第6話 尋問

「愛だとか幸せだとか語る貴方はきっと後悔に苛まれて居るのでしょう」

違う。そんな事が言いたかったんじゃない。


「正義を盾にして自らが哀しい存在であることを隠したいのでしょう」

違う。空っぽな器なんかじゃない。


「どうして?地獄へと堕ちるのを恐いと言ったのは貴方でしょう」

違う。唯、暗闇が恐ろしかっただけだ。


「神になりたいと願ったときに、もう空虚は出来ていたでしょう」

違う、違う。神様なんて、知らなかった。


「ならば貴方は偶像崇拝をしていたと言うのでしょうか」

違う、違う、違う!神様なんて、



けらけらと、化物が嗤う。

「もう、赦してくれ」

それは純白のヴェールを冠った異形。それは、とてもこの世の者とは思えないくらい、がらんどう。


「望み通り、貴方を神にしてあげましょう」

嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ――。


ごきゅ。


化物の純白は、紅に染まった。

「あら、汚れてしまいました」

「まあ、なんと美しいのでしょう」


けらけらと、化物は嗤った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜月 SS集 観音堂 紅葉 @cho_no_hane

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