The Killers - Human

 日課の筋トレを終え、蛋白質の摂れる夕食を取り、歯磨きしながらお風呂に入って、ウイスキーをロックでグラスに注いで、パソコンの前に座ったらミュージックスタート! 今日も元気よく本稿を執筆していきますよー。


 あ、どうも。音楽紹介エッセイはこちらで間違いありませんよ。間違えてしまった方も、折角ここまで来たんですから、ゆっくりしていってくださいな。


 そんなこんなで今回ご紹介致しますは、2001年にアメリカ・ラスベガスで結成された僕と同い年のロックバンド・The Killersから『Human』です。ちょっとベタな選曲ですみません。この曲、僕の大のお気に入りなんですよね。


 ──えぇ? The Killers(殺し屋たち)がHuman(人間)について語った曲だって? もうこれ以上猟奇的な内容の歌詞は勘弁してよ……。


 そう思われた方、ご安心ください。僕がこの楽曲を題材に選んだ理由は、機知に富んだ社会風刺的な内容の歌詞が非常に興味深いため、皆さんにも是非知ってほしいと思ったからです。他意はありません。


 The Killersを既に知っている人からしたら「ようやく有名どころが来たな」と言った感じで、いつもあまりメジャーではないアーティストばかり取り沙汰している僕の選曲センスにがっかりさせてしまっているかもしれません。言い訳させて頂くと、僕はいつも本作を執筆する時にはテーマとなるアーティストの楽曲をシャッフル再生しているのですが、著名で才能溢れるアーティストを紹介しようとすると、思わず歌詞を口ずさんで文章そっちのけとなってしまい「あれ、どこまで書いたっけ?」状態になるのです。申し訳ない……。


 まずは知らない方のためにも、The Killersについて少しだけ解説しましょう。The Killersという物騒な名前は、イギリスのロックバンド──New Orderの楽曲『Crystal』のMVに登場する、架空バンドの演奏するバスドラムに描かれていたロゴから着想を得て命名に至ったようです。


 The Killersの名声は、本場アメリカ以上にイギリスのファンの間で轟かされました。その事実について語られる際に良く用いられるデータとして、The Killersによってリリースされた『Hot Fuss』(2004)『Sam's Town』(2006)『Day & Age』(2008)『Battle Born』(2012)『Wonderful Wonderful』(2017)『Imploding the Mirage』(2020)『Pressure Machine』(2021)の7枚全てのスタジオアルバムが、UKアルバム・チャートで1位を総嘗めにしているという驚異的な記録があります。あまりの圧巻の記録に言葉もありません。


 さて、今回は音楽の歌詞紹介に熱を注いで行きたいので、バンドの略歴紹介はこのくらいにして、早速本題に入っていくことにしましょう。テーマとなるのは、3rdアルバム『Day & Age』に収録されたナンバー『Human』でございます。The Killersの特徴のひとつでもある壮大なシンセサウンドが前面に押し出されたノリノリのメロディーである一方で、そこに込められた皮肉一杯の歌詞には、きっと貴方も何か気付きを得ることになるかもしれませんよ……。


 ここまでざっと1時間。適度に酔いも回って日付が変わる前に本稿を公開できるのか怪しくなってきましたが、一切手を抜かずにやらせて頂きます。読者の皆さんもお気に入りのヘッドセットで音楽を流しながら、僕の和訳を独自の解釈と共にお楽しみくだされば幸いです!


[Verse1(0:06~)]

「聞き逃すまいと必死だったよ」

「列の中で呼び出しが掛かるのを」

「言いなりにならざるを得ない状況でも」

「寛大な心で従い続けた」

「時々ナーバスになることもあるよな」

「扉が開かれた時には」

「目を閉じ心の声に従え」

を切るんだ」


[Chorus(0:35~)]

「俺たちは人間か?」

「それとも取るに足らないか?」

「鼓動は感じられても」

「両の手は冷え切っているな」

「無様にひざまずいて」

「必死になって答えを探すよ」

「俺たちは人間なのか?」

「それともただのなのか?」


 もう、何というか、素晴らしいです。何度聴いても言葉にならないほどの美しさの中に、切なさや儚さを感じて、言葉に出来ません。こういうのをエモいって言うんでしょうね。


 真面目に解説しましょう。まず、上述した翻訳は全て僕の意訳です。直訳しても決してこんな意味にはなりませんので、必ずしも正解だとは言えませんし、言うつもりもありません。個人的な一解釈として受け止めてくださいませ。


