Daft Punk - One More Time

 さて、前回ご紹介したフランス出身バンドであるPhoenixのバトンを受け取った上で、今回取り上げさせていただくのは、パリで結成されたフレンチ・ハウスムーブメントの火付け役であるエレクトロニカ・ミュージックデュオ──Daft Punkから『One More Time』です。


 Daft Punkを構成している"Guy-Manuel"ことGuillaume EmmanuelとThomas Bangalterの2人は、パリの学校でクラスメイトだったPhoenixのギタリスト・Laurent Brancowitzと1992年にDarlinというバンドを結成していました。しかし、Darlin名義でリリースされた楽曲は、英・音楽誌『Melody Maker』のレビューにて"a daft punky thrash"と酷評されたことで、音楽性の相違からLaurentは脱退、バンドは非常に短命でした。残された2人はその後すぐに音楽活動を再開して、英誌に掲載されたレビューから文字って、Daft Punkと命名しました。


 Darlinとして活動していた3人は結局、片やPhoenixとして、片やDaft Punkとしてグラミー賞受賞アーティストとしての地位を確立します。特に後者は複数年にわたって多数の部門でグラミー賞の栄誉を手にしており、以前もご紹介したThe Weekndとのコラボ曲『Starboy』でBillboard Hot 100の首位に輝いたことでも知られています。かつて音楽性をき下ろされたDarlinのメンバーたちが、それぞれ活躍の場を変えて立派に才能を開花させたのですから、Darlin時代の古参ファンの方が居たら申し訳ないのですが、解散してくれて良かったと思います……。


 そんな伝説的アーティストのDaft Punkを象徴するのは、何といっても一度見たら忘れられないロボットを彷彿とさせるような被り物と、2001年に発表された2ndアルバム『Discovery』の収録曲です。70年代風ディスコ・サウンドへの造詣の深さが滲み出ていて、おそらく、日本においても聞いたことがないという人は居ないと断言できるほど知名度の高い最強の名盤です。特にMVには『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』などで知られる松本零士が手掛けたアニメ画が採用されていて、Daft Punkと松本零士氏は後に『インターステラ5555』というアニメーションオペラを制作しました。


 我が国・日本にとっても非常に馴染み深いDaft Punkの数ある名曲の中から、何かひとつを選ばざるを得ないのであれば、ここは奇をてらうよりも、日本人として素直に『Discovery』の収録曲から選ぼうと思いまして、翻訳していきますはアルバムのトップバッター『One More Time』です。──はい、完全に選曲です。安牌です。


 とはいえ、ここまで本作にお付き合い頂いている方なら既にお分かりかもしれませんが、この手のダンス・ミュージックには歌詞が少なく、同じフレーズを繰り返す部分も多いので翻訳する際の可食部分も少なめです。ご容赦くださいね……。本当は上述したThe Weekndとのコラボ曲『Starboy』のような名曲かつ、食べ応えのある歌詞が乗った楽曲をご紹介できれば良いのですが、僕は取り沙汰する個々のアーティストの個性を最大限余すことなく紹介するために、コラボ曲等はリクエストでもない限り極力紹介しない方針を取っております。重ねて言うようで恐縮ですが、結局は僕個人の趣味嗜好に基づいてしまうのです……。何卒、ご理解くださいませ。


 まあ何と言おうが、『One More Time』が最高のナンバーであることに変わりはありません。是非皆さんも和訳を読み進める際は当該楽曲をループ再生しながら、縦ノリ派のロック好きもたまには昔ながらのディスコ・サウンドの系譜を継いだDaft Punkの名曲に酔いしれて横揺れに興じてみるのも良いかもしれませんね……!


[Intro(0:30~)]

「ワン・モア・タイム」(×2)


[Chorus1(0:30~)]

「もう1回お祝いしちゃおうか」

「ああ、いいね」

「ダンスは止められないよ」

「ワン・モア・タイム」


[Chorus2(2:05~)]

繰り返し


[Bridge(2:22~)]

「んー良い感じだ、分かるだろ」

「今夜は祝うっきゃない」

「あんまり待たせないでよ」

「止められないんだ」

「誰であろうと」

「僕たちのお祝いはね」

「もう1回もう1回って」

「何回だってお祝いしよう」

「今夜は良い感じだから、そうでしょ」

「ね、感じるだけさ」

「音楽だけあれば良い」

「欠かせないんだ、来なよ、大丈夫だ」

「お祝いしよう」

「もう1回」

「自由を求めて」

「音楽が自由を感じさせてくれるから」

「自由にやれば良い」


[Chorus3(4:16~)]

繰り返し


 もう特に言うことはないので、一気に駆け抜けちゃいましたね! 歌詞にも「ただ感じるんだ」というフレーズがあることですから、何も考えずに踊るための最高の曲です。5分間の夢見心地なお祝いは如何でしたか……? やっぱり人生において「音楽は欠かせない」ですね!


 それにしても、ここまで「もう1回」と連呼されると、Mr.Childrenの『HANABI』を思い出しますね。──もういっかーいもういっかーい。僕のカラオケの十八番おはこです。


 さて、今回も歌詞紹介はこれにて終了です。ここからは余談なのでスキップして頂いても構いませんが、お付き合い頂けるのならば嬉しいです。


 奇しくも、2回連続でフランスのアーティストたちを紹介してきましたね。ここで語ることではないのかもしれませんが、現在のフランスは財政の逼迫に起因して、政府が年金の支給開始年齢を現行の62歳から64歳に引き上げる年金制度改革案を強行成立させたために、これに反対する100万人規模の市民たちによるデモが各地で行われ、混沌を極めています。暴徒化したデモ参加者による過激な破壊行為や暴力に無関係な市民は苦しみ、公共交通機関やインフラ関係の維持を担っている労働者が一斉に蜂起してストライキを起こしています。その結果、パリやリヨン、マルセイユといった主要都市を含む街中にはゴミが散乱して、危険な病原菌を運ぶネズミやゴキブリが大量発生、果ては放火活動に発展するなど、様々な問題が起きています。


 とまあ、こんなことを僕の拙いエッセイで嘆いていても仕方のないことなのですが、音楽を通じてフランスを取り巻く危険な状況について少しでも情報発信をすることで、平和に暮らすフランス市民を影ながら応援することが出来ないかと思い、フレンチアーティストを2組紹介させて頂いたという次第です。


 ──おい、さっきまで楽しく踊ってたはずなのにお前のせいで後味悪いぞ!


 そう思われた方、本当に申し訳ございません! お詫びにもなりませんが次回予告は明るく行きます! そうですねぇ、取り敢えず暫くは英米アーティストは避けていく方針なので、何処の国にしようか悩みます。日本のアーティストは番外編で取り上げているので本編では題材にしません。とはいえ、ヨーロッパのアーティストばかりを取り上げているので、たまにはアジアのアーティストにもスポットライトを当ててみることにしましょう。需要がどの程度あるかは分かりかねますがね……。


 それでは……!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はDaft Punk - One More Timeから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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