気に入らないので覚醒する
アロガントは苛立っていた。
この国の上級貴族かつあらゆる種族の中でも最上位の種族の1角を占める竜種であり、才能に溢れていたアロガント。
今まではその才能だけで、気に入らない相手を一方的に叩き潰してきたのだ。
全く気持ち良く無いのだ。
力でも速度でも耐久力でも自分が確実に勝っているのにも関わらず、蹂躙する事が出来ない。
(なぜだ!?)
自分の攻撃がほとんど受け流されるか回避されてしまう。
そればかりか、その勢いを利用され、こちらは何度もダメージを受けてしまっていた。
(なぜ、勝負になっているんだ!?
すでに、俺が一方的に叩きのめし、生まれてきた事を後悔させ、無様に命乞いをさせていなければおかしいだろう!?)
『ゴミ虫が!!調子に乗るな!!』
アロガントの拳がタカシの顔にに当たる。
どご!!
『ぐはぁ!?く!!!』
首と体を振ることで、上手く威力を殺すスリッピングアウェーを駆使して凌がれてしまう。
(まただ!力が逃がされている様な嫌な感触だ!
)
すると…
"なにか気に入らない事でもありましたか??"
とアロガントの脳内に声が響いてきた。
(この声は…貴様今まで何を。)
"ワタシの事を気にしていてもよろしいのですかな??"
そうなのだ。声の言う通り状況は彼にとって不本意なものになっている。
(おい!どうにかしろ!"何でもいい"。手を抜くなよ!!絶対に奴を叩きつぶせるようにしろ!)
溜まりに溜まったフラストレーションから彼は声の主に命令した。
"ほほう?本当によろしいのですね?
ふふふ。では、全身全霊で行ってもらいますよ"
ズズズズ!!
ドックン!!!
『が!!?グゥゥゥゥ!?』
(き、キサマ!?何が起こっている!?グゥゥゥゥ)
アロガントの全身の血管が一斉に浮き立ち、凶々しいピンク色の魔力がその血管の内部から透けて見える。
『オガァァァァァァァァ!!!!』
カッ!!!
凄まじい雄叫びを上げながら爆発的な光と魔力を放つ。
タカシはアロガントの異変に気がつくも、咄嗟に自分の身を守ることしかできなかった。
『な!?!?』
その衝撃で辺り一体を決闘空間が無理矢理に拡張させられ、タカシも吹き飛んだ。
『クッソ!?急に様子がおかしくなったと思ったら空間ごと吹っ飛ばすとか!?』
タカシが何とか受け身をとり、アロガントの方を見ると砂煙が巻き上がり派手なピンクと薄い金の魔力が混ざりあい、アロガントを包み込んでいた。
『ヨコセ!ワガゲボクドモヨ!』
魔力の包みの中アロガントであろう者から発せられた言葉によって、周囲にいた彼の部下から金色のナニカが吹き出し、アロガントの方に流れ込んでいった。
一目で良くないことが起きていると確信したタカシだったが受け身を取ったとはいえ、すぐに動けない。
そして
巻き上がった砂煙の中から巨大な怪物が現れた
。
見た目は双頭の竜である。
二対の羽は竜というより悪魔の羽に近いかもしれない。
鈍い金色をした外殻にくすんだ赤茶色のたるんだ腹、不気味なピンク色モノが薄く見える血管の浮き出た筋肉質な長い四肢。
手足にはそれぞれ鋭い爪が生えていた。
2つの長い首の先には、鼻から上を人で下を竜という奇怪な顔がついていた。
怒りに燃える形相と悲しみに歪む形相の醜く恐ろしいモノだった。
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