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Franz Ferdinand - Curious
毎度お待たせ致してすみません! 今回も重たくなった筆を持ち上げて洋楽紹介をしていきたいと思います。──いや、別に本作の更新が嫌になったとかでは全くないのでご安心を。ただ、洋楽の和訳をしていくというエッセイの性質上、僕の拙い語学力では執筆にかなりの時間が掛かってしまうことも多々あるんですよね。歌詞の内容によっては日本人には到底理解が及ばないような難解な比喩や皮肉、文化的・宗教的・伝統的背景を知らないと訳せない単語、地域住民しか知らないような固有名詞などもあるので、そう言ったものを逐一調べていくと結構骨が折れる作業になります……。
もっとも、そのような作業を通じて洋楽の良さを改めて理解すると共に、読者の皆様にも僕の感性に基づいた歌詞の解釈を楽しんでもらえれば良いかなという自己満足からスタートしている本作なので、執筆者である僕からすると骨折り上等なんです! 本当に時間が無い時には比較的翻訳しやすい歌詞の楽曲を紹介させていただくことになるかもしれませんが、そんなものは調べればある程度分かりやすい和訳が簡単に出てくる世の中ですので、需要ありませんよね?
くだらない話はさて置いて、今回紹介させていただくのは、2002年に結成されたスコットランド・グラスゴー発の新感覚ダンス・パンク・ロックバンドで、その名もFranz Ferdinandから『Curious』です! バンド名の由来は、第一次世界大戦勃発の契機となったサラエボ事件の暗殺被害者であるオーストリア大公・Franz Ferdinand von Habsburg-Lothringenから取ったものだそうです。──何故かって? 特に意味はないようですが、敢えて挙げるなら語呂が良いからだとか。まあアーティストに限らず、インターネットの普及によって創作物の氾濫しているこの情報化社会で少しでも名前を憶えてもらうためには、印象的なネーミングというのは重要な要素ですよね。僕も物書きの端くれとして、ハンドルネームくらい気の利いたものを用意出来たら良かったのですが……。
Franz Ferdinandは、先日紹介したArctic Monkeysの所属するインディーレーベル・Domino Recordingから2003年に1stシングル『Darts Of Pleasure』で鮮烈なデビューを飾ると、勢いそのままに翌年の2ndシングル『Take Me Out』でスコットランドのインディ・シーンを席巻。アルバムデビュー前にもかかわらず、英音楽誌をはじめとする各種メディアは、大型新人の存在を世界中に知らしめることになりました。シングルのみで舌(耳?)の肥えた世界中の音楽ファンを魅了するだなんて、余程の才能がない限りは出来ない芸当ですよね。
世界中の音楽ファンの期待が高まる中、それに応える形で発表された2004年のセルフタイトルの1stアルバム『Franz Ferdinand』は、英米を中心とした欧州各国で爆発的なヒットを記録することとなり、400万枚超のセールスを以てグラミー賞ノミネートを果たしました。また、英国三大音楽賞とも呼び声高いBrit Awards, Mercury Prize, NME Awardsの三冠を新人アーティストとして史上初の同時受賞を成し遂げるなど、その偉業は枚挙に暇がありません……!
Franz Ferdinandの音楽性のコンセプトとなっているのは、エッジの利いた1960年代のガレージ・ロックの音楽的潮流を継承した70年代のパンク・ロックムーブメントをアレンジした、歌って踊れるディスコ・パンクを意識しているという点ですね。中毒性抜群の音楽は聞けば聞くほど味わい深く、そのうちイントロを耳にしただけで勝手に身体が踊り出すようになります。
そんなFranz Ferdinandの2000年代の名曲の数々は既にご存じという方も多いと考えたので、今回紹介する楽曲に選ばせて頂いたのは、彼らによって築き上げられてきた不朽の歴史のハイライトを一枚に収めた昨年発表のベストヒットコレクション『Hits To The Head』から出た新曲『Curious』です! 当該楽曲は、Madonna, Dua Lipa, The Killers, Pet Shop Boys, Take Thatなどの多岐にわたる有名アーティストとの共作で知られる現代ポップシーンの巨匠・Stuart Priceによる共同プロデュース作品で、今のFranz Ferdinandを語る上では必聴の一曲でしょう。それでは長くなりましたが、歌詞の紹介に移って行きます!
