The Jackson 5 - I Want You Back

 お待たせしております第54回──今回は、アメリカ・インディアナ州出身のJackson兄弟によって1962年に結成された先駆的ボーイズ・バンドにして、米国史上初めて白人による支持を受けたとされる黒人アイドル・The Jackson 5(後にThe Jacksonsへと改名)から『I Want You Back』を紹介して行きたいと思います!


 歌って踊れる"King of Pop"こと六男・Michael Jacksonをリードシンガーに据えて、長男・Jackie、次男・Tito、三男・Jermaine、四男・Marlonの計5人によって1969年にメジャーデビューを果たしたThe Jackson 5は、ミシガン州デトロイトのレコードレーベル・Motownに所属して、4曲連続で全米Billboard Hot 100とR&Bチャートの両方で1位を獲得するという華々しいデビューを飾ります!


 同レーベルに所属していたMarvin Gayeに代表される、ポップ・ミュージックの技術を織り交ぜた「モータウン・サウンド」と呼ばれる独特なソウルを基盤として、シンプルでキャッチーなバブルガム・ポップの要素が融合したその先鋭的な音楽性は、後に「モータウン・ソウル」と形容されるようになるなど、The Jackson 5はアイドルとしての人気だけではなく、音楽の開拓者としても歴史に名を刻む存在として今なお語り草となっております……!


 老若男女問わず人気を博し、世代や音楽ジャンルの垣根を超えて、今なお様々なアーティストに多大なるインスピレーションを与え続けているヒットメーカーは、彼らの実父であるJosephのマネジメントを受けていました。Jackson兄弟が音楽に強い興味を抱いたのも父親の影響が大きく、ボクサーや製鉄所勤務などといった異色の経歴を経て実弟が始めたバンド・The Falconsに加入していた当時のJosephは、自身が愛用していたギターの絃を子供たちが切ってしまったことに激昂しますが、それをきっかけにJackson兄弟の才能を見出したと言います。──生粋のアーティスト一家といった感じですね!


 当初は長男・次男・三男がJackson Brothers名義で1962年から活動を開始した彼らですが、六男・Michaelの台頭もあって1964年には5人が集結して、リードボーカルも交代に。1972年以降は所属レーベル・Motownの強硬的な体制によって低迷期を迎えるものの、1975年に米・CBS Recordsへと好条件で移籍を果たすと、人気はすぐに回復して数々のヒットを連発します。また、この騒動は訴訟問題にまで発展して、どうしてもMotown側がThe Jackson 5の商標権を放棄しなかったため、The Jackson 5側はバンド名をThe Jacksonsへと改名することを余儀なくされます。


 しかし皮肉なことに、バンド全体の人気はリードシンガー・Michaelの爆発的なファン増加によって比重が分散した結果、Michaelの脱退を迎えた1984年に佳境を迎えます。ソロ活動に専念してもなお強い求心力を維持し続けたMichaelの影響は凄まじく、他のメンバーもソロ方面に進路を見出したことでバンドは空中分解──2009年のMichael急逝に伴って、誠遺憾ながら、オリジナルメンバーでの再結成の望みは絶たれてしまいました。


 今なお崇拝の対象として神格化されているほど、米国のみならず世界中の芸能界に多大なる貢献を成さってきたMichaelの死因については、陰謀論含め諸説あります。ですが、捜査当局の事情聴取に対する彼の元主治医の宣誓供述書によれば、慢性的な不眠症に悩まされていたMichaelに多種多様な催眠鎮静剤や抗不安薬を毎晩のように投与し続けた結果、急性プロポフォール中毒によって死亡したという見解が有力なようです。細やかながら、伝説的な活躍をなさった故・Michael Jacksonへと、ここに哀悼の意を表します。


 しかし、Michaelの意志は決して潰えておりません。1997年に米・Rock and Roll Hall of Fameへとその名を刻んだThe Jackson 5は、彼の無念を胸に抱き再起を誓うと、2009年にかつてトラブルのあったMotownから未発表アルバム『I Want You Back! Unreleased Masters』が発表され、再注目を集めたことを追い風に、晴れて2012年に念願の再結成を遂げます。


 波乱万丈の経歴とMichaelの存在にリスペクトを表して、今回紹介する曲に選ばせて頂いたのは、Rock and Roll Hall of Fameにて"The Songs That Shaped Rock and Roll(ロックンロールを形作った楽曲)"としても選ばれている名曲『I Want You Back』です! 『帰ってほしいの』という邦題でも知られる1969年の大ヒット・ソングは、当時弱冠10歳だったMichael Jacksonが既にリードボーカルを担当していた、素晴らしい1曲となっております。


 もはや説明は不要ですね。是非とも当該楽曲を改めて聴き直して、偉大なMichaelとThe Jackson 5という存在を、今一度脳裏に思い浮かべてみて頂きたいと思います……!


[Verse1(0:30~)]

「君がまだ僕のもので居てくれた時、君のことが煩わしかったんだ」

「君のいつでも可愛らしい顔は」

「あまりにも目立ち過ぎちゃうからね」

「でも誰かが君を連れて行ってしまった、一目惚れって感じでさ」

「もう一度会いたいと思ったところで、今となっては手遅れなんだね」


[Chorus(0:50~)]

「ベイベー、もう一度だけチャンスをくれないか(君への愛を証明したい)」

「どうか僕のことを(君の心に迎え入れてほしいんだ)」

「愛しい人よ、君を手放すなんて僕はバカだった(手放すなんて、ベイベー)」

「でも君が奴の腕に抱かれているのを見ると(帰ってきてほしいんだ)」


 歌詞だけを見た時の率直な感想は、過去の失恋を悔やむ男性視点で描かれた、実にありがちな大人のラブソングって感じですね。でも、年端の行かない子供たちが声変わりも済んでいない喉で当該楽曲を熱唱している姿を見ると、得も言われぬギャップを感じます。もっとも、下積み時代のThe Jackson 5はクラブやストリップショーといった成年向け施設での演奏をすることもあったようなので、そんな背景事情も考えながら聴いていると一層心に響くような気がしてきませんか……?


[Verse2(1:18~)]

「君からの愛なくして生きようというのは長くて眠れない夜みたいで」

「僕に証明させてほしい、過ちに気が付いたってことを」

「君が歩いていく全ての道には僕の涙の跡が残っているよ」

「煩わしいと思っていた君を追いかけてでも、言わせてほしいんだ」


[Chorus(1:37~)]

繰り返し


 以下アウトロまで兄弟が入れ替わりながらコーラスを続けますが、内容にそこまで変化はないので、翻訳はここまでとしたいと思います。今回もありがとうございました。


 数字縛りでやってきたこれまでのアーティスト選びも一時中断して、次回は完全に僕の好みから1曲紹介したいと思います。米出身アーティストから、ラブソングを沢山お届けして参りましたので、少なくともそこら辺は外して選ぼうかなーと、漠然と考えておりますので、よろしくお願いします!


 それでは……!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はThe Jackson 5 - I Want You Backから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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