第4話 何よその変なジョブ
続いて俺は「迷宮構築」を確認してみた。
-----------
迷宮構築A(5)
迷宮構築B(10)
迷宮構築C(15)
迷宮構築D(20)
迷宮構築E(25)
-----------
「何だ、これは? 十種類あるってことか?」
『実際に使用することでその内容が明らかになります』
「なるほど。この(5)っていうのは?」
『必要となるダンジョンポイントです』
保有しているダンジョンポイントが50なので、迷宮構築Iまでであれば、どれでも作成することができる。
「具体的にどんなものなんだろうな?」
「ダンジョンマスターによって全然違うみたいだけど、ダンジョンを広げるのが基本よ。他には一方通行の扉を設置したり、とげとげの床を設置したり、凄いのだとループ構造を作ったりとかね」
とりあえず俺は迷宮構築Aとやらを試してみることにした。
すると目の前の壁が一瞬で消失し、二メートルほどの道ができあがった。
-----------
拡張(5)
迷宮構築B(10)
迷宮構築C(15)
迷宮構築D(20)
迷宮構築E(25)
-----------
「おっ、『拡張』に変わってる。しかしこれで5ポイントが必要なのか……普通に自分で掘っていけばいいんじゃないか?」
試しにスコップで壁を掘り進めてみた。
「ちょっと、何やってるのよ!?」
背後からアズの怒鳴り声。
「何って、ダンジョンを広げてるんだが?」
「自分で掘って広げるダンジョンマスターなんて、聞いたことないんだけど!? だいたいどれだけ時間がかかると思ってるのよ! はぁ、何でこんなやつに……」
ぶつぶつ言ってるアズを余所に、俺は壁を掘り続ける。
十分もかからずに、二メートルくらい進むことができた。
「って、あんた掘るの速すぎない!?」
「ジョブが【穴掘士】だからな」
「何よその変なジョブ」
ともかく、改めてマップを見てみると、今掘った部分がちゃんとダンジョンとして認識されていた。
「さすがにポイントを使うよりは時間がかかるけど、これなら節約になりそうだな」
「こんなやり方でダンジョンを拡張できるなんて……」
さらに迷宮構築Bと迷宮構築Cを使ってみた。
「迷宮構築Bは『光源』か。これでダンジョン内を明るくすることができるんだな。そして迷宮構築Cは……『トイレ』?」
「要らないでしょ、そんなの!?」
「いや、どう考えても必要だろ。あちこちで排泄されたら困るぞ?」
ついでに俺もちょうどトイレに行きたいと思っていたところだったのだ。
実際に作成してみると、広い空間に作ってしまったせいか、そのど真ん中に便器とドアだけがぽつんと出現してしまった。
これでは丸見えである。
仕方ないので小部屋を掘って、そこに移動させる。
設置したものは任意の場所にいつでも動かすことができるらしい。
狭いスペースに移動させると、ちゃんと周囲の土壁がトイレらしい壁紙に変化し、そこに紙巻き器とレバーが出現した。
レバーを捻るとちゃんと水が流れる。
排泄物はどこに消えていくのだろう……。
「トイレットペーパーも付いてるな。なくなったらどうするんだろう?」
『なくなりません』
なくならないらしい。
さすがファンタジー世界だな。
まだポイントがあるので、迷宮構築Dを作ってみる。
「迷宮構築Ⅾは『風呂』か。何気にこれは一番ありがたいかも」
穴を掘り続けていると、当然ながら汗を掻くし、かなり土埃も浴びてしまう。
だから寝る前には必ずお風呂に入りたかったのだ。
作成してみると、浴槽と排水口付きの床、それに鏡とシャワー付きの蛇口が出現した。
浴槽がかなり大きくて、なかなか立派なお風呂である。
もちろんお湯も出る。
「何でそんなのばかりなのよ!? もっとまともなのは作れないの!?」
またアズが嘆いている。
まぁこの洞窟型のダンジョンに、不釣り合いな代物であることは確かだ。
それにしても段々とこのダンジョン内での生活環境が整ってきたな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます