【番外編】邦楽好きとも繋がりたい - 6

 恒例の番外編も、早いか遅いか、これで6回目を迎えました。音楽の市場規模や執筆者である僕の趣味嗜好との関係で、英米アーティストを取り上げる機会が比較的多い本作ですが、本編第61~70回はその他欧州諸国出身アーティストも数多く紹介してきましたね。「お気に入りのアーティストが見つかった」「具体的なバックボーンを知ってより好きになった」などという方がいらっしゃれば、大変嬉しいです。


 観客・出演者を問わず熱中症が猛威を振るったサマソニもなんだかんだ成功裏に終わり、早くもひと夏の終わりを感じ始めている今日この頃。定期的にタイムスリップしているのではないかと錯覚するような激流の如し時の流れにいい加減疲れてきたところなので、秋になったらもう少し穏やかな時間が流れてほしいな……。


 願っても仕方のないことは脇に置いておいて、本日のラインナップをどうぞ。 


1.B'z

2.コブクロ

3.スキマスイッチ


 今までは本編と比べて、比較的マイナーなアーティストにスポットライトを当ててきた番外編ですが、たまには有名どころを攻めてみるのも良いでしょう。ということで、今回は日本人ならば誰もが一度は名前を聞いたことがある、あるいは曲を聴いたことがあるといった国民的デュオ3選となります!


 まず最初は、1988年にセルフタイトルのアルバム『B'z』で華々しいデビューを飾って以降、当時は若者を中心に日本で再燃していたバンドブームにあったにもかかわらず、ハード寄りのギター・サウンドにボーカルというシンプルな構成で数多くのヒットを生み出してきた異色のタレント──B'zです。


 こういった日本の大御所を取り沙汰すると喋ることがなくて企画倒れとなるので、これまで敢えて避けてきたのですが、今回ばかりは仕方ないですね。テレビコマーシャル、ドラマ、映画などといった映像作品とのタイアップ、"LIVE-GYM"はじめ各種音楽イベントへの出演歴からも分かる通り、日本国民であれば、例えその存在を認知していなくとも、一度は彼らの楽曲を耳にする機会があったかと思います。正真正銘、我が国を代表するアーティストのひとつであると言えますね。


 そんな著名ユニットについて、ここでひとつ皆様に問題です。

──"B'z"というグループ名の由来、ご存じでしょうか……?


 邦楽方面には明るくない僕は当然分からなかったので、少し調べてみたところ、意外な事実が判明しました。なんとですね、今や日本のロックシーンを彩るアイコンとも言うべき"B'z"という名前につき、 松本孝弘(Gt.)、稲葉浩志(Vo.)両名は過去のインタビューにて「深い意味はない」としながらも、例えば「万人に受け入れられるようにとの願いから、英語のアルファベットの最初と最後の文字である"A"から"Z"の全てをカバーする」という意味を込めて"A’z"と命名したところ、その発音につき"A’z"≒AIDS(エイズ)と誤読されかねないとした上で「"A"の次は”B”だ」というやや短絡的な発想から"B’z"という名前が誕生したとか。


 「例えば」と言ったのは、B’zに対する過去のインタビューで、名前の由来に関する質問の答えに一貫性がないためです(笑)。他には、以前に使用したバンドのロゴから着想を得た結果、蜂("bee")の群れでB'zとしたのだとか、2人の愛したイギリスのアーティスト──The Beatlesの"B"とLed Zeppelinの"Z"を掛け合わせたのだとか、諸説あるようです。いずれにせよ、どんな名前にしたのかではなく、その名の下に何を成してきたのかということの方が重要ですね。うんうん。


 実際、B'zが残してきた功績は、日本国内に留まりません。活動20周年を迎えた2008年には「日本でもっともアルバムを売り上げたアーティスト」としてギネス世界記録に認定されており、その直前にはアジア圏出身のアーティストとして史上初となる、米・ハリウッドに位置するギターセンターのRockWalkに殿堂入り(エンタテインメント界の重鎮を讃えるHollywood Walk of FameやRock and Roll Hall of Fame=所謂ロックの殿堂とは別物)。Elvis Presley, John Lennonなどをはじめとする錚々たる著名アーティストと共にその名を連ねます!


 そんな世界が認めるロックミュージシャンにつき、今更敢えて何かをお勧めするなんてことは烏滸おこがましいにもほどがあるのですが、恥を忍んで僕が今日の気分でおすすめするのは、2006年発売の15thアルバム『MONSTER』に収録されている人気曲『ピエロ』です。


 懐かしきかな、あれはまだ僕が中学生だった頃、当時足繁く通っていたゲームセンターに漫画『北斗の拳』を原作としたハイクオリティなメダルゲームがありまして、狂ったように遊んでいた毎日を送っていました。記憶が正しければ、そのゲーム内にて、ジャックポットを引き当てた時に流れてきた挿入歌──それがB'zの『ピエロ』だったんですよ。あれは確か上木彩矢ver.のカバーだった気もしますが……。


 ラオウの天将奔烈を喰らった時の絶望感を思い出したところで、続いては、大阪にてストリートミュージシャンとして活動していた小渕健太郎(Vo., Gt.)と黒田俊介(Vo.)が1998年に思いがけぬ邂逅を果たしたことで結成された名ユニット──コブクロです。


