Strange Talk - Climbing Walls

 毎度長々と雑談から入るのも書き手としては楽しいのですが、そろそろ話題が尽きてきたので偶にはいきなり本編に入っていきましょう。節目が見えてきた第48回目となる今回は、2010年に結成されたGerard SidhuとStephen Dockerからなる(元は4人組でした)、オーストラリアのビクトリア州メルボルン出身のシンセポップデュオ──Strange Talkから『Climbing Walls』をお届けしてまいります!


 Strange Talkは、地元オーストラリアでNeon IndianやFoster The Peopleの前座を務めた後、Parklife, Good Vibrations, Playground Weekender, Future Music Festival, Falls Festivalなどといった音楽の祭典にて行われたパフォーマンスが話題を呼び、2012年にリリースされた『Climbing Walls』は米・Billboard Unchartedでトップの座を獲得しました!


 バンド全体の基礎的なサウンドは、以前も紹介したロックバンド・Phoenixなどに近しいと言われていて(実際にPhoenixとも所縁のあるプロデューサー・Tony Hofferも関与)、Flumeのインディー・スタイルと、Daft Punkのフランチディスコ・サンプルを組み合わせたような"Indie meets French disco"と称される、エレクトリックでメロディアスな音楽性を特徴としています。


 Strange Talkがまだ4人体制だった頃の名曲『Climbing Walls』は、翌年に発表されたデビュー・スタジオアルバム『Cast Away』のタイトルシングルと並び、不朽の名曲として今なお人気があります(というより、暫く新アルバムをリリースしていなかったこともあり、デュオ体制となってからのStrange Talkはあまり音沙汰がありません)。


 余談はさておき、歌詞翻訳に移って参りましょう。


[Verse1(0:26~)]

「いつの日か逃げ出せることを願って鎖を断ち切べく走り出す」

「僕を抱き締めてくれる君の感触のように都合の良いことだけを感じてたい」

「壁によじ登って天気が移ろうのを待ち続けるんだ」

「檻に閉じ込められた愚か者のように言い残すことは何も残ってない」


「過去を振り返っては君の言葉に耳を塞ぐ」

「灰に染まった夕焼け空に向かって昇って行く」

「騙されていたと知って今は自制しようと努めてるよ」

「それが進むべき道を示さないと分かっていながら真実を探し求めるんだ」


[Chorus(1:36~)]

「僕はずっと逃げ出そうとしている」

「君が言っていることから」

「僕は逃げてばかりだ」

「それでも両の足で立ち続けるよ」


 おやおや、何処か儚く薄暗い歌詞に登場する主人公は「君」に言われた言葉が足枷となって過去に囚われ続ける迷い人のようですね。「僕を抱き締めてくれる君の感触のように都合の良いことだけを感じてたい」というように、在りし日の思い出を懐かしみつつ言い残すことがないと言っていることから、主人公は「君」に棄てられてしまった悲しき人間──これはどうやら、失恋ソングの類のようです。


[Verse2(2:16~)]

「遠く離れた明るい日の中に君の幽霊を見る」

「僕の心で泳いでいたそれは今や津波のように押し寄せて」

「高く登り詰めてきた壁を壊していく」

「一筋の光が差し込んで影は逃げ隠れてしまった」


[Chorus(2:45~)]

繰り返し


 "ghost"という単語が出て来たことで、主人公の過去の記憶に居る「君」は既に死に別れたパートナーなのか、単純に自分をフった元恋人なのか分からなくなりましたね。いずれにせよ、大切な存在だった「君」の影は今や津波のように大きくなって主人公の心を覆い尽くし、高く積み上げてきた壁が一瞬のうちに崩れ去っていく。そんな悲愴感漂う世界観ですが、主人公は「それでも両の足で立ち続けるよ」と言っているように、現実と生への執着──人間としての「強さ」を見せています。ともすれば「死」や「薬物」が物語のアクセントとして登場しがちな海外の失恋ソングにおいて、ある種の潔さというか、純粋な側面が垣間見えて僕は好きです。月並みな感想ですみません……。


 今回は雑談もなく淡々と進行したため、非常に短くなってしまいましたが以上になります。ありがとうございました!


 お詫びと言ってはなんですが、次回・次々回は誰もが良く知る超有名アーティストを一挙に紹介します! 気合を入れて各アーティストの魅力をお伝えしていきたいと思っているので、よろしければお付き合いのほどよろしくお願い致します!


 それでは……!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はStrange Talk - Climbing Wallsから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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