第2話 本日の破壊活動

 俺の名前はダイチだ。勇者として覚醒した者だ。俺の活動は異世界の神の企みを潰す事にある。

 日本では少子高齢化が進み、若い人たちは貴重であるのに、異世界の神は若い人たちを転生や転移させようとしている。

 

 そんな事を許す訳には行かない! 俺は今日も異世界の神の企みを潰す為にとある路地で待ち伏せをしていた。俺の手には吉祥天女きっしょうてんにょ様から授かった愛刀である聖なる木刀【性乱剣せいらんけん】がある。

 この聖なる木刀は次元を断ち切る力があり、それにより異世界の神の力をも断ち切るのだ。


 あ、あの子たちだな。俺は路地に入ってきた大人しそうなカップルとその周りを取り囲む少しヤンチャそうな少年三人を認識した。


 今回、この路地であの三人の少年が、大人しそうなカップルの女の子を彼氏である少年の目の前で乱暴しようとした時に異世界の神が転移の魔法陣を発動させて全員を転移させようと企んでいるのだ。

 俺は事前にその事を察知したのでここで待ち伏せしているのである。


 まだだ! まだ少年たち三人は女の子の制服の上を脱がしてない! 俺はその時が来るのを静かに待つ。

 ここで誤解の無いように言っておこう。俺は女の子のおっぱいをみたい為に待っている訳では、断じて無いっ!!

 転移の魔法陣が発動した瞬間に壊すのが、異世界の神へ一番のダメージになる為に待っているのだ。そこは誤解しないで欲しい。俺は勇者だからな。


 そして、女の子の制服が脱がされ、ブラジャーがはぎ取られる寸前に転移の魔法陣が発動しようとした。

 クソッ! 馬鹿な異世界の神めっ!! タイミングを間違えやがってっ!!


 仕方なく俺は手にした愛刀で転移の魔法陣ごとアスファルトの地面を斬った。その際に動きが遅かったブラジャーを取ろうとしていた少年たちの手を少し斬ってしまったのはご愛嬌だ。

 俺の耳に異世界の神の叫びが聞こえた。


『グワーッ、ま、またしても、失敗か…… グッ、暫くは無理か……』


 フッ、暫くどころかことごとく潰してやるからな。そして、俺は俺に斬られた手を抑えて呻いている少年たちに向かって行った。


「いいか、君たち。女性とは合意がなければそういう行為をしてはいけないんだ。これに懲りたら二度と悪さをしないようにするんだな。今すぐ落ちてる手を持って病院に駆け込めば繋ぐぐらいは出来るだろう、そっちの君は早く逃げたまえ! 巻き込まれたくないだろう? さあ、君も早く服を整えて彼氏と一緒にこの場を去るんだ」


 俺がそう言うと彼氏だった少年は少女をったらかしにして逃げ出した。そして、少女は……


「あの、助けていただいて有難うございました。このあとお時間はありますか? 是非ともお礼をしたいので」


 と、言って制服も着ずに俺に言う。俺は心の中の葛藤かっとうと戦いながらも涙をのんで少女の提案を断る。


「済まないがこのあとも行くべき場所があってね。また機会があればお願いするよ。それでは!」


 と言って俺もその場を去った。先程とは違う異世界の神の企みがこのあと起こる為にその場所に向かわなければならないのだ。

 俺は心に誓う。次の神にはもっと痛手を味わってもらうと!!


 次は大型ダンプカーの破壊だ。ちょうど間に合ってダンプカーは俺が思ったとおりの場所に停車していた。俺は愛刀を構えてダンプカーの前で素早く振り下ろした。

 はじめの頃は力任せに殴ってグチャグチャに壊す事しか出来なかったが、今では真正面から振り下ろすだけで両断出来るようになったのだ。

 更に両断した片側を細かくなるまで愛刀で潰していく。

 何故こんな事をするのかって? このダンプカーには異世界の神の精神が入っているからだよ。

 このダンプカーを両断する事により、異世界の神も両断される。さらに、片側を細かくする事によって治りを遅くさせるのだ。相手も神の端くれではあるから、両断したり細かくしても滅する事は出来ないが、私の愛刀により次元も一緒に断つから普通に治癒魔法で一瞬で回復という訳にはいかないのだ。


 ほら、異世界の神の声が聞こえるだろう?


『グギャーッ、な、何故、治癒魔法が効かぬ!!』


 フッ、これでこの神も力を取り戻すまでは何も出来まい。


 こうして俺は日々、異世界の神の企みを日本にいるただ一人の勇者として潰しているのだ。


 くそ、あの女の子のおっぱいを見たかったな……


 

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