悪漢、撃沈

『な!?ぐがぁ!?』


ルキナは目にも止まらぬ速さで殴り倒し、男達に向き直り、男たちの構える武器を指差し淡々と言った。


『…それ、武器。…それに大勢』

『な、なに言ってやがる!?!?』

『…返り討ちにして、ボコっても正当防衛。』


ナンパされたから、相手を気絶するまで殴ったとなれば、暴行罪になってしまう。

しかし、自分の身を守るために反撃した結果、相手を殴り倒してしまうのは、罪にならないのだ。


『はぁ!?あが!?』


パキ!!


(…なに??。…何か砕けた様な?)

リーダー格らしき男の腹部に拳を打ち込むと、何かを砕く様な感触があった。


ルキナは武器を構えた男やその周りを、見回して男達が浮き足だっている事を素早く確認し、その隙を逃さず次々と殴り倒していった。


追ってきた男たちを殴り倒したルキナは、リーダーの懐から金のエンブレムが転がり落ちたのを見つけた。

砕けてしまって原型がわからないが、竜のようなものが描かれているのがかろうじて分かった。

『…これかな?…なにか砕いた様な感触があったけど。…金の竜?』


『…金の竜…まさかね。…いや、ありえるのかな。』

1箇所に集めた悪漢達を縛って、近くにあった騎士団の警邏隊の詰め所に運んで言った。

『…ちょっと、体を汚しておこう。』

土埃を服につけて、顔を少し汚した。

"襲われた少女"の完成である。


『うお!?こ、これは一体!?』

(こ、こんな華奢な子がこの人数の男を!?)

気絶した男達を引きずってきた少女を見て目を丸くしている警邏隊員に彼らの持つ武器を指差して、説明した。


『…襲われたから、返り討ちにした。…凶器を持っていたので本気を出さざるを得なかった。』


『た、たしかに武器を持っているし、君も襲われた形跡がありますね。分かりました。こちらで彼らを預かります。』


(な、なるほど。人は見かけによらないんだな…返り討ちにしてしまうなんて、大した子だ。)

悪漢達を返り討ちにしたルキナを見て警邏隊員は関心しながら、男達の身柄を預かった。


『1人で大丈夫ですか?』


『…ありがとうございます。…大丈夫です。

…ギルドに向かえば仲間がいますから。』


男達を預けて頭を下げたルキナは、内心少し冷や汗をかいていた。

(…良かった。…集団で来なかったら、私が警邏隊のお世話になっていたかも。)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る