第55話 生き物でござるよ!?

 ダンジョンの一画が芝生に変わってしまった。

 どうやらここは畜産フィールドらしい。


「え? 家畜を生産できる?」


 これまで畑で勝手に作物が育ち、養殖場で勝手に魚が発生していたように、ここでは放っておくと勝手に家畜が現れるという。


「もはや何でもありだな……。いや、魔物がどこからともなく出現するくらいだ。家畜が自然発生するのに今さら驚く必要もないか」


 だがこのままだと、そのうち勝手に人間が生えてくるようなフィールドができそうで怖いな……さ、さすがにそれはないか。


 しばらく放っておくと、本当にフィールド上に牛や鶏が現れるようになってしまった。


「すごいわ。お肉食べ放題じゃん」

「やった~っ! リッカお肉大好き~っ!」

「料理に使っていいんですか? はい、捌くくらいできると思います」


 畜産場で獲れた家畜を、子供たちが手際よく捌いて肉へと変えていく。

 魚を捌くのならすでに何度もやっているが、家畜となるとまた勝手も違うだろうに……さすが異世界の子供たちはタフだな。


「せっかくだから、今日はこの肉でバーベキューにしよう」

「「「はーい!」」」


 そうして子供たちが切り分けてくれた肉を、鉄板の上で焼いて口にする。

 まずは牛肉からだ。


「「「うまああああああああああああああああああああああっ!!」」」


 食べた瞬間、口の中いっぱいに広がる肉の旨味。

 めちゃくちゃ柔らかく、あっという間に溶けてなくなってしまった。


「はわわっ……牛肉ってこんなに美味しいんですねっ……」

「美味し過ぎてヤバい」

「こっちの豚や鶏も美味しいよ!」


 夢中になって食べている子供たち。

 頑張って準備してくれたから、たくさん食べてもらいたい。


「魔界で食べてた肉より、断然美味しいんだけどっ……もぐもぐもぐっ……」

「本当ですわっ! はぐはぐはぐっ……」


 アズとエミリアも必死に肉を頬張っている。

 こいつらは何の準備もしてなくて、ただ食っているだけだ。


「あっ、その肉はあたくしが狙っていたやつですのっ!」

「知らないわよ! 早い者勝ちでしょ!」

「だったらこの辺、全部もらっていきますの!」

「ちょっと、まだ焼けてないでしょうが!」


 しかも醜い争いをしてるし……子供たちは仲良く食べているというのに。


「……あんな大人にはならないようにしたいです」

「あはは、そうだね」

「恥ずかしくないのかしら?」


 ぜひ反面教師にしてほしいと思う。


 と、そんな感じで肉を食べまくっていると。


「なんか良い匂いがすると思ったら、バーベキューでござるか!」

「おお、金ちゃん。良いとこに来たな」


 坂口金之助だ。

 秘書のメレンさんも一緒である。


「よかったら二人も食べるか? うちで獲れた肉なんだ」

「うちで獲れた……?」


 金ちゃんは眉根を寄せて訊き返してから、何かピンときたようで、


「も、もしかして、でござるが……まさか野菜や魚だけでなく、ダンジョンでお肉まで獲れるようになった……なんてことは、ないでござろう?」

「実はそうなんだよ。ほら、こっち」


 驚く金ちゃんたちを畜産場へ連れていく。


「牛や豚がいるでござる!? あっちには鶏も!?」

「この辺りで勝手に湧いて出てくるようになったんだ」

「そんなのありでござるか!? 生き物でござるよ!?」

「魔物だって作れるんだし、そう不思議じゃないだろ」

「確かにそう言われればそうかもでござるが……」


 ちなみに食用の牛だけでなく、乳牛もいる。

 見た目が全然違うので見分け方は簡単だ。


 また鶏は肉になるだけでなく、卵も産んでくれる。

 肉用は大型で、卵用は小柄なので分かりやすい。


「「うまあああああああああっ!?」」


 肉を食べた金ちゃんとメレンさんもまた絶叫する。


「この肉、元の世界の高級肉以上の美味さでござるよ! ぜひこれもうちで扱わせてほしいでござる!」

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