第68話 出でよ、精鋭部隊
「ひ、人族が……我々を助けてくれたのか……?」
エルフのお父さんが、人間に助けられたことに驚いている。
一方、その娘と思われるエルフの女の子は、感動したように言う。
「おねえちゃん、つよい!」
一ノ瀬は相変わらず鼻血を流しながら胸を張った。
「そう。お姉ちゃんは強い(エルフ幼女に褒められたああああああああああっ!! い、今なら抱っこいける!? いけるかも!? なんなら、ほっぺにチューしてもらえるまである!?)」
不審者のような目をしている気が……エルフ幼女、逃げて!
「そ、そうだ……頭に血が上って気づかなかったが、我らも助けられたのだ……」
「一体どういうことだ……?」
「この状況は、やつら人族の仕業ではないのか……?」
先ほど助けた年配エルフたちが、今さらながらハッとしたようにそんなことを呟いている。
と、そのとき、女の子が涙目で懇願した。
「おねえちゃんっ……おねがいっ……みんなを、たすけて!」
「……任せて」
そう短く応じると、一ノ瀬は地面を蹴って猛スピードで駆け出した。
なんか急にカッコいい。
「だが明らかに魔物が多すぎるな。できればあまり見られたくはなかったが、この状況だ。そうも言ってられないだろう」
俺はすぐ目の前の地面を掘った。
「「「っ!?」」」
一瞬で地面に穴が空いて、エルフたちが目を丸くするのを余所に、さらに俺は堀り進めていく。
そして途中からもはや手で掘るような動作をせずとも、念じるだけでも掘ることができるようになっていることに気づいた。
――スキル〈念じ掘り〉を獲得しました。
「よし、ダンジョンと繋がったな。出でよ、精鋭部隊」
魔物呼び出し機能を使い、すぐ目の前に従魔たちの精鋭部隊を召喚。
「な、なんだ、この見たことのないモフモフの魔物たちは!?」
「人族っ、まさか、お前が呼び出したのかっ?」
驚くエルフたちを余所に、俺は命じる。
「この里に侵入している魔物を倒して、エルフたちを助けるんだ」
「「「にゃっ!」」」
「「「うほうほ!」」」
「「「ぶひぶひ!」」」
「「「くまくまー」」」
一斉に駆け出す精鋭たち。
「あんたたちはこの穴の奥に隠れててくれ。外よりはマシなはずだ」
そう告げてから、俺もまたその場を離れた。
魔物は一ノ瀬と俺の従魔たちが倒してくれるだろうから、俺は負傷者の救助に専念するとしよう。
◇ ◇ ◇
「くっ……数が多すぎるっ! このままではっ……」
エルフの戦士長シャルフィアは、状況の悪さに顔をしかめた。
里の中に次々と侵入してくる樹海の凶悪な魔物。
とりわけ防壁の一部が破壊された里の北側が、激戦区と化していた。
どうにかこれ以上の魔物の侵入を防ごうと、シャルフィアをはじめとする多数の戦士たちが奮闘しているが、もはや焼け石に水だ。
今にも彼らが築いた簡易のバリケードが突破されかねない。
そうなると、さらに多くの魔物が里の中へと雪崩れ込み、もはや一巻の終わりだ。
「「「ぶひぶひ!」」」
と、そのときである。
背後から聞こえてきた謎の鳴き声に、エルフの戦士たちは戦慄した。
「後ろから魔物だと!?」
「しかも見たことない魔物だ……っ!」
「こっちに向かって突進してくるぞ!?」
豚か、もしくは猪の魔物か。
全身が毛に覆われているため、判別は付かないが、凄まじい勢いでこちらに迫ってきている。
このままでは前後から魔物に挟み撃ちされてしまう。
絶望するエルフの戦士たちだったが、その直後、信じられない光景を目にすることとなった。
そのモフモフの魔物たちが大きく跳躍し、彼らが築いた簡易バリケードを飛び越えていったのだ。
「「「は?」」」
唖然とするエルフたちの頭上を悠々と巨体が越えていくと、地面に着地。
さらに勢いそのままに、里に侵入しようとしていた樹海の魔物の群れへと突っ込んでいく。
「「「ぶひぶひぶひいいいいいいいいいいいいいいっ!!」」」
ドオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
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