合流その3
噂話に聞き耳を立てていると
『あら、2人とももう買い物は良いの?』
こちらを見つけて来たのかノワルが手を振りながら席に近づいてきた。
『…"買い物は"大丈夫。…必要な物は買えた。…そっちは?』
ルキナの少し含みのある答えをしている。
『こっちも大丈夫よ。買い物は?って何かあったの?』
席に座り、飲み物を頼んだノワルはルキナの答えを聞いて、眉を顰めタカシに目を向けた。
『変な奴らに襲われたんだよ。』
『襲われた??2人一緒に?』
『いや、必要な物を買った後、ルキナはもう少し店を見ていくって言って別れたんだよ。そしたら、別々の場所で2人とも襲撃にあったんだよ。』
『へえ…それで、どんな奴らに襲われたの?』
『…変な男にタカシは攫われそうになったらしい。…私は武器もった数人の男達に襲われた。…返り討ちにしたけど。』
襲撃に、ついて聞き終えるとノワルはふむふむとうなづいた。
『なるほどねえ…実は、私も内見が終わった後引ったくりの現行犯を見て、犯人を捕まえたんだよ。』
どうやら、俺たち2人とは少し違うが、ノワルも何やら事件の関係者になっているようだった。
『…ノワルは襲われた訳ではない?』
『そうね。目の前で引ったくりをした奴がいて、突っ込んできたから投げたの。んで、叩きつけて意識飛ばしたってところかしら。』
『え…投げた??』
流石はノワル。突っ込んで来た暴漢を文字通り投げ落としたらしい。
『ふん縛って警邏に引き渡したのだけど、懐からよく分からないエンブレムが出てきたの。』
『エンブレム?そりゃまたどんな?』
『なんか、金色の翼の竜みたいな?投げた衝撃で、壊れてしまったみたいまけどね。』
紙に描いた絵を見せながらノワルが言ってきま。
金のエンブレム??自分自身も見覚えがあるその絵を見ながら、俺の中で、ある者達が浮かんだ。
この国で、その色を使えるのは…まさかな。
『…私も襲ってきた奴のリーダーの懐にそんな感じのエンブレムがあったのを見た。』
『おいおい…あ…』
自分も撃退した男の事を思い出していると、テーブルに突然男があらわれた。
『おい。先ほどの話、詳しく聞かせろ。』
銀髪に金のメッシュが入った男が突然会話に入ってきた。
『いきなり、会話に入ってきて名乗りもせずに要件だけ突きつけて来るのは王族としてどうなの?』
ノワルが男睨みながら言う王族というワードに驚愕した。
『ちょ!?お、王族!?!?』
そんなタカシの様子を見て男は顔を顰めた。
『貴様…我が国の臣民でありながら、この俺を知らないだと…いや、貴様は…ふむ。なるほどな。』
『あ、あの…何か粗相をしてしまったでしょうか…』
恐る恐るタカシが聞くと、男は立ち上がりこちらを見据えて
『俺はゼース。ゼース・アルタイル・ピテル。この国の王になる者だ。ギルドマスターもやっている。』
凄まじい魔力を発しながら、堂々と名乗り上げたゼース。
お、王家筆頭??
『お、王族???な、なんでそんな人が??』
凄まじい存在感を誇るため、自分とは格が違う存在であると本能的に察知した。
元いた国の王族はとにかくろくでなしな上に怖い存在であった。
そんな様子を尻目にノワルは胡散臭いモノを見る様な目でゼースを睨む。
『それで?何か用事?』
ものすごい失礼な態度を取るノワルにタカシは戦々恐々としていた。
ちなみにルキナは我関せずといった様子でジュースを飲んでいる。
『なに。貴様らは冒険者で、このギルドから依頼を受ける立場だろう?そして俺はギルドマスターだ。つまりは依頼があるんだよ。』
腕を組みながら、ゼースは懐から依頼書を取り出した。
『最近起こってる暴力事件の調査だ。報酬もそれなり出してやる。』
その依頼書を見ながらノワルはゼースに聞く。
『ほう?では、それは私たちに指名依頼ってやつかな?』
『その通りだ…と言いたい所だが、ギルドに所属する全員に依頼書をだす。』
『…早い者勝ち?』
話は聞いていたのか、ルキナはジュースを飲み干した後に会話に参加してきた。
『調査の結果次第だ。事件の解決した後に一律で払った後に貢献度に応じてボーナスをつける。』
『つまり、出来高制みたいなものですかね。』
インセンティブともいう。
『そうなるな。まあ、さっきの話が聞こえたが、お前たちの場合、既に犯人グループに遭遇してるかもしれんな。』
『確かに変な奴に遭遇したわね。依頼料とボーナスがあるなら、ちょっと真剣にやってみようかしらね。なにより、この街にお世話になってるし。』
依頼について聞いたノワルは真剣な顔をして頷いた。
『…私も賛成。あんな変な奴らは見てて不愉快。…それに金の竜っていうのは少し気になる。』
賛成しながら何かを考えているルキナ。
『2人が賛成なら俺もやります。まあ、奴隷の立場なんで、2人がやると言った時点でやるんですがね…』
(あの変質者、なんかの組織に属してるんだろうな。俺を襲った奴は拉致しようとしてたしな。)
『家に行きましょう。クソ共を探すのは後にしておきましょう。』
ノワルはパンパンと手をたたきながら立ち上がり、ルキナと俺もそれに従い準備をする。
すると
『そうか。他の冒険者にも依頼書は出してある。ではな。』
俺たちの参加表明を聞き満足した様にうなづくとゼースは去っていった。
『…この事だけを言うためにわざわざここに来たの?』
ギルドを後にしたタカシ達は先ほどのことを思い出したように
ルキナは、ゼースの言動を怪しんでいたが、ノワルは、溜息を吐きながら手を振る。
『絶対それだけじゃないでしょうね。とはいっても聞いても無駄だし、放っておきましょう。』
『…そうだね。…考えても無駄だね。』
『只者じゃ無い感じがするしな…』
タカシはその雰囲気を思い出しながら身震いしていた。
『まあ、恐らくだけどアレ、世界最強クラスよ?』
『…少なくともこの辺一帯では敵なしな気がする。』
2人が真面目な顔でゼースの去っていった方を見ながら呟く。
『は……???もしかして、あのゴールデンゴーレムよりも強いのか??』
タカシは過去に戦った金ピカの怪物を思い出していた。
『強いと思うわ。相性は最悪でしょうけど、そそんな事全く関係ないくらいの"差"がある。』
目が点になった。全く想像出来ない領域だった。
『…気にしたらダメっていうか無駄だと思う。…だから、ノワルが見てきた家にすぐ行こう。』
『そうね。行きましょうか。結構大きいし広いから期待して。』
依頼の事もあるが、当初の予定通り新居となる場所に心を踊らせながら3人向かうのだった。
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