第2話 密談

「やっぱ俺のステータスが一番低いのか、、」


 俺はショウと夜の庭園を歩きながら話をしている、

 ショウの手元には俺のステータスプレートがあった。


「ま、まぁ、そうだけどなぁ、落ち込むなよ。お前のスキル誰とも被ってなかったぞ、鑑定ってなんか便利そうじゃん。」


「確かに便利だけど、、、」


 俺のスキルである『鑑定』はMPなど一切使用せず、情報を見たい相手に向かって、頭の中で「鑑定」と思うだけで相手の情報を知れるのは便利だ。


 しかし、ステータスプレートに書かれていた情報ぐらいしか見れないので、あまり有用性は感じなかった。


「それより、『交渉者』ってなんだよ。俺は魔王に交渉でもしたらいいのか?」


「そんなことできるのか?」


「無理だな。」


 そうして二人である程度歩いていると、


「そうか、では次の段階へ行こうか。」


「はい、承知しました。」


 そこでは王様とその家臣が話をしていた。


 俺はショウと一緒に隠れる。別にそのままでもよかったのかもしれないが、バレてはいけないと本能が言っていた。


「(おい、どうしたんだよ。)」


「(なんか、バレたらいけない気がした。)」


「(とりあえず、どうする?)」


「(少し聞いておこうか)」


 俺らは王様のほうに聞き耳を立てる。


 ・・・・・・・


「では、25人分の『支配の腕輪』は用意できているのだな。」


 悪い顔をして王様が言った


「はい、これで勇者どもはあなた様のいいなりです。」


「では、あと一か月で私はこの世界で最強の王になれるのだな。」


「はっ、まことにおめでとうございます。」


「まぁ、誰かに聞かれたら白紙に戻ることになるのでな、くれぐれも内密にな。」


 そういうと王と家臣は戻っていった。



 マジかよ。


 25と聞いたときに少しは察していたが、そのような計画があったとは。


 タイムリミットは最大であと一か月か。


「(おい、アオ、どうする?)」


「(とりあえず、屋敷へ戻ろう。でも屋敷の中では監視されている気がするから、この話はみんなにはできない。)」


「(とりあえず、俺らだけで考えよう。)」

 そういってコソコソと二人で屋敷へ戻っていった。


 ――――――――――――


 俺は目が覚めたと同時に慣れない天井に違和感を覚えたが、俺らは転移したのだと思い出し、昨夜の思考を続ける。


 幸い、今日から五日間は何もないらしく、何かするなら、この間だ。


 とりあえず、みんなが町に出たいと言っていたので一緒に行くことにした。


 ついでに、監視の目が緩んだらそっとクラスメイトに教えよう。


 ―――――――――――――


「おぉ、きれいな街だなぁ。」


 彩がそんなことを言っていたが、俺は何か違和感を覚えた。


 俺らは何組かに分かれ馬車で街をめぐっていた、俺と彩、ショウとあと2,3人が同じ組で観光をしていた。


 昨日のことは王も気づいていないらしい、やけに多くの衛兵がいるわけでもない。ただ、一人の衛兵が俺らを守るためだけに同乗していた。

 

 俺らが西の通りに来た時、違和感の理由が分かった。


 俺らがそこを観光しているとき、西の路地から貧困に瀕していそうな女の子が出てきた、

 

 そこまでは、まだあまりおかしく感じなかったが、その子に対して街を歩いていた小太りの貴族らしい人がむちでたたきながら声を発する


「おい!なぜおまえのような汚いの奴が美しい貴族街に出てきているのだ!奴隷にされたいのか?」


 そうか、そういうことか。俺はこの世界について少し知ることができた。


 この世界には奴隷制度があり、この国は貧困層と富裕層の差が大きく、富裕層はずっとぬくぬくと生活して、

 貧困層はずっと搾取され続け、一生奴隷のように働いているのだろう。そしてこの国は富裕層と貧困層の居住区を分けているのだと、

 しかも、貧民区のほうは隠して、いい部分だけを見せようとしているのだろうと。


 多分俺たちもそのために呼び出された、ただ国王の権威を示すためだけに、ただ支配され働かさせるために、、、


「おい!何をやっている!」

 俺がこの世界について知ったと同時に横にいた彩がその貴族に近づいていた。


 俺は急いでその貴族に『鑑定』をする。


 結果としてはステータスは彩に及ぶとこでなく、今は大丈夫だろう。


 まぁ、あとからが面倒くさそうだけど。


「この私にその口の利き方は何なんだ!私を何者と心得る!」


「知らない!だけど、こんなことはするな!」


「うるさい、もうやってしまえ。」


 貴族が付き添いの衛兵に指示をする、すると剣を抜いた衛兵が彩に近付く、


 彩もこんなことは初めてなので、足が震えてそこから一歩も動けていない。


「おい!やめろ!」


 横にいたショウが飛び出す、顔は怒りに侵食されており、その手にはなぜか剣が握られていた。


 ショウのいた方向に目線を戻すと、俺らの衛兵の一人の剣がなくさやだけになっていた。


「お、お前何者だ!」


 ガタイのいいショウに貴族も怯えたのかその声は震えていた。


 ショウは尋常じゃない雰囲気を纏っていた。


「うるせぇ!」


 ショウはそういって剣を振り上げる。


 俺は焦って止めるために馬車から飛びだした。


「やめとけ、ショウ。」


「おっ、おう」


「彩も大丈夫か?とりあえず戻るぞ、ショウも落ち着け。」


 そういって俺は二人を連れ、馬車へ戻る。


―――――――


 あの後の馬車の雰囲気は気まずい


 その中で彩がひらめいたように言った。


「そうだ!私たちが魔王を倒したら、差別とかなくしてくださいって王様に頼もうよ。」


「あ、あぁ、そうしようか」


 俺とショウは小さくうなずいた。

 まずはこいつに伝えなきゃなと、二人で同時に思った。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る