第52話 いや整うってなに?

 ダンジョンを吸収したあと、ダンジョンポイントが大きく増えていた。

 どうやらエミリアのダンジョンが保有していたダンジョンポイントが、丸ごと俺のポイントに加算されたらしい。


「随分と貯えていたんだな。俺なんて、あればあるだけ使ってしまうのに」

「万一のときに備えていたんですの。誰かさんのせいで無駄になってしまいましたけれど」


 俺は早速そのポイントを利用し、まずは「迷宮構築」で未確認だった残る二つを使用した。


「迷宮構築Ⅰは……何だ、これ?」


 巨大な樽のようなものが出現し、困惑する。


「入り口があるな? もしかして中に入れるのか? ……熱っ!?」


 樽の中は高温になっていた。

 石が敷き詰められたストーブが焚かれているのだ。


「サウナじゃないか」


 どうやら迷宮構築Iは、サウナルームだったようだ。

 しかも本格的なバレル式である。


「なぜここにきてサウナが……」

『このサウナには特殊な効果があります』

「特殊な効果? 具体的には?」

『整うことが可能です』

「いや整うってなに?」


 言葉自体は聞いたことはあるのだが、抽象的すぎてよく分からない。

 だがシステムはそれ以上のことは教えてくれなかった。


 さらに最後の迷宮構築Jを作成すると、様々な器具が出現した。


「トレーニングマシン?」


 持久力を鍛えるためのランニングマシン、腹筋を鍛えるアブドミナルマシン、それから大胸筋などを鍛えるチェストプレスマシン、足を鍛えるためのレッグプレスマシンなどなど、トレーニングのための器具がずらりと並んでいる。

 まるでスポーツジムだ。


 迷宮構築Jはトレーニングルームらしい。


『このトレーニングルームで鍛えることで、ステータス上昇効果が期待できます』


 そりゃ、トレーニングをしたらステータスは上がるような……?


 それから俺は魔物強化を使い、今いる魔物たちをどんどん強化していると、


『おめでとうございます! レベルアップしました! 新たな機能が追加されました』


 レベルが6に上がった。

 追加された機能は「魔物Ⅱ」である。


-----------

 アンゴラージ(5)

 ポメラハウンド(10)

 エナガルーダ(15)

 スモークトレント(20)

 チンチライオン(30)

 魔物F(50)

 魔物G(100)

 魔物H(200)

-----------


「作れる魔物が増えたな。……かなり要求ポイントが大きいが」

「要求ポイントが大きいということは、強い魔物を作れるということですの! 期待できますわね!」

「期待なんてしても無駄よ、エミリア」


 興奮しているエミリアに対し、アズは完全に冷め切っている。


「どうせまたモフモフしか生まれてこないわよ」

「まぁ、その辺はやってみないと分からないしな」


 俺はひとまず魔物Fを作成してみる。

 すると地面からにょきっと生えてきたのは、大きくて白いモフモフの塊だった。


「ほら、見なさい! やっぱりモフモフじゃないの!」


 アズが呆れ顔で叫ぶ。


「というか、ほとんどアンゴラージじゃないか、こいつ……?」


 ビッグアンゴラージよりも大きいが、見た目は瓜二つだ。

 ただ、アンゴラージはまんじゅう型なのに対し、こちらは少し縦方向に長い。


「うほうほ」

「鳴き声はぜんぜん違うな。よく見ると、手足がある?」


 白い毛に覆われているせいで分かりにくかったが、二本の足で立っている様子。


『イエティという雪猿の魔物です』


 だから「うほうほ」って鳴くんだな。


 このイエティ、猿だけあってかなり賢かった。

 こちらの言ったことをほとんど理解できるようで、


「右手上げて」

「うほ」

「左手上げて」

「うほ」

「右手下げないで、左手下げて」

「うほ」

「すごい、完璧だ」


 こちらの指示通りに手を上げ下げする、というような芸当も一瞬で覚えてしまった。

 フェイントにも引っかからないし。


 なので穴掘りはもちろんのこと、手を使って器用に収穫作業までやってくれるようになった。


「文句しか言わない誰かさんたちより、よっぽど役に立つな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る