第15話 うらやまけしからん
そのうちの一人は、住吉美里。
神宮寺とは対照的な、清楚という言葉の似合う黒髪の女子だ。
性格も真面目で成績優秀。
書道部に属していて、最近かなり大きな賞を取ったという。
そして、俺とは小学校からの幼馴染だったりする。
家も近所で親同士も仲が良いので、何度か家族ぐるみで一緒に旅行に行ったこともあった。
そんな彼女が与えられたジョブは【聖女】。
回復魔法に長けたドラゴン級の勇者だ。
「何でこんなところにいるんですかっ?」
「ええと……説明したら少し長くなるんだが……」
「長くなってもいいので、ちゃんと説明してください。……そっちの女の子のことも」
美里がちらりとアズの方へ視線をやる。
なぜかそこに敵意のようなものが込められていたように感じたのは、気のせいだろうか?
なお、説明が遅れたが、最後の一人はうちのクラスの担任である大石諭史だ。
線の細い身体つきと気弱な性格で、担任なのに頼りなさ過ぎる三十八歳だが、勇者としてはドラゴン級の【大魔導士】というジョブを授かっていた。
「アタシも超気になるんですケド! てか、めっちゃ可愛い子じゃん! コスプレも似合ってるし!」
「コスプレじゃないけどな……」
アズの角や尻尾は、紛れもない身体の一部である。
それから俺は、彼らに今までの経緯を話していった。
すると反応が真っ二つに割れた。
「穴を掘ってたらダンジョンマスターになった!? すごいじゃないか!」
「あなりん、自在にダンジョン作れるってこと!? やっば! 超羨ましいんですケド!」
驚きと羨望の眼差しを向けてくるのは、天野と神宮寺だ。
「彼女は眷属で……ずっと一緒にいる……」
「美少女を……支配下に……なんと、うらやまけしからん……」
一方、美里と大石はわなわなと身体を震わせている。
どうやらダンジョンそのものよりも、アズの存在の方が気になったようだ。
「ええと……丸くん? 彼女のその格好も……もしかして、丸くんの命令ですか……?」
なぜか怖い顔で聞いてくる美里。
アズの服装は、確かにかなり露出度が高く、真面目な美里には受け入れがたいものかもしれない。
肩もお腹も太腿も大胆に露わになっているし、胸の部分も真ん中がぱっくり開いているため、谷間を簡単に拝むことができるのだ。
だが最初からこの格好だったわけで、俺が指示したなんて、大いなる濡れ衣である。
「違うって。元々こういう姿で現れたんだよ」
「本当ですか?」
「ついでにコスプレでもなくて、本物の角や尻尾だぞ。魔族らしいからな」
美里が疑いの目を向けてくる一方で、大石はアズの身体を舐め回すようにガン見していた。
「も、もし僕が、彼の立場だったら……あんなことやこんなことを……ハァハァ……」
何かブツブツ言ってるし。
俺たちの担任、大丈夫だろうか……。
そんな美里と大石のせいか、アズは俺の後ろに隠れ、ぶるぶると震えていた。
「ね、ねぇ……あんた、こいつらと知り合いなの……? さっきから、勇者とかどうとか言ってるけど……」
「ああ、彼らは紛れもない勇者だぞ」
「ゆ、勇者……っ!? ううう、嘘でしょ!? こ、こんなに早く勇者に見つかってしまうなんて……っ! 終わったわ……。あ、でも、あんたと知り合いだっていうのなら、交渉の余地あり……? ていうか、何で勇者なんかと知り合いなのよ?」
「話を聞いてなかったのか? 一応。俺も勇者だからだ」
戦力外勇者だが。
「はぁ!? あんたも勇者なの!?」
「そうだぞ。勝手に異世界から召喚されたんだよ」
「だ、だから色々とおかしかったのね! って、勇者でダンジョンマスターとか、聞いたことないんだけど!?」
そもそもダンジョンマスター自体、本来は魔族がなるものだっていうし、そりゃそうだろう。
「ねぇねぇ、あなりん! もしかして、さっきのモフモフのうさっぴ、あなりんが飼ってたり?」
「ああ。アンゴラージって言って、俺が作り出した魔物なんだ」
「マジ!? さっき逃げられたんだけど、抱っこさせてくんない!?」
「別に構わないけど」
「や~ん、あなりんマジ神!」
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