第43話 魚の方も増えてきてるぞ

「お部屋が完成しましたっ!」


 シーナがやり切ったような顔で報告してくれる。

 どうやら自分たちの部屋を掘り終えたらしい。


「思ってたより早く完成したね!」

「このスコップのお陰かな……? 途中ぜんぜん疲れなかったし……」


 嬉しそうに言うリッカと、不思議そうに首を傾げるノエル。

 そのスコップは適当に買った普通のやつだぞ。


 一応、どんな感じになったか見せてもらうことにした。


 子供たちの部屋には、台所やリビングのある共用スペースから直接行くことができる。


 それぞれが一部屋ずつ掘ったので、入り口は全部で五つ。

 大人だとギリギリ通れるくらいの入り口を抜けると、その先にあったのは八畳分くらいの部屋だ。


 綺麗な直方体に掘られていて、壁も天井も平らなので、本当に人力で掘ったとは思えないクオリティである。

 それが五つ、横一列に並んでいるのだが、部屋同士の壁を貫通するように小さな窓が設けられていた。


「ここから行き来ができるようにしました」

「あたしは繋げないでって言ったんだけど」


 黒髪のマインがちょっと不満そうに言うと、ミルカがすかさず横やりを入れた。


「この中で一番寂しがり屋なのがマインなのに?」

「そんなことないわよっ!」


 ともあれ、確かに子供が一人で隔離されたような部屋にいるというのも、あまり健全な感じがしないし、悪くないアイデアだな。


「じゃあ、それぞれの入り口に玄関を設置して」

「「「いきなり扉が現れた!?」」」

「さらに寝室にして、と」

「「「今度はベッドが!?」」」


 トイレと風呂は共用でいいだろう。

 もちろん二つ作って、男女は分けることに。


 ちなみに俺の部屋とアズの部屋は元から作ってあって、子供たちの部屋と向かい合う反対側に入り口がある。


 トランポリンや砂場、それにトラップEで作ることができたアスレチックなどは、体育館ほどの広さの部屋を作ってそこに集合させた。

 完全にモフモフと子供たちの遊び場である。


「えっ、いつの間にこんな場所を作ったんですか!?」

「みんなが部屋を掘ってる間に、モフモフたちに作らせたんだ」

「この子たちが!?」

「「「「「「ぷぅぷぅ!」」」」」」

「「「「「「わんわん!」」」」」」

「「「「「「にゃあ!」」」」」」


 自慢げにアンゴラージ、ポメラハウンド、チンチライオンが鳴く。


「彼らにはダンジョンの拡張も手伝ってもらってるからな」


 人数も多くて、もはや立派な穴掘り戦力である。

 見た目が可愛いだけではないのだ。






 金ちゃんと再会し、売買契約を交わしてから数日後。

 いつになくハイテンションで、金ちゃんがダンジョンにやってきた。


「丸夫殿! お陰で爆売れ中でござるよ!」

「おお、それはよかったな」

「あの品質なら当然でござるが、かなり強気の値段で勝負したにもかかわらず、予想以上の反響でござる! あっという間に在庫がなくなりそうな勢いでござるよ!」


 主に貴族や富裕層をターゲットにした高級料理店に営業をかけていったらしいが、最初は半信半疑だった料理人たちも、実際に食材を口にしてみると、一瞬で契約に至ったという。

 さらに噂が料理人たちの間で広がって、今では向こうからぜひ売ってほしいと頼み込んでくるほどらしい。


「そんなこともあろうかと、別の生産拠点を作っておいてよかったな」

「どういうことでござるか?」

「ほら、こっちだ」


 金ちゃんを案内したのは、商会の地下から階段を下りていったすぐ先。

 そこに新しく作った学校のグランドほどの広さの空間があった。


 もちろんすべて畑や果樹園、養殖場となっている。


「こんなところに!?」

「近い方が運搬も楽だろうと思って」

「しかも、あれから何日も経っていないのに、もう作物がなっているでござる!」

「ああ、そろそろ収穫ができそうだな。魚の方も増えてきてるぞ」

「ていうか、あそこにイカらしきものが泳いでるでござるよ!?」

「どんな魚が生まれるかはランダムらしいからな」

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