Foals - 2001

 地球温暖化の影響を如実に感じさせる、過ごしにくい気温が続く昨今──皆様如何お過ごしでしょうか。全国的に平年よりも若干遅めのようですが、沖縄を始めとする南部の方では既に梅雨入りが発表されているとか。そんな気の滅入るような悪天候も吹き飛ばす夏メロラッシュは、まだまだ続きます……! いやいや、夏メロなら本格的に暑くなる時期まで残しておけと言われそうですが、そこはご愛嬌ということで。


 いつも冒頭で話す内容が気候の話題ばかりでは芸がないので、もう少し雑談をば。皆様は季節といえば、四季のうち何時が一番好きでしょうか。僕の場合、夏冬は両極端な気候が続くので除外として、春は花粉症なので完全な敵対関係──よって、消去法で秋が一番好きだということになります。実際に秋って良くないですか。鮮やかに色付いた木々が織り成す雅な景観に心が洗われ、旬の食材も多くご飯は美味しく感じます。特に、七輪を囲んで炭火で秋刀魚を焼きながら、網の端っこでキノコ類を一緒に焼きつつ良き所でカボスを絞って、そこに日本酒があった時にはもう最高です。──夏よ、早く過ぎ去れ(夏が好きな人はすみません)。


 初っ端から大きく話が脱線しております。閑話休題、第47回目を迎える今回紹介するのは、イギリス・オックスフォードシャー州出身のインディー・ロックバンド──Foalsから『2001』になります! 何故の選曲か、それは僕の生まれ年が2001年だから親近感を覚えたというだけの短絡的発想です。お許しを……。


 まずはバンド紹介から。Foalsとは、2002年からおよそ8年間にわたって活動していた同郷のバンド・YouthmoviesのリードシンガーだったAndrew Mearsを盟主として結成された、英国ロックシーンの未来を背負って立つグループです。もともとThe Edmund Fitzgeraldというマスロックバンドで活動していたボーカリスト兼ギタリスト・Yannis Philippakisとパーカッショニスト・Jack Bevanを加え、Face Meets Grillと呼ばれた小さな地元バンドのメンバーだったJimmy SmithとWalter Gerversも巻き込み計3つのバンドが融合して生まれたという、ちょっと特殊な経緯があります。


 彼らは、度々話題に挙げているBlurやR.E.M.といった大御所の前座を務めたなどで徐々に名を揚げ、過去10年間のパフォーマンスによって海外大型フェスティバルにおいてヘッドライナー級の待遇を受けるまでになった、EDMやヒップホップ勢の台頭によるロック不況と言われた2010年代を力強く支えた実力派です!


 実際に、彼らのリリースした全オリジナルアルバムが、全英チャートにてTOP10入りを果たしているということからも、その人気っぷりが垣間見えます。それの何が凄いのか──というのも、Foalsはリリースするアルバム毎に音楽性が微妙に異なるんですね。そのバラエティーに富んだ音楽性は批評家やファンの間から、オルタナティブ・ロック、ダンス・パンク、マス・ロック、アート・ロック、ポスト・ロック、ポスト・パンク、アート・パンク、インディー・ポップなどなど、様々な呼ばれ方をしています。──斯く言う僕も音楽ジャンルには詳しくなく「何年のアルバムには○○といった特徴があって~」などの説明はほとんど出来ませんし、語り始めると膨大な文章量になってしまうので、ここはひとつ「考えるな感じろ」の精神でお願いします(笑)。


 そんなこんなで、今回紹介する『2001』は昨年発表のFoalsの最新アルバム『Life Is Yours』に収録されている5月19日リリースのシングルなんですね。本稿執筆日は2023年5月24日──惜しい、1周年記念に5日も遅れてしまいました。


 先んじて説明を加えると『2001』は、Foals結成当初の基礎的な哲学に立ち返ったダンサブルでパンキッシュなサウンドが最大の魅力で、フロントマン・Yannis Philippakisは当該楽曲について「過去からの絵葉書──ブライトンに越してきたばかりの若いバンドだった俺たちが、初めて独立を味わうような感覚を持った時の。これはパンデミックの冬の真っただ中に書かれたもので、パンデミックと思春期の両方の意味で、閉じこもっている感じから抜け出したいという逃避的な願望がある」と語っています。──良いですねー! しましょう、現実逃避!


