Pharrell Williams - Freedom
毎度お待たせしております。今回はアメリカ・バージニア州出身のシンガー兼音楽プロデューサーで、ファッションデザイナーとしても活躍の場を広げるマルチタレント──Pharrell Williamsより『Freedom』でいってみましょう。
至って平凡な家庭に生まれたPharrell Williamsの非凡なる才能は、米・Time誌が毎年発表する「世界で最も影響力のある100人」に選出された経験もある、Timbalandの名で知られた偉大なるアーティストであり、従兄弟でもあるTimothy Zachery Mosleyと、日本でいうところの中学1年生の夏に出会ってから地元Princess Anne高校でもスクールバンドで共に活動していた旧知の仲"Chad" HugoことCharles Edward Hugoと一緒になって、1990年代前半に結成したヒップホップ・グループ──S.B.I.(Surrounded by Idiots)で既に頭角を現していました。
しかし、S.B.I.名義では作品が生まれることはなく、その後PharrellとChadの幼馴染コンビは、高校在学中に学校から程近い場所にあったとあるスタジオで、80年代アメリカで勃興した一大ムーブメントであるNJS(New Jack Swing)の始祖とも言うべきプロデューサー・Teddy Rileyと邂逅を果たし、プロデュースの何たるかを学ぶと、そんな彼の後ろ盾を得ながら友人のSheldon HaleyやMike Etheridgeを招いてThe Neptunesを結成し、1992年から活動を開始します。Jay-Z, Babyface, Britney Spears, Justin Timberlake, Snoop Doggなどなど、数々の有名アーティストによる珠玉の作品を手掛けてきたプロデューサー・グループであるThe Neptunesの独創的な音楽スタイルは、後に「ネプチューンズ・サウンド」という形で代名詞化されるようになり、Teddyから受け継いだNJSをさらに独自に成長させた、ヒップホップとR&Bの要素を主軸とした斬新なクロスオーバースタイルに世界中が熱狂しました!
Mike Etheridgeは参加していませんが、同時期にPharrellは同じメンバーでN.E.R.Dを結成し、表舞台にも活躍の場を広げます。全ての活動を合わせれば、もはやまだ達成していない栄冠を数えた方が早いのではないかというほど数多くの偉業を成し遂げてきた御年50歳(と言っても誰も信じないくらい石仮面被ったレベルの若々しさ)は、デビューアルバム『In My Mind』で2006年よりソロキャリアでも注目を集めます。
そんなPharrell Williamsによるソロ名義での楽曲として最も有名なのは『怪盗グルーのミニオン危機一発』で知られる、2013年の米アニメーションコメディ映画『Despicable Me 2』のサウンドトラックからシングルカットされた名曲『Happy』ではないでしょうか。以前紹介したフレンチ・ハウスを代表するデュオ──Daft Punkとの共作『Get Lucky』のボーカル提供のためフランスのパリに滞在していたPharrellが、帰国後に制作を依頼され、また彼も前向きにそれに応じた結果、一念発起して作曲・プロデュースされたもの。それでいて、ファンキーなメロディーにヒップホップ的な要素を掛け合わせ、沢山のバッキング・ボーカルを招聘し、シティソウル的、ゴスペル的、R&B的ともいえるハーモニーの欠片を繋ぎ合わせたような独特のセンスはまさに、NJS、そしてネプチューンズ・サウンドの実践を通じて涵養されてきたPharrell Williamsそのものを体現するかのような音楽! それをアニメーション映画のサントラとして落とし込むんですから、Pharrellのブラック・ミュージックに対する造詣の深さが窺えます……。
とまあ『Happy』や『Get Lucky』などのPharrell Williamsを代表する名曲は、既にご存じの方も多いと予想しまして、今回は2017年の続編映画『Despicable Me 3』のサウンドトラックにも収録された2015年のシングル『Freedom』を選びました!
『Happy』が幸せの賛歌だとするなら、対する『Freedom』は自由への渇望を象徴する曲かもしれません。Pharrell Williamsは『Happy』において「幸せは気の持ちようだ」というメッセージを、一貫して主張してきました。一方で『Freedom』については、彼のライブパフォーマンスなどを通じて「金、政治、出身地により自由は奪い取られるもの。しかしそんなことは関係ない。自由は勝ち取るんだ」ということを声高に宣言しています。まさにアメリカ合衆国民であるPharrellらしい考え方であり、それを力強いピアノのメロディーに乗せて叫ぶように歌うことで、ただの理想に終わらせない説得力があると思います。それでは、参りましょう……。
[Verse1(0:21~)]
「僕につかまって」
「離さないように」
「誰が何を見ようと興味ないよね?」
「誰が何を知ろうと構わないよね?」
「君の名はFree」
「姓はDomだ」
「だってまだ信じてるはずさ」
「僕たちの故郷を」
[Chorus(0:41~)]
「人は皆赤い花」
「生きとし生ける者全てに備わっている」
「心よ、その力を解き放て」
「魂よ、その翼を広げなさい」
「自由万歳!」(×6)
[Verse2(1:12~)]
「僕につかまって」
「離さないように」
「チーターは食べなきゃ生きられない」
「逃げろ、アンテロープ」
「君の名はKing」
「姓はDomだ」
「だってまだ信じてるはずさ」
「皆のことを」
[Chorus(1:32~)]
「赤子が初めて息するとき」
「夜が太陽を出迎えるとき」
「鯨が海を飛び跳ねるとき」
「人は皆気が付くのである」
「自由万歳!」(×5)
「深呼吸」
[Verse3(2:03~)]
「我々の起源は熱である」
「いつしかそれは電気的なものに置き換わり」
「衝撃的だったことだろう」
「だから我々に太陽を残してくださったのか?」
「空気中の原子」
「海の中の生物」
「神の子である我々は」
「全て同じものでできているのだよ」
[Outro(2:23~)]
「自由万歳!」(×8)
そこまで複雑なフレーズもなく、解説することがなかったので最後まで一遍に翻訳してしまいました。ご覧になって頂いた通り、ヴァース20秒、コーラス30秒という規則正しいリズムを3度繰り返すだけの単調な曲にもかかわらず、その内容は詩的で宗教的でもあり、Pharrellの思う自由の何たるかが端的に説明されています。
「君の名はFree Domだ」「生きとし生ける者全てに備わっている」というフレーズが示す通り、Pharrellが『Happy』から常に考えてきたであろうことは「幸せも自由も自分次第だ」ということ。「チーターはその日の糧を得るために狩りをする」一方で「アンテロープ(およそウシ科の動物全般)は逃げなくてはならない」という弱肉強食が人間社会にも存在していることは否めないですが、それはまさしくKingdom(王国)のやり方です。息をするのも、朝を迎えるのも、海を泳ぐのも、全て自由。ならば、その自由を自らの手で実現しようではないかという、自己実現に向けた提言なのです!
少し短いですが、今回はこんなところでしょうか。次回はまた久しぶりにリクエストを頂いておりますので、それにお応えする形で、1968年の結成以来、今なお活躍を続けるイギリスのハードロック・バンドから一曲お届けして参ります。よろしくお願いします……!
†††
※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はPharrell Williams - Freedomから引用しております。
※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。
※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。
※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます