第5話 それは嫌!

 トイレや風呂を作ったことでポイントがなくなり、回復するのを待つしかなくなった。

 だが一時間以上かけて、ようやく10ポイント回復するといった程度。


 なかなか時間がかかってしまうようだ。


「もっと早くポイントを回復させる方法はないのか?」

『あります。ポイントの回復速度は、ダンジョンの規模に比例します。つまり、ダンジョンを拡大すればするほど、回復が早くなります』


 それは良いことを聞いたぞ。

 俺は自力で掘っていけば、ポイント無しでダンジョンを拡張できるのだから、とにかくどんどん広げていけばいい。


「アズも手伝ってくれていいんだぞ?」

「そんな地味な作業、絶対やらないわよ!」


 じゃあ眷属として一体何をやってくれるのだろうと思いつつ、俺はひたすらスコップを動かし続けた。


 ――スキル〈穴掘り〉が進化し、スキル〈洞窟掘り〉になりました。

 ――スキル〈土運び〉が進化し、スキル〈土消し〉になりました。

 ――スキル〈土固め〉が進化し、スキル〈土硬化〉になりました。

 ――スキル〈方向感覚〉を獲得しました。


【穴掘士】というジョブのお陰か、穴を掘っているとそれに没頭してしまう。

 途中からなぜか穴を掘る速度が加速するようになったり、掘った土が勝手に消えてしまうようになったりしたので、非常に作業が捗った。


「おお、確かにポイントが回復しやすくなっている気がする」


 時折、ポイントを確認してみると、当初よりも回復ペースが上がっていた。


 そうして貯まったポイントで、迷宮構築の未確認機能を使用していく。


「迷宮構築Eは『台所』か」


 作成してみると、かなり立派なキッチンが出現した。


「ガスコンロは三口あるし、シンクや調理スペースが広いな」


「こんなの、あたしの知ってるダンジョンじゃない……。あたしは人間どもが恐れ戦くような、最強最悪のダンジョンを作り上げたかったのよ……っ!」

「そんなこと言われても。まぁこうなったからには、諦めてのんびりいこうぜ」


 項垂れているアズの肩を、ぽんと叩いてやる。


「諦められないわよ! だってどんなダンジョンを作り上げるかで、あたしの来世が変わってくるんだから!」


 どうやらここで迷宮神を満足させるようなダンジョンを作り上げれば、来世ガチャで優遇してもらえるらしい。


「あたしはダンジョンマスターになれなかったけど、あんたを使って絶対に最強のダンジョンを作り上げないといけないのよ!」

「だったら穴掘りを手伝ってくれよ」

「それは嫌!」


 アズはそんな感じだが、順調にダンジョン内の生活環境が整ってきたときである。


『おめでとうございます! レベルアップしました!』

「うおっ、何だ?」


 いきなりシステムがテンション高く叫んできたので、俺はびっくりしてしまった。


『新たな機能が追加されました』


 どうやらレベルが2に上がったみたいだ。

 それに伴い、新しい機能が追加されたようなので確認してみよう。


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 ステータス

 マップ

 迷宮構築

 魔物生成

-----------


「魔物を作れるようになったみたいだな」


 横からアズが口を挟んできた。


「やっぱりダンジョンと言ったら魔物よね! 強力な魔物をたくさん作り出して、人間どもが戦慄するようなダンジョンにしてやるわよ!」


 随分とやる気だ。

 さっきまで半泣きだったのに。


-----------

 魔物A(5)

 魔物B(10)

 魔物C(15)

 魔物D(20)

 魔物E(30)

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「やっぱりどんな魔物を作れるか分からないんだな。とりあえずAから作ってみるか」

「どんなのが出るのかしら! グリフォン? ワイバーン? それともドラゴンかしら!」

「5ポイントの魔物だからな。そんなに強くはないんじゃないか?」


 そんなことを言いながら、俺は魔物を作り出した。

 一体どこから現れるのだろうと思っていると、ダンジョンの壁が瘤のように盛り上がって、コロンと落ちてくる。


「いや生まれかた……」


 思わずツッコみつつ、誕生した魔物を見る。


 そこにいたのは、直径三十センチくらいのモフモフの白い毛玉だった。


「ぷぅぷぅ!」

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