第8話 買い物に行ったら

2日はかかるし、旬のトマトは強いモンスターがあつまってくるくらい美味いから、準備が必要だ。

図鑑で道中に薬草の群生地があるからそこで回復薬の調合をしなきゃな。

『薬草の群生地があるからそちらを通ろう。』

買うより安くて良い物ができるのでそう提案したところ、

『買えば良いのでは?』とノワルが言うので

『調合は可能だぞ。スキルもあるし、修行時代に何回もやった。』


スキル 調合は回復薬だけでなく、様々な薬品を作り出せる。

『資料室で確認してるから大丈夫だ。野宿の用意はしておくけど、いつ出発するんだ?』

『2日後の朝からだな。』


2日後の朝なら急いで準備しないとダメだな。

『野宿用の道具を買うぞ。』

とノワルに連れられ街に出た。

TANAKAショップにすれば基本的に揃うので向かう事になった。

『私が結界を張れるからとりあえずは布類だ』

夜、特に寝てる間が最も危険である。質の悪い同業者や夜行性のモンスターに襲われる可能性があるからだ

結界があればある程度は大丈夫なので、布団代わりの布を買った。

『調理器具や調合道具は空間庫に入れて行けば良いから買うのと、野宿セットも買っておこう』と俺はノワルに言い

調合道具や調理器具を買った。

野宿セットが売っているのは冒険者が多いこの街ならではだ。

買い物を済ませて、ギルドに戻る途中、

『タカシさんですか?』

と聞き覚えのある声に振り向くと、赤銅色の髪の少年がいた。

『あ、俺が修行中に鍛冶屋に来ていた…』

『お久しぶりです。ヘクスともうします。実は、王国騎士団戦士隊に入っています。』


王国騎士団!?た、たしかに只者では無いと思っていたけど、この若さでか…と驚愕するタカシだった。

『ヘクスさんですか…そういえば俺は名札が付いていましたね。』

俺たち奴隷には修行中であっても胸の所に名札を付けられていた。

修行中にヘクスとは何度も顔を合わせていた。色々な武器を持っていて試し切りを見せてもらったが、どの武器も上手かった。

『敬語はいらないです。俺の口調はこのままですけど、タカシさんは砕けて結構です。』

『それは助かる。』

と話していると、ノワルが

『はじめまして。私はノワル。ところでゼースの奴はどうしてる?相変わらずか?』

ゼース?だれだ?と聞きなれない名前だと思っていると

『初めまして。ヘクスです。ええ…相変わらずですよ。俺の義父です。知り合い…いやまさか…あい-』

『違う。私と奴はただの顔見知りだ。ただ、一緒に戦った事があるってだけだ。』

ヘクスの言葉を遮りつつ本気で嫌な顔をしながら答えたノワル

『な、なるほど…てっきり愛人の1人かと…良かった…』

と小さな声で周りを見ながら言ったヘクスになんだ一体と見ていると

『気をつけろ…ヘーラの奴に聞かれたらどうする。』と冷汗をかきながら小声でノワルが言う

『そ、そうですねすみません。』

青い顔をしながらキョロキョロと周りを見回すヘクス

ヘーラ??この2人がこんなにビビる人って一体どんな恐ろしい存在なんだ…と未だ見ぬ人物に怯えていた。

『ま、まあ大丈夫だと思います。多分。あ、仕事の途中でした。そちらもどこかに行くんですよね』

『おうよ。フライングトマト収穫だ。旬だからね。』

あのトマトは美味いんだ…と修行中に食った記憶を思い出しながら答えた。

『この辺でいうと、テーバイですか…まあ、ノワルさんがいるなら問題はないでしょう。』

『問題ない。ギルドからも聞いているから大丈夫だよ。』

ノワルが大した事がない様に言っているが、正直行きたくないと及び腰になる。

トマトは食べたいし、不意打ちに注意すれば逃げる事も避ける事も出来るんだからいける!と己に言い聞かせておいた。

『そうですか。なら心配いらないですね。タカシ。帰ってきたら改めて話がしたいです。』

とこちらを見ながらヘクスが笑った。

『え…な、なにが目的だ…!!』と身構えながから言うと

『そんな警戒しなくても良いですよ。同年代の友人はなかなかいないですから…親睦を深めたくてね。』

とヘクスは顔を赤らめながら言った。

一瞬ドキッとしたが、コイツは男だ。俺はそう言う趣味を否定する気は無いが、俺は女が好きだ。

『そ、そうか。ならその時に改めてよろしくだな。』

そして、ヘクスと別れて街から出発した。

しばらく歩いていると、山岳地帯が見えてきた。

ここの比較的低い地域にトマトの木がある。

山林に自生するトマトの木からトマト達が飛び立っている。


山林の手前に来た時には日が沈んできていたので野宿をする事になった。

『近くに見えるけど、ここから先がまた長いし、この辺りで野宿しよう。』

夜に進むのは危険だ。周りが暗く視野が悪い上に、夜行性のモンスターも徘徊している。

それにこの暗い中で灯をつけると、居場所を自分で知らせる事になる。 

『私の結界をはれば外に光を漏らさずに火を起こせる。』

とドーム上に結界を張り中で過ごす事にした。

『分かっていると思うが、手を出してきたらどうなるか…』

とニヤニヤしながら言うノワルに

『分かってるわ!』

俺もそこまで命知らずじゃない。

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