タカシ、喰われる。

凄まじい魔力の放出とともに狂った様に暴れ始めた。

『『ウォォォ!!!ゲェヒヒヒ!!ヒャオオオオオ!』』

バガァァァァァァァァ!!

双頭より奇声とともに金色の炎が放たれ、辺りを破壊して回っている。

今度は一体なんなんだ!?狂ってんのかあの成金は!?

アロガントはさらに両手両足を振り回して暴れ回る。

ドゴォォォォォン!バガァーン!!

『本当にやりたい放題ね!でも、このままだとこの辺一体も吹っ飛ばされるわね…』

大振りではあるが威力と速度は今までの比ではない程である事は目に見えてわかる。

先程まで余裕を持っていたノワルも冷汗を流すほどだ。

アロガントは何をしたかはわからないが、現実に四肢にとてつもない魔力が込められている上に凄まじい速度を持ってして壊滅的な被害を生み出している。


『…まともに当たったら私達でも負けかねない。…逃げるか潜むかになるけど。』

話しながらも破壊活動を続けるアロガントから視線を逸らさずにいるルキナ。

周囲の金色空間が歪み、所によってはヒビも入るほど不安定になっている。


『普通に考えれば、あそこまで無茶な暴れ方をすれば勝手に自滅して死ぬだろうけど…』

『"次の領域"に上がるような"奇跡"がおこっても不思議ではないのがこの世界よ。』


『…1人では無理。…でも2人なら何とかなるかも。…本気でいこう。…タカシは下がってた方が良い。』


『そうね。タカシは一般人が入ってきてしまう可能性があるから、それをなるべくここから遠ざけて。もうこの空間は決闘空間じゃ無い。だから侵入への制限がない。』


『わかった。確かに俺が出ていっても足手纏いになりそうだな。この辺は世話になった人も住んでる。』

2人に任せて裏方に徹するべきだろう。

というか、ここもそろそろ危ない状況になってきているので離れなければ危険だった。

そんな事をタカシが考えていると、アロガントと目が合ってしまった事に気付いた。


"ミツケタァァァァ!!!"


タカシが何かを言うよりも先に触手を超速で伸ばして一瞬のうちに絡め取ってしまった。


『離れ…なぁ!?!?』

タカシを発見し、一瞬で彼を捕らえ取り込んでしまった。



『…な!?…タカシが喰われた!?!?』

『あの一瞬で!?悠長に話なんかしてる場合じゃなかったわね!全力でいくわよ。』

彼との繋がりが消えてしまったわけではない事がノワルとルキナには、分かっていた。

"奴隷を縛る主人の鎖"というものはどちらかの死亡する以外に切れることはない。


だから彼女達はすぐに切り替えてアロガントを無力化する為に力を解放した。

『"闇刀・黒鉄"』

ノワルの手に黒い打刀が現れ彼女の手に収まる。

鞘のないシンプルな刀であるが、その刀身からは黒い魔力がノワルの戦意に呼応して力強く渦巻いている。

『久々にコレの出番が来たわね。暴れてるだけみたいだけど…どの程度まで通用するかね。

奴隷とはいえ仲間の1人が取り込まれたら助けないと。』

そして正眼の構えを取りながら魔力を練り高めていく。

『…"竜気戦法・竜鱗纏い"』

ルキナの手足が白い鱗に覆われ闘気が迸る。

『…やるしかない。…先に行く!!』

ドン!!!

ルキナは強化された両足を使い一気にアロガントとの距離を詰めにいく。

しかし

『ウゴガァァァァ!!!!』

片方の首が瞬時に反応し、その剛腕でもって彼女の拳を迎撃した。


ドン!!!!

『…やっぱり強い!』


ぶつかり合う拳、拮抗しているが僅かにルキナの上をいくほどの威力を持っている事に驚愕する。

反応速度も凄まじいが、何よりも脅威的な腕力と魔力による過剰な強化により血が吹き出しているがそれをものともせず、がむしゃらに拳を叩きつけてくる。






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