Phoenix - Ti Amo
これまで英語圏出身のアーティストばかりを紹介してきた本作ですが、我らが日本がそうであるのと同様に、素敵なアーティストは他の国からも沢山生まれていますよね……! そこで今回は、フランス・ヴェルサイユで幼馴染として育った4人によって結成され、1996年より正式に活動を開始したインディー・ロックバンドであるPhoenixから『Ti Amo』を紹介して行きたいと思います!
同郷出身のフレンチ・デュオであるAirのバック・バンドとして結成されたPhoenixですが、1996年にギタリスト・Laurent Brancowitzの加入によって正式に独立した活動を開始し始めました。彼らの音楽性は非常に特徴的で、ロックやソウルの要素をエモーショナルでダンサブルなエレクトロニクスと絶妙に融合させることによって生み出される洗練されたポップ・サウンドが話題を呼びました!
まずは1999年にシングルを数枚リリースして注目を集めると、翌年にデビュー・アルバムとなる『United』を発表。『If I Ever Feel Better』や『Too Young』といった代表曲が世界中で人気を博したことで、いきなりスマッシュ・ヒットを記録することに。その後もコンスタントにアルバムをリリースし続けた結果迎えた2009年、4thアルバムとなる『Wolfgang Amadeus Phoenix』は遂に、第52回グラミー賞における「最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム」を受賞することに。──しかもですよ、これは1991年に同賞が設立されて以来、初のフレンチ・アーティストによる受賞という快挙でした……!
──ふーん。だったら今回はその『Wolfgang Amadeus Phoenix』の収録曲から紹介してくれるって訳ですねと、そう思われた貴方。申し訳ありませんが、違います……。
本エッセイを書き始めた最初期の頃(とはいえ1か月前くらい)に、僕がこんなことを言っていたのを覚えている方はいますか?
──誰もが歌詞を知っているような楽曲よりも、曲自体は知っているけど歌詞までは知らないかも、といった微妙なラインの選曲によって洋楽の奥深さをもっと皆さんと共有したいという執筆者の思惑があります。平たく言えば、僕の趣味嗜好に基づく選曲です。
はい、僕自身がこの方針を忘れかけていました。そうなんです。『Wolfgang Amadeus Phoenix』には、バンド名のPhoenixが入っているくらいですから『Lisztomania』『1901』『Fences』などなど、バンドを代表する粒揃いの神曲が目白押しなんです! けれども、だからこそ、そのアルバムは読者の皆さんが僕の歌詞紹介を通じてバンドに興味を持っていただけたら、その時初めて個人的に聞いてほしいんです。
前置きが長くなりましたが、今回紹介するのは2017年の6thアルバム『Ti Amo』の名を冠した『Ti Amo』です。紛らわしいですが、アルバム名でもあり、曲名なのです。こういうパターンは良くありますよね。それでは行ってみましょう! 今日は英語以外も翻訳していかなければならないので骨が折れますが、外国語に明るい方、誤訳等ございましたらご指摘お願いできますか? 僕は大学で第2外国語としてスペイン語を学んだ経験があるのですが、それ以外はさっぱりです……。
[Intro(0:12~)]
「実のところを打ち明けたいんだ」
「ダメかな?」
「僕は君に対してなら素直になれる気がするんだ」
「だって、このままじゃ僕は嫌なんだ」
[Verse1(0:24~)]
「このままじゃ嫌だな」
「最悪のシナリオだろ」
「過去を振り返るのは止すんだ」
「溶けたジェラートのように」
「愛してる」(×4)
「でも待ってよ、こんなのは愛じゃない」
「ジュークボックスに寄り掛かって」
「シャンパンかプロセッコは如何かな?」
「Buzzcocksの古い音楽を流しながらさ」
「BattiatoとLucioも良いね」
「愛してるからさ」(×4)
「股を開けよ」
[Chorus(1:23~)]
「"No"と言うのは止めてくれよ」(×3)
「仲良くなれるまで愛してるを囁くから」
「"No"と言うのは止めてくれよ」(×3)
「仲良くなれるまで愛してるを囁くから」
1番は終了です。──何から突っ込んで良いのやらって感じですが、皆さん、付いてこられていますか……?
