第27話 トランポリンだ
どうやら眷属であるアズが魔物を倒すと、その経験値が俺にも入る仕組みになっているらしい。
それで知らない間に、【穴掘士】としてのレベルが上がっていたのだろう。
最前線で戦ってる天野たちより俺のレベルが高い理由なんて、それしか考えられなかった。
「アズだけじゃないかもな。モフモフたちが魔物を倒すと、その分もレベルアップするのかも……」
まぁその辺の検証は後回しだ。
ダンジョンに誘き寄せたリザードマンたちは全滅させたが、まだ砦には結構な数が残っている。
「おっ、一気に大戦力で攻め込んできたぞ」
いつまで経っても仲間たちが戻ってこないことを不審に思ったのか、これまでにない数でダンジョン内に突入してきた。
砦で待ち構えていればいいだろうに、わざわざ敵のテリトリー内に踏み込んでくるのは、正直あまり賢明とは思えないが。
「どれくらいの数ですか?」
「今までの倍以上、ざっと六十~七十体はいるな」
「きっとその中にはリザードマンエリートもいるはずですし……なかなか大変そうですね」
「じゃあ敵の数を上手く分散させてしまおう」
「……どういうことですか?」
ダンジョン内を進むリザードマンの大群。
マップを確認していれば、その動きが手に取るように分かる。
「この辺りだな」
天野たちと別れて、俺は一人、新たな通路を掘り進めていた。
そうしてちょうどリザードマンの縦列に突っ込んでいくような位置で、通路と通路を繋げてみせた。
「「「~~~~ッ!?」」」
いきなり横壁から現れた俺に驚くリザードマンたち。
俺はすかさず近くにいる数体の身体を掘って絶命させると、すぐに今掘ってきた通路へと引き返す。
「「「シャアアアアッ!!」」」
憤ったリザードマンたちがまんまと後を追いかけてきたので、足元を足つぼの地面に変えてやった。
「「「ッ!?」」」
「おお~、痛がってる痛がってる。あんまり健康状態がよくないのかな?」
そのまま走って移動し、再び新たな通路を掘っていく。
そうしてまたリザードマンの縦列途中に道を繋げると、そこにいたリザードマンたちを攻撃して、すぐさま退散する。
これを繰り返していると、リザードマンの群れはあっという間にバラバラになってしまった。
マップで確認してみても、奴らの混乱ぶりが分かるほどだ。
天野たちはリザードマンの群れの先頭が進んだ先に待ち構えている。
そこまで辿り着けそうなリザードマンは少数だし、念のため戦闘にも役立つチンチライオンを何体かサポートとして置いておいたので、十分に対処できるだろう。
「問題はリザードマンエリートだな。マップだとどこにいるか分からないし」
「「「わうわう!」」」
とそこへ、数匹のポメラハウンドたちが駆け寄ってくる。
「リザードマンエリートを見つけた?」
「「「わう!」」」
「先頭集団と、一番後方の集団にそれぞれ一体ずつだって?」
「「「わう!」」」
実は身体が小さくて賢いポメラハウンドたちを、偵察部隊として放っておいたのである。
動きも素早いので、リザードマンに捕まることなく、群れの中を駆け抜けてきたようだ。
「よしよし、よくやったぞ」
「「「くぅん」」」
ご褒美に身体中を撫で回してやると、嬉しそうに尻尾をぴょこぴょこ振りながらごろんと横になるポメラハウンドたち。
「先頭の一体は天野たちに任せるしかないな。俺は後方のやつを片づけるか」
そうして俺はぐるっと迂回して、リザードマンたちの最後尾へ。
「いた。あいつだな」
手下のリザードマンたちを怒鳴りつけている、ひと際体格の良いリザードマンを発見する。
どうやらかなり苛立っているようだ。
「近くまで行って、すぐに引き返してくれ」
「くるる!」
俺はそのリザードマンエリートに接近していく。
「ブホオオオオッ!!」
こちらに気づいたようだ。
即座に踵を返し、迫りくるリザードマンエリートから逃げ出す俺。
「いいぞ。もう少し引きつけてから、速度を落とすんだ」
「くるる!」
「よし、今だ」
足が速いリザードマンエリートと、配下のリザードマンたちの距離が十分に離れたのを確認してから命じると、エルダーエナガルーダが足を緩めた。
そしてリザードマンエリートが近くに迫ってきたところで、俺は床にトラップを作り出した。
「トランポリンだ」
「~~~~~~ッ!?」
急に地面がトランポリンに変わったので、リザードマンエリートは盛大にスっ転んだ。
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