 この楽曲の題ともなっている『Human』という単語は、サビの中のフレーズで度々登場します。「俺たちは人間か、それともダンサーか」と主人公が自問自答する様子が描かれていますが、ここにいうとは、社会のしがらみに囚われて、自立した思考を放棄した憐れな操り人形と成り下がってしまった人を指していると考えられます。心臓は働いていても、手は冷たい。これは、人間は心臓の鼓動によって生命活動を維持していたとしても、心を失ったら同時に人としての温かみも失われてしまうという比喩表現でしょう。


 サビの直前にあったを切れというフレーズはまさに、社会の操り人形となっている人たちに向けて、その紐を切って自分を他人による支配から解放させるんだというメッセージに他ならないと僕は考えます。「扉が開かれる」とは、唐突に自由が訪れることの暗喩でしょう。誰かの言いなりになることでしか生きられない人間にとって、自由は恐怖の対象ですらあります。でも、そんなときは自分の素直な心の言うことを聞き逃さないように待てと、そんなメッセージだと思いたいですね。


[Verse2(1:17~)]

「気高さだの美徳だのには敬意を表するけど」

「そういう良い奴とももうお別れだ」

「魂やロマンスにもよろしく伝えてくれ」

「随分と世話になったよ」

「献身なんてものとも左様ならだ」

「今の俺が居るのもお前らのおかげかもな」

「だから手を振ってお別れしよう」

「俺の幸運を祈っておいてくれ」

「もう行かせてくれ」


[Chorus(1:46~)]

繰り返し


[Bridge(2:14~)]

「お前はちゃんとやっていけるのかなって」

「今夜あたり家が恋しくなるんじゃないか?」

「メッセージもないんじゃ分からないだろ」

「お前は生きてるんだって証明してくれよ?」


[Chorus(2:55~)]

繰り返し


[Outro(3:43~)]

「俺たちはちゃんとした人間か?」(×2)

「それとも社会に踊らされてるだけの操り人形か?」(×2)


 これ以上合間に息継ぎをしていては進まない! そう思ったので一気に書き上げてしまいました!


 2番の冒頭に出てくる単語「気高さ」「美徳」「魂」「ロマンス」「献身」などといったものに、別れを告げる主人公。要するに、そんな抽象的で曖昧な理念によって構成された空っぽな自分に別れを告げて、生まれ変わろうとしているのではないでしょうか。


 ちなみにですが、1番のサビ前に出て来た「コードを切れ」というフレーズ。これには人間の鼓動を心電図として見た時に、その線(コード)を切ることで、心無い操り人形のままで居ることを受け入れ、社会に服従するべきだという解釈もあるようですが、皆さんはどう思われますか……? こんなに感動的で壮大なメロディーと気迫のこもったボーカルですから、そんなバッドエンドみたいな解釈は、個人的には嫌だなーと思います(笑)。


 また、当初は"Or are we dancer?"という一節について「主語が複数なんだからダンサーの部分も複数であるべきだろ!」とか「そもそもこれは"dancer"とは言っていないんじゃないか!?」など、様々な意見が紛糾したそうですが、この点についてバンドのボーカリスト・Brandon Flowersが歌詞はダンサーを意味していると明言しておりますので、安心してください。それにしても、楽曲の歌詞の意味する内容を巡ってひと悶着起きるほどにメッセージ性のある音楽を世に送り出すことのできるThe Killersの底力、凄まじいですよね!


 さて、なんだか駆け足で紹介したことで取り留めのない内容になってしまいましたが、今回は以上です。毎度のことながら、僕の拙い文章にお付き合いくださいまして、ありがとうございます。


 次回もUSロックバンドから、何かお届けできたら良いなと思います。心血注いだThe Killersの紹介によって燃え尽きた現時点では何も決められていないので、予告はなしで。お楽しみに!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はThe Killers - Humanから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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