歌詞の内容はちょっとエロティックな定番のラブソングで、ジュークボックスが置いてあるような少しレトロで洒落たバーで女性に酒を勧めながら口説こうとする男の様子が描かれているようですかね。ヴィンテージ感漂うMVからも、そんな様子が窺えます。「愛してる」というフレーズは、英語の他にイタリア語、フランス語、スペイン語の順で4回繰り返されます。──なんかすごいお洒落である反面、男性が女性を口説こうとする際に異国語でキザに愛を囁くような、ちょっと痛い感じが垣間見える気がして面白いです。
スパークリングワインを勧める描写では「フランス発祥のシャンパンとイタリア発祥のプロセッコのどちらがお好きかな?」と言っていたり、イギリスのロックバンド・Buzzcocksとイタリアン・シンガーであるBattiatoやLucioの音楽を流していたり、主人公の男性は求愛する相手の女性の出身地を分かっていない様子なんでしょうかね。取り敢えず、素敵な外国人をバーで見かけたから知っている国の知識を総動員して愛を伝えているのかなと……。でも結局、身体が目当てなんでしょうね(笑)。まあこの辺は、日本人の価値観とは違ったものがあるでしょうから、深くは言及しないでおきます。
現在時刻は0時を回ったところ、歌詞の和訳と内容の解釈に脳をフル稼働させて本稿を執筆している僕は段々と息切れしてきましたが、大好きな曲ですので手を抜かずに2番へ行きます!
[Verse2(1:47~)]
「君はこのままで良いのかな」
「幸運だ、素晴らしい!」
「サンレーモ音楽祭で勝つところをご覧に入れるよ」
「愛してるんだ」(×4)
「まだ終わっちゃいないさ」
「今の僕は汚職警官みたいだ」
「リオで日光浴なんかしてさ」
「単調なソフトロックなんか止めて」
「ベートーヴェンの協奏曲でもどうだい」
「愛してるからさ」(×4)
「股を開けよ」
[Chorus(2:34~)]
繰り返し
[Outro(3:00~)]
「もう終わった」
「これからはいいことがあると信じたいな」
「どん底を味わったからね」
「羊でも数えてみることにしよう」
「僕らの歌を歌って」
「夢の中で一緒に」
──おや? さては主人公、フラれましたね。アウトロ部分は全てPhoenixの母国語であるフランス語で書かれたものですが、歌詞の中に登場したサンレーモ音楽祭とは、イタリア・リグーリア州のサンレーモで開催されている実在の催事だそう。ちなみに、当該楽曲の歌詞の意味する内容について、作詞担当兼ボーカリストのThomas Marsは「報われない愛と欲望の悲劇」をテーマとしており、サビに登場する"Don't tell me no"というフレーズは、先程も登場したイタリアのシンガー・Lucioの代表曲『Il tempo di morire』に出てくる"Non dire no"を英訳したものらしく、Thomas曰く「"No"と言うのは止めてくれよ」なんて口にする男は、その時点で終わってるよねと。答えは出てしまったようですね。どんまい、主人公……!
さて、今回は僕の大好きなロックバンドの1つということもあり、気合の入った紹介でしたが、皆さんお楽しみ頂けましたでしょうか。恒例の次回予告ですが、次回は同国フランスから、Phoenixのギタリスト・Laurent Brancowitzとも所縁のあるフレンチ・ハウス・ムーブメントの立役者を紹介したいと思います!──え、そんなの分かるかって? 意外とご存じの方も居るかと思いますよ。ヒントは特徴的な被り物と、一昨年に解散を発表してしまったということですかね……。
それでは……!
†††
※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はPhoenix - Ti Amoから引用しております。
※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。
※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。
※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。
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