5 Seconds of Summer - Teeth

 第53回を迎えまして、本日紹介致しますはオーストラリア・シドニーで2011年に結成されたポップ・ロックバンド──5 Seconds of Summerから『Teeth』でございますー! ここ最近、関東近郊は既に半袖で十分といった気温状況ですので、引き続き夏を先取りして参りますよ!


 元はリードボーカル・Luke Hemmingsが14歳だった頃に、多岐にわたるアーティストの楽曲のカバーをYouTubeに投稿していた所謂"YouTuber"のような存在だったのですが、日増しにファンが集まる中で、彼の中学校の同級生であるギタリスト・Michael Cliffordとベーシスト・Calum Hoodが一体となって、バンドが発足することとなります。その後の活動に際して、ドラマーという最後のピースを探し求めていた彼らはFacebook上でAshton Irwinを発掘してメンバーに加え、現在に至るまで4人体制が維持されています。"5SOS"という愛称で知られる彼らの人数は、バンド名の"5"とは関係がないんですね(笑)。


 5 Seconds of Summerの知名度が飛躍的に向上したのは、所属している事務所の先輩に当たるイギリスの人気ボーイズバンド・One Directionの『Take Me Home』ツアーにて前座を務めた2013年でした。One Directionのメンバーも5SOSのファンであることを公言するなど、後輩のデビューを後押し。満を持して、翌年2014年に『She Looks So Perfect』でデビューを飾ると、本国オーストラリアのみならず、ニュージーランド、アイルランド、イギリスのシングル・チャートで首位の座を獲得──同年6月にはセルフタイトルのデビューアルバム『5 Seconds of Summer』をリリースして、11カ国で首位を獲得するなど、爆発的に人気を集めていきました! 


 ボーイズバンドとしての路線をゆく1Dと、あくまでロックを追求する5SOS──音楽性は決して相容れない2つのグループですが、互いをリスペクトして助け合う精神には、心温まるものがありますね……!


 続く2015年に2ndアルバム『Sounds Good Feels Good』をリリースすると、8カ国のチャートで首位の座をキープ。さらに、2018年にリリースした3rdアルバム『Youngblood』も順当に商業的成功を収め、母国オーストラリアでは3作連続のNo.1アルバムに輝きます。また、同アルバムにはバンド史上随一のヒットナンバーである表題曲『Youngblood』が収録されており、ファン必聴の作品になっております。ジャケットもカッコ良い……!


 そんな新進気鋭の若手アーティストを紹介するためにピックアップした今回のテーマは、バンドの4thアルバム『Calm』に収録されたセカンドシングルとして、2019年にリリースされた楽曲『Teeth』になります! こちらも『Youngblood』に続く名作として、何処かで耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか……?


 また『Teeth』は、Netflixにて配信されているアメリカのティーンドラマ・シリーズ『13 Reasons Why(邦題:13の理由)』の第3シーズンのサウンドトラックに収録されていることでも知られています。僕は見た事ないですけど、この作品を知っている方であれば当該楽曲を聞いて「あー、これね!」と記憶が喚起されるかもしれません。


 それでは、歌詞の内容を見て行きましょう。曲の題名でもある"Teeth"(歯)が果たしてどのような意味を持つのか、その点にも注目しながら以下ご覧くださいませ……。


[Verse1(0:06~)]

「君だけが僕の頭を埋め尽くす、そんな日もある」

「凍える夜にも燃え上がるように熱い、たったひとつの存在」

「余所見なんてできないよ」

「ただ傍に居てほしいと縋るんだ」

「僕のベッドに寝ている君は他人行儀、そんな時もある」

「僕は愛されているのか将又死を望まれているのか」

「散々僕を拒絶したくせに」

「今度は『傍に居て』だなんて」


[Pre-Chorus(0:34~)]

「朝になると言い訳がましく僕を呼ぶけど」

「小さな嘘が幾重にも折り重なって蝶と化す」

「意味ありげに僕の双眸を覗き込む君に」

「僕は生け捕りにされてるのかもね」


[Chorus(0:48~)]

「血みどろの大喧嘩をしても、甘美なる愛の味に絆される」(×2)

「可愛げのある言葉で取り繕おうと、君の心は牙を剥き出しにしているね」(×2)

「闇夜の悪魔よ、僕の手を取って」(×2)

「決して、二度と離さない」(×2)


 内容をざっくり纏めると、またしても、愛憎相半ばするドロッとしたラブソングのようですね。最近は図らずもこのようなテーマの楽曲を取り上げる機会が多くなっていますが、悪しからず。


 歌詞中に登場する「僕」と「君」は、ある程度付き合いの長いカップルかとお見受けしますが、どうやら最近彼らの関係性はうまく行っていないようで、主人公の方に至ってはパートナーに「死を望まれているのかもしれない」とすら感じているようですね……。それでも、最初の数フレーズを見る限り「僕」の愛は全く冷めていないようです。


 蝶("butterflies")が現れた箇所について、これは"butterflies in my stomach"という慣用表現があるように「君」の嘘に心が落ち着かない──つまりは、得も言われぬ胸騒ぎを覚えているという主人公の心情を表現したものと思われます。また、海外では移り気のある浮気性の女性を蝶に例えることがあるそうで、主人公がパートナーの浮気を疑っているという描写でもありそうです。そんな自由奔放な「君」が居る一方で「僕」は彼女の瞳に生け捕りにされているという対比が、皮肉が利いていて素晴らしいですね……!


 そしてサビのフレーズ──楽曲のタイトル"Teeth"が登場した訳ですが、内容を見るにこれは単なる「歯」ではなく、主人公の心を傷つける「牙」と表現した方が適切かもしれません。


[Verse2(1:15~)]

「君が人生最高の存在だと感じる、そんな日もある」

「君こそが生涯の伴侶だと確信する、そんな時もある」

「そう思えば突然君は僕の知らない誰かに豹変してしまう」

「そして僕をこれでもかってくらいに拒絶するんだ」


[Pre-Chorus(1:29~)]

繰り返し


[Chorus(1:43~)]

繰り返し


[Bridge(2:11~)]

「シャツには返り血、手には薔薇」

「君はまた他人事みたいに僕を見つめる」

「シャツには返り血、手には心臓」

「まだ脈打ってる」


[Chorus(2:24~)]

繰り返し


[Outro(2:54~)]

「牙よ」(×3)

「決して離さない」


 ち、血が……。これも比喩表現のひとつであれば良いのですが、必ずしもそうとは言えない含みを持たせた結末となっておりますね。皆さんは如何感じられましたでしょうか。


 ちなみに、Outroの部分ではアメリカのロックバンド──Rage Against the Machineのギタリスト・"Tom Morello"ことThomas Baptiste Morelloが参加してギター・リフを演奏しており、迫力のある締め括りによって薄暗いMVや歌詞の内容とは裏腹に"聴"後感は最高です(笑)。皆さんも是非最後まで通して聴いてみてくださいね。


 さて、今回もこれにて終了です。次回もまた"5"のタスキを繋いでいきたいと思います。そう、誰もが良く知るアーティストが登場致しますので、お楽しみに!


 それでは……!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回は5 Seconds of Summer - Teethから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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