[Verse1(0:19~)]
「1ページ目は良い出会いから」
「暗いステージには緊張が走る」
「スターたちがぶつかり合って」
「眩い光が夜を切り裂く」
[Pre-Chorus(0:37~)]
「僕は今について考えられてるだろうか?」
「あの時のことはどうだ?」
「君のこと、僕自身のことは?」
「僕らの未来を考えたとき」
「気になっちゃうんだ」
「君は僕のことを必要としてくれるのかな?」
[Chorus(0:56~)]
「僕が傍に居たとして君は僕を必要としてくれるのかい?」
「愛してくれるつもりはあるのかい?」
「教えてくれ、未来を知りたいんだ」
「人肌恋しいイカれた奴だよ」
「今知りたいんだ」
「知っておかないと」
「でも分かってるんだ」
「詮索すべきじゃないって」
「でも君が僕を狂わせる」
「多分君を愛してしまってるんだと思うんだ」
テンポ良く進んでいくので前半を一気に和訳してみました。母国語で歌ってるんだから当たり前なのかもしれませんが、滑舌がとても良くて驚きます。
バンドのフロントマン・Alex Kapranosはこの楽曲の歌詞について「映画のワンシーンで死ぬ間際に走馬灯が過るのと反対に、誰かを好きになった瞬間に恋愛の将来性が頭に浮かんでくるようなイメージ」があると語っています。要するに、今まで紹介してきたラブソングの多くは刹那的な愛情を貪欲に求める様子がテーマとなっていましたが、それとは対照的に、愛すべき恋人との将来を考え過ぎるあまりに暴走してしまう主人公の悩ましい様子が描かれているということですね。幸せなはずなのに、将来を考えると不安になってしまう。個人的にその気持ちは良く分かるので、この歌詞には深く共感できる部分があります。良い意味で、ダンス・ミュージックらしさのない感情移入しやすい内容だと思います……!
[Verse1(1:23~)]
「謎が解けてしまったら」
「日常は残っているのだろうか」
「発見し尽くしてしまえば」
「僕が何を言わんとしているか分かるよね」
[Pre-Chorus(1:42~)]
「尋ねてしまったとしても」
「聞かなかったとしても」
「その繰り返し」
「日は明けるんだ」
「僕たちに未来はあるのかな?」
「気になってしまうよ」
「君に僕なんて必要なのかな?」
[Chorus(2:00~)]
繰り返し
[Post-Chorus(2:19~)]
「今の僕を愛し続けてくれるかい?」
「その後の僕はどうかな?」
「見てみないことには分からないか」
「僕の中身を見た時は」
「それでも僕を愛してくれるかい?」
「僕が傍に居たら抱き締めてくれるかい?」
「愛してくれるの? 教えてよ」
「そう、未来が知りたいんだ」
「人肌恋しいイカれた奴だよ」
「知っての通り、君が僕を焚き付けるんだ」
「気になるんだ、君が僕をそうさせる」
歌詞は以上になります。メッセージ性がシンプル故、耳に残りやすいですよね。そんな余韻を楽しみながら、最後に少し余談にお付き合い頂ければ嬉しいです。
恋愛って、現実でも小説でもそうですけど、ミステリアスな相手の謎を少しずつ紐解いていく楽しみってものがあると同時に、謎が全て解けてしまったら途端に興味を失って、日常に戻れなくなることって往々にしてありますよね。不倫だの浮気だのといった不貞行為は、その最たる例とも言えます。かといって、何もかもを明け透けに晒してしまえば、もしかしたら相手に嫌われてしまうかもしれないという恐れもある。難しい話です……。この歌詞の主人公のように、見通しの悪い将来を考えるあまり、憂い悩んでしまう気持ちも大変良く理解できる気がします。
さて、今回もお読みくださりまして、ありがとうございました! 次回ですが、スコットランド繋がりで有名なソロミュージシャンを紹介したいと思います。恋愛ソングを紹介したことに因んで、俗っぽいですが、ヒントは恋多き乙女であるTaylor Swiftの数ある元カレのひとりだと言っておきましょうか。
†††
※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はFranz Ferdinand - Curiousから引用しております。
※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。
※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。
※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。
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