、どこかに盗聴器の類がないか調べてみたが、そこまで技術は発展していないようだ。


 では、魔法や魔術で盗聴されてるのではと思い『鑑定』で調べてみたが、結果は『ただの壁』だった。


 だからこの屋敷で話し合うのは問題ないだろう。


 ただ広間には使用人が5人ぐらいいてそこでは話せなさそうだ。


 自室のほうも試してみた限り壁はそこそこ厚いので音は漏れない。


 ということで、話し合いの場は個人の部屋になるだろう。


 ――――――――――――――


 夕食を食べた後、


 俺とショウ、あとは彩の三人で俺の部屋にいる。

 言わずもがな、これからの作戦会議だ。


「どうするかなぁ、結局俺らレベル1で武器すらないわけだろ。」


「あぁ、俺に関しては非戦闘職だし。」


「私も武器は欲しいな。一応武道の心得はあるのだが、武器がないとどうにもならなそうだしな。」


 三人で下を向く。解決策まではまだまだ遠いようだ。


 しばらくは、案が出てはそれが消えていく


「そういえば、衛兵に聞いたんだけど武器屋は貧民街のほうにあるらしい。」


「そうか、行って武器を調達したいところだが、、無理そうだな。」


「いや、交渉のスキル使えばいけるか?」


 俺は自分のスキルの唯一の仕事を見つけれそうだった


「やめておこう、できたところで感づかれるだけだ。」


「まぁ、そうなるよなぁ。」


 ショウに一瞬で一蹴された、俺が納得してる間に、彩がひらめいたような表情を見せる


「どうした?彩?なんか思いついたか?」


「うん、交渉になると思うけど、魔王がいるってことはダンジョンがあるんじゃない?

 そこでレベル上げしたいって言ったら何とかなるんじゃない?」


「それありかもな。」


「そういえば衛兵もダンジョンがあるとか言ってたな。」


「じゃあ、明日早速お願いしてみよ、アオが。」


「まぁ、そうなるよな」


 俺も『交渉』スキルを試すいいチャンスだ。


「そういえば、俺ショウのスキルとかしらねぇ。」


「確かに、俺お前にステータスプレート見せてねぇわ」


「俺『鑑定』持ってるからいらないぞ」


 ショウがプレートを出そうとしていたのでそれを止めた


「そうか、じゃあ『鑑定』してくれ。」


「おう」


 俺は『鑑定』と念じた


『 夏海 翔風  勇者  Lv.1

 

 【スキル】

 神聖魔法  使用MP 10~

 聖属性の魔法が使えるようになる。


 不屈  使用MP なし

 自分にデバフがかかっている、もしくはHPが三分の一以下になった場合

 それに応じ自身のステータスを超強化する、

 デバフの効果は二分の一される。


 HP 600/600  MP 400/400

 PW 500  DF 450                     

                                    』


「バケモンかよ」


 ショウの化け物じみたステータスを見てそう呟いた、自分の『鑑定』スキルの違和感に気付かずに。


「私もそれ最初見たとき思った。」


 俺の意見に彩も同意する


「いいだろべつに」


「まぁ、そうだけど、、ねぇ?」


「うん。」


 三人に沈黙が流れる、まったく気まずいことなど無いのだが

 俺は耐えれなくなり声を発する。


「ショウの『不屈』のスキル強すぎんか?デバフで超強化って。」


「「え?」」


 あれ?俺なんかおかしいこと言った?


「そんなことステータスプレートに載ってたっけ。」


「いや、載ってないよ。」


「まじで?『鑑定』だと普通に見えたんだけど。」


 そういえば、他の奴にやってみたときは見えなかったな。


「もしや、『鑑定』のレベル上がった?」


 俺の中で一つの仮説が出た、それと同時に自分自身のステータスを開く


『 浪打 蒼  交渉人 

 【スキル】

 鑑定  Lv.2

 相手のステータスを確認できる         

                   』


 あ、あがってますわ


「どうだった?」


「『鑑定』のレベルが上がってた」


「おめでとう」


「おう。彩、ちょっと『鑑定』してみていいか?」


「どうぞ」


『 剣波 彩  剣士 Lv.1

 【スキル】

 弱点突き  使用MP 10

 相手の弱点が表示される、

 突き技を放った時、急所の付近を狙うと急所に軌道が向く 


 身体強化  使用MP 毎秒1~10

 PW、DFを使用MPに比例して強化する      

                            』


「すげぇ、スキルの詳細まで表示されるわ」


「へー、スゲェじゃん。」


「私も『鑑定』欲しかったかも。」


「いいスキル持ってる奴が何言ってんだよ!」


 俺らはこの後なぜスキルのレベルが上がったかを考えて、そのまま三人で仲良く寝落ちしてしまった。

 


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