第44話 お寿司にはお米が必要だろ?

 養殖場でどこからともなく現れる魚の種類はランダムだ。

 貝やイカ、ウニなんかも見つかることがある。


 ……もちろん本当の養殖場では、魚の種類に応じた環境が必要だろうが、まぁファンタジー世界だからな。

 魔物が壁から生えてくるくらいだし。


 しかし海が近くにない王都で、これほど新鮮な魚を手に入れるのは不可能だろう。


「ただ、鮮度の良い魚が手に入らないせいで、生魚を食べる習慣がまったくないでござるよ。なのでいずれ職人を育てて、お寿司のお店を開こうと思っているでござる。最初は気味悪がられるかもしれぬでござるが、いずれその美味しさが理解できるようになるはず」


 確かに日本の生食文化も、当初は海外の人に受け入れられにくかったが、最近ではむしろブームになっているほどだからな。

 きっと異世界の人たちにも浸透していくだろう。


「食材を独占しているから、他では絶対に真似できぬでござるよ。つまり永遠のブルーオーシャンでござる。ふっふっふ……」


 不敵に笑っている金ちゃんだが、大事なことを忘れているぞ。


「お寿司にはお米が必要だろ? 何度か市場に行ってるが、この世界でまだ一度もお米を見たことないぞ」

「……実はそこなのでござる」


 俺の指摘に、金ちゃんは残念そうに溜息をつく。


「一応、お米というものは存在しているようでござるが、この国ではほとんど生産していないそうなのでござる。他国からごく稀に輸入されてくる程度で、寿司のシャリに適したお米ともなると、簡単には手に入りそうにないでござるよ」

「そうか……ところで、少しあっちの方を見てくれ」

「ん、あれはまさか……」


 俺に誘導されて、金ちゃんが視線を入り口から一番遠い場所へと向ける。


「た、田んぼでござる!?」


 そこにあったのは青々とした水田だ。

 実はフィールドⅮが「水田フィールド」、すなわち田んぼだったのである。


「収穫はまだもう少し先だが、そのうち実ができてくると思うぞ」

「間違いなく美味しいお米が作れるでござるな! あとは寿司を握れる職人を育てるだけでござる!」


 金ちゃんは寿司を握った経験もなければ、詳しい作り方を学んだこともないはずだ。

 どうやって育てるのかと思っていると、


「問題はござらぬ。料理人系のジョブを持つ人間を一時的にでも雇うことができれば、後はざっくりとした情報を伝えただけでも、本物そのものの寿司を完成させてくれるでござるよ」

「なるほど」

「そうと分かれば、早速、探してみるでござるよ!」


 興奮した様子で地上に戻っていく金ちゃんだった。








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 拡張(5)

 光源(10)

 トイレ(15)

 風呂(20)

 台所(25)

 寝室(30)

 玄関(35)

 リビング(40)

 迷宮構築Ⅰ(50)

 迷宮構築J(100)

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 アンゴラージ(5)

 ポメラハウンド(10)

 エナガルーダ(15)

 スモークトレント(20)

 チンチライオン(30)

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 カーペット(10)

 足つぼ(15)

 トランポリン(20)

 砂場(30)

 アスレチック(40)

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 畑フィールド(100)

 果樹フィールド(150)

 養殖フィールド(200)

 水田フィールド(250)

 フィールドE(300)

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「こうしてみると、だいぶ判明してきたな」


 生成や設置が可能なものを、俺は改めて確認していた。


 以前に比べるとかなりポイントが入ってくるようにはなったが、生産量を増やすためにフィールド系を連続で使用したため、現在の残ポイントは少ない。

 売れ方次第では、今後さらに増やす必要も出てくるかもしれなかった。


「もっとダンジョンを広げていかないとな」


 そうしてモフモフたちに協力してもらいつつ、ダンジョンを拡大し続けていたときだった。


『警告。別のダンジョンと連結されました』

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