第82話 もしかして動く歩道か
「そのくらいお安い御用ですわ」
「いつも食って寝てばかりだからな。安くて当然だ」
「そ、それは言わないでくださいまし!」
せっかくプールを設置したのに、泳ぐことができないノエルとマイン。
エミリアが二人に泳ぎ方を教えてくれることになった。
「とりあえず二人とも、水の中に入るのですわ」
「で、でも、ここ結構深いですよ……?」
「足が届かないわよっ!」
「その心配は要りませんの……よっ!」
「「っ!?」」
バシャーンッ!!
エミリアが無理やり二人をプールに放り込んだ。
良い大人は真似しないように!
「な、何をするのよっ!? 足がつかないって言ったでしょ!? ……あれ?」
「身体が……勝手に浮いてる……?」
バシャバシャと暴れていた二人だが、いつまで経っても身体が沈んでいかないことに気づいて大人しくなった。
「あたくしが水を操って、浮くようにしてあげたんですの。これで溺れる心配はありませんわ。まずはそのまま自分なりに軽く泳いでみてくださいまし。それを見てから、泳ぎ方を修正していきますわ」
ノエルとマインのことはエミリアに任せ、俺は続いてトラップGを作成することに。
「これは……スケートリンク?」
出現したのは氷でできた床だった。
-----------
流れるプール(50)
アイスリンク(60)
トラップH(70)
-----------
「遊べる場所でもあるけど、トラップらしいトラップでもあるな」
乗ってみると、普通の靴でもそれなりに滑る。
スケートなんて人生で一回しかしたことがないが、身体能力が強化されてバランス感覚もアップしているためか、すいすい滑ることができた。
「ぷぅぷぅ!」
「お前も滑ってみるか?」
「ぷぅ!」
アンゴラージがアイスリンクに勢いよく飛び乗った。
「ぷぷぷぷぷっ!」
ツルツルツルツルツルツルッ!!
「ぷぅっ!?」
アイスリンクの上で懸命に走って、まったく前に進まないことに愕然としている。
「走るんじゃなくて、滑るんだよ。ほら、じっとしてな」
俺はアンゴラージの身体を押してやった。
ツル~~~~ッ!
「ぷぅぅぅぅぅぅぅっ!?」
自分の意思とは裏腹に、勝手に進んでいく現象に驚いている。
うーん、相変わらず可愛い生き物だな。
「このアイスリンク、坂とかに作ったら完全なトラップになるな。そして落ちていった先に魔物の大群が待ち構えているとか」
そんなことを考えつつ、最後のトラップHを作成した。
「今度は何だ?」
現れたのは道路のようだった。
ただ真っ直ぐ伸びて、長さは百メートルほど。
「いや、この道、動いているぞ? もしかして動く歩道か」
-----------
流れるプール(50)
アイスリンク(60)
エスカレーター(70)
-----------
エスカレーターといえば階段状だが、この場合は水平式のようだ。
「これを敷いておけば、ダンジョン内をもっと早く移動できるようになるかもな」
「丸夫殿、実は拙者の商会、他の都市にも店を構えたいと考えているでござるよ」
ある日、クラスメイトの勇者にして【商王】のジョブを持つ坂口金之助が、そんなことを言ってきた。
金ちゃんと呼んでいる彼は、俺たちが召喚されたバルステ王国の王都で、商売人をしているのである。
俺のダンジョンで採れた食材などを販売することで、順調に業績を伸ばしているらしい。
最近は寿司店もスタートし、大人気になっているとか。
「そうなのか。好調そうで何よりだ」
「丸夫殿のお陰でござるよ。それで実は、一つお願いがあってでござるな……」
「もっと収穫を増やしてほしいってことか?」
「それもあるでござるが……問題は、場所でござるな」
「場所?」
金ちゃんが新たにビジネスを展開しようとしているのは、王国内でこの王都に次ぐ規模を誇る都市だという。
だがそこは王都から遠く、商品をのんびり馬車で運んでいては、ここで仕入れた食材の鮮度を保てないそうだ。
「街道には盗賊なども出るでござるから、護衛も必要でござる。どうしてもコストがかかるでござるよ。……そこで、でござる」
「ダンジョンを通じて、その都市と繋げてほしいってことか」
「その通りでござる! 地下から直線距離で行けば、時間もかなり短縮できるはずでござる!」
「なるほど。そのくらい別に構わないけど」
「本当でござるか!?」
「というか、たぶんもうすぐ近くまで掘ってると思うし」
「……へ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます