第41話 土が消失していくという感じ
「丸夫殿はこのダンジョンで生活しているでござるか?」
「ああ。ちゃんとトイレや風呂もあるからな。あと、トランポリンとか砂場も」
「それ、何のためでござる……?」
一応、トラップということらしいのだが、完全に遊び場である。
まぁリザードマンと戦うとき、役には立ったが。
「今のところダンジョンの要素がまったくないでござるな? 魔物も見かけぬでござるし……。ところで先ほどからチラチラと見かける可愛らしい動物は何でござろう? ペットを飼っているのでござるか?」
「ああ、あれが魔物だよ」
「魔物!?」
「おーい、みんな。ちょっとこっちに来てくれ」
俺が呼びかけると、モフモフたちが一斉に集まってくる。
「「「「「「ぷぅぷぅぷぅ」」」」」」
「「「「「「わんわんわん」」」」」」
「「「「「「くるるるる」」」」」」
「「「「「「にゃあにゃあ」」」」」」
金ちゃんは目を丸くし、メレンさんは目を輝かせた。
「しかもすごい数でござる!?」
「何ですか、この子たち! とっても可愛いです!」
「うちで作れる魔物は今のところ全部こんな感じなんだ。可愛いだろ? 戦闘力は今一つだけど」
「これはウサギでござるか? こっちは犬で、鳥に猫……」
「あと、樹木の魔物もいるぞ。移動が遅いからこっちに来るまで少し時間がかかるけど。あ、来たみたいだな」
「「「「「「わさわさわさ」」」」」」
スモークトレントたちが遅れてこっちにやってきた。
「(むしろこの魔物たちの方が売れるかもしれぬでござるな……いや、確かダンジョンの魔物は、外に出ることができぬでござったか……)」
「ん、どうしたんだ?」
「いや、何でもないでござるよ。それより、先ほどの話の続きでござるが……良い運搬方法があるとのことでござったが?」
「ああ、実はそうなんだ」
現在このダンジョンの王都に一番近い出入口は、出入りのたびに封鎖している。
誰かが見つけて勝手に入ってきたりするのを避けるためだ。
しかし今後、金ちゃんの商会と取引するということになると、そんな面倒なことはしていられない。
というか、そもそも王都の外に出入り口があっては、非常に効率が悪いだろう。
「だから直接、商会とダンジョンを繋げたらいいと思うんだ」
「そんなことができるでござるか!? 正直、結構な距離があるでござるが……」
「十分もあれば大丈夫だと思うぞ」
「十分!?」
それから俺は金ちゃんの前でダンジョンを掘ってみせた。
ぐんぐん広がっていく洞窟に、金ちゃんが驚愕する。
「これがダンジョンマスターの能力でござるか……」
「いや、それは使ってないぞ。【穴掘士】の能力だ」
「【穴掘士】の!?」
「自分で掘るとポイントを節約できるんだ」
「掘るというより、土が消失していくという感じでござるな……」
やがて商会の地下まで辿り着いた。
「この上がさっきの建物だ」
「もう着いたでござるか? しかもよく分かるでござるな?」
「どこに繋げたらいい?」
「地下に倉庫があるでござるから、そこにそのまま繋げてもらえるでござるか?」
「了解」
地上に向かって階段を作りながら掘っていく。
「……ちゃんと階段になってるでござる」
「この階段、一瞬で作ったというのに、かなりの強度がありますね」
「先ほど試しに壁を触ってみたでござるが、ただ掘り進めるだけでなく、しっかり固めながら掘っているようなのでござる」
「さすが【穴掘士】ですね……」
そんなやり取りを聞きながら地上を目指していると、ついに倉庫の床をぶち抜いて、商会と連結した。
「本当にうちの倉庫に繋がったでござる……。しかしこれで商品を誰にも知られることなく入荷できるでござるな! 〈超商売運〉のお陰か、一気に商機が巡ってきたでござるよ!」
……もしかしたら俺が偶然あそこでメレンさんに遭遇したのも、金ちゃんのスキルによるものかもしれない。
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