第16話 ダメに決まってんだろ
俺は魔物たちをこの場に集合させた。
「「「「「「ぷぅぷぅ」」」」」」
「「「「「「わうわう」」」」」」
「「「「「「くるるる」」」」」」
あちこちから一斉に白いモフモフたちが集い、まるで雲海のようになってしまった。
ちなみに大半がアンゴラージ、ポメラハウンド、エナガルーダだ。
スモークトレントやチンチライオンはまだ数体しか作成できていない。
「「「めっちゃいる!?」」」
「やあああん! 超かわいいんですケドおおおおおおおおおおっ!」
目をハートにして叫ぶ神宮寺。
特にアンゴラージが怯えているので、俺はモフモフたちに言い聞かせた。
「みんな、この人たちは怖くないからな」
「「「「「「ぷぅ」」」」」」
「「「「「「わう」」」」」」
「「「「「「くる」」」」」」
そろって素直に頷いてくれる。
「マジ賢いし! あなりん、触っていい!?」
「ああ、いいぞ」
「やああああん!」
神宮寺が絶叫しながらモフモフの群れに突撃していく。
アンゴラージやエナガルーダは少しビクッとしたが、人懐こいポメラハウンドたちはむしろ自分の方から神宮寺に飛びついていった。
「ああああん! もっふもふしてるしいいいいいいいっ! マジここ超天国~~~~っ!」
恍惚の表情でモフモフを堪能する神宮寺。
それに少し遅れて、天野や美里も魔物の雲海へ。
「こ、これは確かに気持ちがいいな……」
「すごく可愛いです……癒されます……」
先ほどまでピリついていた美里も頬を緩めまくり、すっかりモフモフたちの虜になっている。
ふっふっふ、やはりうちの魔物たちの癒し能力は抜群だな。
そのとき眼鏡を曇らせた大石が恐る恐る訊いてきた。
「……と、ところで、穴井くん……その、そちらのお嬢さんのお触りも、できたりするのかな……? ハァハァ……」
「ダメに決まってんだろ」
なに言ってんだ、このエロ教師。
「今度はそっちの状況を教えてくれないか?」
モフモフに埋もれる彼らに、俺は自分が王宮を出た後のことを聞いた。
異世界の常識を一通り学んだ彼らは、早々に自由な行動を許されたという。
てっきり勇者として厳しい教育を受け、王宮の管理の下で活動していくのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
「異世界から来た勇者たちは、管理されることを嫌う性質を持つと認識されているみたいなんです。だから基本的に、かなりの自由を約束してくれています」
「わうわうっ」
ポメラハウンドを胸に抱きながら、美里が教えてくれる。
「そしてこの世界には冒険者ギルドというものがあって、そこは自分たちで好きな依頼を見つけて、好きなときにこなして報酬を得ることができるんです。だから勇者の多くはここに所属しています。正確には王宮から派遣されている形ですが」
どうやら彼らは現在、勇者兼冒険者になって、四人でパーティを組んでいるらしい。
全員がドラゴン級勇者に認定されているパーティということで、すでに界隈で大いに話題になっているとか。
「ただし、他国に行くときには国の許可が必要ですし、国からの緊急要請には応じなくてはいけません。もっとも、寝床や食事、それに装備やアイテムなんかを国がサポートしてくれていますし、それほど厳しい条件ではないかと」
だから俺のこともすんなり許可してくれたのかもしれない。
てっきり要らない勇者だからとばかり思っていたが……。
「もちろん仮に死んだとしても、生き返ることができるというのも大きいと思います。せっかく召喚した貴重な戦力が簡単に失われるのだとしたら、もう少し慎重になったでしょう」
ちなみにクラスメイトの一人が、本当に死んでも生き返られるのかを試すため、実際に死んでみたらしい。
ナイフで自分の心臓を刺したのだとか。
「マジか。いくら生き返ると言われてても、怖くてそんなことできないだろ」
「普通はそうですね」
「やったのは誰なんだ? いや、聞かなくても分かる。田中だろ?」
「そうです」
「あいつなら平気でやりそうだな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます