第3話みゆとフウの関係
「まさか。違うよ。私たち、そんなんじゃない。ただの幼馴染なんだから」
「いつも、そういうよね。でも、それって、ほんとなの? 木野君と別の学校に行って、木野君が素敵な彼女を見つけちゃっても、みゆ、ほんとに平気なの?」
「それは……」
みゆは、答えられなかった。そこまでは、あんまり考えたことはなかった。なんとなく、フウとは、いつまでも、このままでいられるような気がしていた。
「みゆ、今のうち、しっかりキープしておかないと、とられちゃうよ。木野くん、けっこう人気あるんだから。いつも何考えているのかわからないくらい静かだけど、けっこうやさしいし、生徒会もやったし、勉強もできるし、第一、美形だし……後輩たちは、すれ違うだけできゃあきゃあ言っているよ。知ってるんでしょ?」
直美はネクタイを結び終わった。
「みんな、みゆがいるからと思って諦めているけど、内心は、ねらっている子もけっこう多いと思うよ」
みゆは、ネクタイを結びながら、胸をどきどきさせていた。あらためて、フウのことをそんなふうに言われると、うれしい半面、悲しい気分になる。
小学校の集団登下校に始まって、中学三年生の今に至るまで、ほぼ毎日、一緒に登下校していたが、それは、昔の約束を忠実に守るというよりは、ただの長年の習慣で、その習慣を破る理由が特になかったというだけだった。
毎日、放課後、早く終わった方が図書館や校門で遅くなる方を待っていたが、そうするものと思っていたので、苦痛も楽しみも特に感じなかった。
みゆにとって、フウといるのが楽しかったことは間違いない。フウはどちらかというと女性的な感性を持っているのだろう、女の子の友だちより気が合った。フウを誘うと喜ぶので、半ば義務的な感じで、休みの日には買い物とか、映画とか、自分の行きたいところへつきあわせて、ひっぱりまわしていた。
フウとの関係をどう呼んだらいいのだろう。友だち以上のなにか……でも、恋人じゃなかった。キスするなんて、考えたこともなかった。
二人は、中学では公認のカップルということになっているようだった。そんなんじゃないのに、と内心思いつつ、まあ、そう思うんならそう思わせておけばいいや、という気分……のはずだった。そう、高校入試の問題さえなければ・・・・・・。
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