 それでは、毎度ながら遅くなりました。イギリス南東部に位置する全英屈指のリゾート地・ブライトンをテーマとしたサマーアンセムをご堪能あれ!


[Verse1(0:12~)]

「太陽の御出座おでましだ、空高く御成り遊ばせる」

「甘く蕩けるような陶酔感に身を委ねて、すみれ色の空を仰ぐんだ」

「海辺にはキャンディ売り、青く染まった舌で夏の雨を受け止めるのさ」

「なんてこった!」

「これぞブライトン・ロック!」


「また太陽が昇る、双眸に空の輝きを映して」

「甘く蕩けるような陶酔感に身を委ねて、すみれ色の空みたいにハイになる」

「ノボカインは要らない、青く染まった舌で夏の雨を受け止めるのさ」

「なんてこった!」

「これぞブライトン・ロック!」


[Chorus(0:59~)]

「1日中家に引き籠って待ってたんだ」(×2)

「夏の空が現れるのをな」(×2)

「遊び尽くしたら、酸素を求めてまた潜るの繰り返しさ」(×2)


 夏のギラギラとした太陽から燦々と降り注がれる直射日光にこんがりと焼かれたビーチの砂を裸足で駆けまわるような爽快感と開放感が感じられて、何だかとっても素敵です。


 実はですね、翻訳に当たって最低限凡ミスがないようにネットで情報を掻き集めていたところ知ったのですが、ソニーミュージックが『2001』の日本語字幕付きMVを公開していたので、参考までに視聴しました。例えば最初の3フレーズ目を僕は「海辺にはキャンディ売り、青く染まった舌で夏の雨を受け止めるのさ」と訳しました。これはビーチサイドで棒キャンディーを買って舐めたことで舌が青く染まって、突然の雨で色の付いた舌を洗った(?)みたいな情景が浮かんだのでこのように解釈したのですが、字幕付きMVの方は歌詞の"blue tongues"について「アオジタトカゲ」と訳してるんですね。──なにそれ、まずそのトカゲの種類を僕は知りません。


 Foalsの面々が『2001』の歌詞についてどのような意味を込めているのか、その全てを理解し切ることはできませんが、ここは一先ず僕の解釈を優先させてください。次に「ノボカイン」というのは、麻薬であるコカイン代用薬のうち、エステル型と呼ばれる医療用局所麻酔薬の商標名の1つだそうです。要するに、興醒めするようなことは抜きにして、明るい夏の空のもとでハイテンションで遊び尽くそうってことですね!


[Verse2(1:42~)]

「灯りが点いてきたな、君の目は嘘を吐かない」

「君が僕を思い出すときはブルー、その理由は皆知ってる」

「ラズベリー味の棒キャンディー、青く染まった舌で夏の雨を受け止めるのさ」

「なんてこった!」

「これぞブライトン・ロック!」


[Chorus(2:05~)]

繰り返し


[Bridge(2:45~)]

「潜っては一呼吸だ」(×4)


[Chorus(3:15~)]

繰り返し


 2番は次第に太陽が沈んでいき、街灯によって街が照らされている様子が描かれていますね。「君」と「僕」の間には、何やらのっぴきならない事情がありそうです……。 


 ところで、ブライトンと言えば、サッカー好きの僕にとってはEPL・Brighton & Hove Albionが馴染み深いですね。イングランド1年目にして獅子奮迅の活躍を見せる日本代表・三苫選手を中心に躍進の年を過ごしているBrightonには是非、欧州の舞台への切符を掴んでほしい──おっと、話題が大きく逸れました。


 では、翻訳も以上になりますので今回もこの辺で。お付き合い頂き、ありがとうございました! 次回は僕の趣味嗜好全開で、オーストラリアのシンセポップデュオを紹介しますので、お楽しみに!


 それでは……!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はFoals - 2001から引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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