DNCE - Move

 憂鬱な日曜日の昼下がりに本稿を執筆しております……。迫り来る月曜日に意識が向いて、中々筆が思うように乗らない。そんな身に重く圧し掛かるような倦怠感を吹き飛ばしてくれる最高の一曲を求めて今回ご紹介するのは、アメリカ・カリフォルニア州のダンス・ロックバンド──2015年に結成されたDNCEの復活の狼煙『Move』です!


 DNCEを象徴する存在──"Danger"ことJoseph Adam Jonasは、ニュージャージ州発のポップ・ロックバンドである三兄弟・Jonas Brothersのリードボーカリストとしても知られていて、お馴染みTaylor Swiftの元カレでもあります。DNCEは、2013年に喧嘩別れするような形で解散してしまったJonas Brothersの後に結成されたバンドですが、兄弟の仲直りと後者の再結成に伴って活動休止するなど、ボーカルを共有しているという都合で結成以来慌ただしい時期を過ごしていますが、現在は両バンド共に活動中です。


 ちなみに、Jonas Brothersが2019年の再結成と共にリリースした新曲『Sucker』は本国のシングル・チャートで初登場1位に──この記録は、意外にもボーイズバンドとしてBackstreet BoysやOne Directionすら成し得なかったもので、グループとして初登場首位に輝いたのは、以前も取り上げました1998年のAerosmith『I Don’t Want to Miss a Thing』以来史上2度目の快挙だそう。


 そんな他バンドにおいても大きな成功を収めているJoseph率いるDNCEは現在、2009年に行われたJonas Brothersのツアーに帯同していたことで彼と出会った韓国人女性ギタリスト・이진주イ・ジンジュ=JinJoo Leeと、彼の元同居人でもあるドラマー・Jack Lawlessの計3名によって構成されていて、バンドのベーシストだったCole Whittleはソロキャリアに専念するため、復帰には至りませんでした。


 ──そして、Jonas Brothersの再結成に伴って2018年から活動を休止していたDNCEによる、およそ4年振りとなる待望のニュー・シングルこそが、今回紹介する『Move』なのです。


 DNCEを少しでも知っているならば、原点にして頂点とも呼び声高い2015年のデビュー・シングル『Cake By The Ocean』を思い浮かべる方も多いと思います。しかし『Move』は、DNCE形成当初からの70年代風のギターサウンドによって紡がれるディスコ・ファンクの系譜を継いでいる名曲で、前回も紹介したOneRepublicのリードボーカルにしてJosephの盟友・Ryan Tedderもライティングに関わっている最高のシングルでございますよ。


 平日に向かって行く憂鬱と夏の暑さを吹き飛ばしてくれる、爽快感抜群の一曲を聴いて、貴方のテンションもブチ上げ間違いなし。早速(?)行ってみましょう!


[Intro(0:00~)]

「君を椅子から立ち上がらせて躍らせることに全神経を注ぐよ」

「ドリンク片手にダンスフロアで落ち合おう、ベイビー、狂ったように踊るんだ」


[Verse1(0:15~)]

「自分の指ですらまともに見えなくて、くらくらするほどハイなんだ」

「最高の余韻を楽しむんだ、そうだろ」

「全身に水が染み渡るように、限りある時の中を流れる川のように」

「君と時間を浪費するのは馬鹿げた罪かもしれない」


[Pre-Chorus(0:32~)]

「彼女は僕に何かを伝えたいんだ、その身体で」

「ダンスフロアにウェーブを起こしながら」

「僕らは長いものに巻かれて、ただ君の気の赴くまま」

「否が応でも、知らない奴と出て行くんだろ」


[Chorus(0:48~)]

「君を椅子から立ち上がらせて躍らせることに全神経を注ぐよ」

「ドリンク片手にダンスフロアで落ち合おう、ベイビー、狂ったように踊るんだ」

「こんな風に踊っている時は、君こそがスターさ」

「そんな風に踊ってくれるなら、車を買ってあげたくなるよ」

「そんなところに座っている暇があったら一緒に踊ろうよ」


 軽やかなダンス・ミュージックに清涼感のあるボーカルが心地良く、思わず椅子から立ち上がって動き出してしまいそうですね。おそらく、主人公はディスコのダンスホールで偶然出会った女性を誘惑しているナンパ師といったところでしょうか。泥酔するまで酒を飲んで踊り明かして楽しそうなのですが「君との時間は馬鹿げた罪」とか「知らない奴と出て行く」というフレーズから察せるように、主人公は自分にチャンスがないことを自覚しているようで、ただ刹那的な出会いと快楽を求めて遊んでいるようです。


 ちなみに、歌詞中のフレーズに眩暈や立ち眩みを意味する"Vertigo"という単語があるのですが、何故か大文字から始まっているんですよね。何かしらの固有名詞なのかは分かりませんが『Vertigo』といえば以前登場したU2の有名曲です。関連性があるのでしょうか……?


[Verse2(1:19~)]

「どんな感じにしてほしいんだ、早くも遅くもしてあげられるよ」

「アルバにもメキシコにも連れて行ってあげる」

「そのためならカレンダー上の予定は全部キャンセルさ」

「"Y"で終わる日は全部」

「君との時間を無駄にするのは愚かな罪だね」


[Pre-Chorus(1:36~)]

繰り返し


[Chorus(1:52~)]

繰り返し


[Outro(2:24~)]

「そんなところに座っている暇があったら一緒に踊ろうよ」


 2番のサビ前最後のフレーズ「君との時間を無駄にするのは罪」については、1番と同じ文にもかかわらず意味を変えています。これは完全に僕の意訳で、2番ではおそらく、主人公が偶然出会った女性に対して諦めが付かず、入れ込んでしまっている様子を表していることから違う意味になっているのかなと思ったためです。「君」のことを何処へでも連れてってあげるし、そのためなら"Y"で終わる日(全ての日は"~~day"で終わるので、おそらく毎日の意)──つまり、何時でも予定を空けておくと。そうしてまで、どうしても「君」との時間を無駄にしたくないという主人公の想いが綴られていそうです。要するに、ナンパ師の「諦め」が表現された1番から打って変わって、2番は「執念」が表されているのかなーと個人的に思いました。


 とはいえ、当該楽曲は作曲者のJosephも共同執筆者のRyan Tedderも「遊び半分」で作った深い意味のない歌詞であることは公言していますし、この手の楽曲の歌詞をここまで深掘りして考察している数奇者は古今東西僕くらいなものでしょう(笑)。しかし、それこそが本エッセイのひとつのアイデンティティであり、面白おかしいところでもありますので、楽しんで頂けたら幸いです。


 そんなこんなで次回予告をば。と言いたいところなんですが、何も決めていません(笑)。もしかしたら唐突に何の前触れもなく大御所アーティストを持ってくるかもしれませんが、驚かないでくださいね……。リクエストはいつでも歓迎しているということを書き添えて、今回はこの辺で締めたいと思います!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はDNCE - Moveから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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