 その名の由来は、小渕・黒田両名の名前からとってコブ・クロということだそう。2005年にシングルとしてリリースされた名曲『桜』は、ストリートミュージシャン時代に小渕健太郎が書いたオリジナルソング第一号となったもので、コブクロ結成に至るまでの経緯を歌ったものだと言われていたりいなかったり。


 当時、路上ライブで『桜』を披露した黒田俊介の演奏を見に行った小渕健太郎は、歌声は素晴らしかったもののギタープレイが絶望的に下手だったことから、自分が奏者として参加することを決意。また、通りすがりの聴衆に『桜』の曲が誰のものであるかを問われた際、オリジナル曲であると告白することが妙に小恥ずかしかったために「Mr.Childrenのインディーズ時代の曲だ」と嘘の返答をしてしまったという逸話も。


 今や全国的な知名度を誇る叩き上げのコンビにつき、僕が今日の気分でおすすめするのは楽曲ではなく、2005年リリースの5thアルバム『NAMELESS WORLD』です。これまた懐かしき記憶ですが、僕の幼少期、よく両親の運転する車でこのアルバムが流れていました。直接車のプレーヤーにCDを挿し込むタイプのあれです(笑)。


 『NAMELESS WORLD』は、先程も話題に挙げた、インディーズ時代から大切にされてきた『桜』や大人気曲『ここにしか咲かない花 』に始まり、過ぎ行く時の切なさを歌った『待夢磨心-タイムマシン-』に『同じ窓から見てた空』が、刹那的な恋模様を描いた『Saturday』が、それぞれの味を出していて、まさにコブクロ・ワールド全開の名盤と言えると思います!


 おそらく僕の思い出補正が多分に含まれているということは念のため言い添えておいて、ラストを飾るのは、そんなコブクロがライバルとまで目している存在。1999年に愛知県出身の大橋卓弥(Vo., Gt.)と常田真太郎(Pf., Cho.)により結成されたユニット──スキマスイッチです。


 上京後、それぞれ別のバンドで活動していた2人の出会いは、決して理想的なものではありませんでした。当初、大橋卓弥の歌声と作曲センスに心酔していた常田真太郎ですが、ユニット結成のため、前者の所属していたバンドの楽曲を勝手にアレンジして「こっちの方が良い」と言って聴かせていたそう。しかし、当の大橋は「なんだこいつ」と言わんばかりに相手にせず、常田の一方的な片想いは中々実りません。


 それどころか、幼い頃はクラシックのピアニストになりたいとの夢を抱いていたこともある大橋は、常田のピアノを聴いて「よくステージに立てているものだ」と一蹴。常田の方も、誰にも舐められないようにと尖ったファッションで周囲に威嚇していた当時の大橋に対し、あまり良い印象を持たなかったことについて否定していません。


 とはいえ、大橋が天性の才能の持ち主であることを見抜いていた常田には「一緒に組んだら絶対に成功できる」という確信があったのだとか。実際に、常田が知り合いのプロデューサーへと自作の楽曲を持ち込んだところ、彼の所属していたバンドの曲はフルで聴かれることもなかったのに、大橋のバンドの曲をアレンジしたものだけは好評を得たそうで「一緒に組んでいるのか」と問われ、咄嗟に「組んでいる」と即答してしまいました。引くに引けない状況に追い込まれた常田は、すぐに大橋へ連絡を取り、口八丁でメジャーデビューの可能性をちらつかせ言い包め、結成に至ります(笑)。


 すったもんだありながらも、現在は老若男女に人気を博しているデュオによる粒揃いの名曲たちから、僕が今日の気分でおすすめするのは、2006年のシングル『ボクノート』です。


 幼き頃、両親に連れられて見に行ったアニメ映画『ドラえもん のび太の恐竜2006』の主題歌として流れていたことがきっかけで知ったスキマスイッチ。僕にとって原点にして頂点な最高の一曲です。今でも普通に泣けます……。


 はい、それでは今回の番外編も以上となります。誰もが良く知る、少なくとも邦楽方面に知識を持たない僕よりは読者の皆様の方が遥かにお詳しいであろう有名アーティストの紹介でしたので、敢えてありきたりなバイオグラフィーや音楽性に関する話は避け、各デュオの結成秘話や名前の由来など、意外と周知されていない(?)小噺に焦点を当ててみました。如何でしたでしょうか?


 終わってみれば、僕のおすすめは2005-6年の曲ばかりでしたね。この頃の僕は邦楽がマイブームだったのでしょうか(笑)。それもそのはず、この時の僕はまだ洋楽との出会いを果たしておりませんでした故……。


 ここまでお付き合いくださりまして、ありがとうございます。次回の番外編もお楽しみに!


(本編・番外編かかわらず、洋楽・邦楽アーティストの紹介リクエストは随時受け付けておりますので、コメントにて気兼ねなくお伝えくださればと思います。具体的なアーティスト名でなくとも「○○(国・地域)で一押しのアーティストが知りたい!」とか「○○(ジャンル)で今キテるのは誰?」とか、抽象的なアイデア提供でも大歓迎ですので、ご希望などありましたらよろしくお願いします。)


 それでは……!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回は何も引用しておりません。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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