第17話 死ぬなら一緒に……
田中はクラス一のヤバいやつなのだ。
復活できるか確かめるため自分の心臓をナイフで刺したという話に納得しつつ、俺は詳しい顛末を聞く。
「それで、本当に生き返ったのか?」
「はい。持っていた装備やアイテムだけを残して、目の前から姿が掻き消えたんです。それから数分後、私たちが召喚された王宮内の神殿に、無傷で出現しました。……全裸で」
服も死んだ場所に残るのか……。
男子ならまだいいが、女子は大変そうだ。
「異世界の衣服なら身に着けたままになるらしいです。ただ、さすがにずっと同じものを着続けるわけにもいかないですし……この一件で、私は絶対に死ぬわけにはいかないと決意しました」
「あはは、完全に死ぬよりいいじゃん!」
美里が拳を強く握りしめ、固い決意を口にする。
一方、ギャルらしくさばさばした神宮寺は、あまり気にしていない様子だ。
「……死ぬなら一緒に……そうすれば……ハァハァ……」
大石は一度死んだ方がいいと思う。
「生き返る先は、この世界に召喚された場所に固定される、か。じゃあ、あんまり遠くで死ぬと装備品なんかの回収が大変そうだな」
「そうなんです。それがあるからこそ、ある程度、僕たち勇者に自由行動を認めているって部分もあると思います」
仮に勇者が国を出ていったとしても、死ねば確実に戻ってくるわけか。
それは下手な管理より、よっぽど大きな意味を持つだろう。
一通り話を聞き終わると、天野が興味津々で質問してきた。
「なぁなぁ、穴井! ダンジョンって、どうやって広げているんだ?」
「そうだな。普通はダンジョンポイントというのを稼がなくちゃダメなんだが、幸い俺は【穴掘士】っていうジョブだから、自力で掘って広げてるんだ。もちろん魔物を作ったりトラップを設置したりするには、ポイントが必須になるけどな」
「掘ってるって、ここに来るだけでもかなりの距離があったぞ!? どこまで続いてるんだ!?」
「うーん、そうだな……つい最近、別の街の地下まで到達したけど……」
「「「別の街!?」」」
そろって驚きの声をあげる天野たち。
「別の街って、王都の近くには街なんてほとんどないですけど……」
「そういえば、なんて街だったっけな……一応、街まで聞きに行ったんだが……怪しまれたけど。ああ、そうだ。確か、レジールっていったか?」
「レジール!? 王都から二十キロ以上は離れてますよ! それを自分で掘ったって……ほら、見てください」
美里が地図を取り出し、それを見せてくれた。
王宮から貰った、かなり正確な地図らしい。
「まぁただ真っ直ぐ掘るだけだったからな。地図でいうと、今いるこの辺りは地下三階まで掘ってて、ここみたいな部屋が幾つかあるぞ」
「ど、どれだけの広さがあるんですか……?」
「ちょっとしたショッピングモールくらいかな」
「……ちなみに、ちょっと探検してみてもいいかっ? オレ、ダンジョンに潜るの初めてなんだよ!」
冒険心が沸き立つのか、目を輝かせて頼み込んでくる天野。
「構わないぞ。ただ、まだ構築中だし、あまり期待に沿えるようなダンジョンじゃないけどな」
トラップらしいトラップもないし、魔物も可愛いモフモフたちだけだ。
「あと、最下層にある水晶みたいなやつには絶対に触らないでくれよ」
「ああ、了解だ!」
天野は返事をするなり、ダンジョンの奥へと走っていく。
少しして「トイレやお風呂があるぞ!?」という大きな声が聞こえてきた。
「ところで丸くん。このダンジョン、入り口は一つしかないのですか?」
「いや、作ろうと思ったらいくらでも作れるぞ」
「そうなんですね。ちなみにそれは任意の場所に?」
「ああ。ダンジョンを堀り進めていけば、どこにでも繋げられると思うぞ」
「なるほど……もしかすると、有効活用できるかもしれないですね……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます